“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「宇宙はいかに始まったのか」(浅田秀樹著/講談社)

2024-06-25 09:52:53 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:宇宙はいかに始まったのか~ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学~

著者:浅田秀樹

発行:講談社(ブルーバックス)

 謎の「ナノヘルツ重力波」は、宇宙誕生の痕跡なのか!? 2023年、世界に衝撃を与えた国際研究チーム「ナノグラブ」の報告。それはある重力波の存在を捉えたというものであった。発見された重力波は、ナノヘルツ(ナノ=10のマイナス9乗)、つまり数年もの非常に長い周期の超長波長の重力波であった。この観測プロジェクトで使われた手法は「パルサー・タイミング法」というもの。電波星ともいわれる「パルサー」から送られてくる電波を観測することで、宇宙の空間の歪みを検出するという手法が、この「パルサー・タイミング法」である。では、このナノヘルツ(超長波長の)重力波はどこで生まれたのか?・宇宙のはじまり、ビッグバンより前に起きたとされる「インフレーション」によって空間が引き延ばされたさいの痕跡「原始背景重力波」・銀河の中心「活動銀河核」に存在する太陽質量の数万倍といわれる「超巨大なブラックホール」が合体した―といった候補が考えられている。これまで謎とされていた「宇宙のはじまりの姿」。その痕跡を見ることが人類にとって現実のものとなりはじめた。同書では、その背景にある宇宙論を、重力とは何か?アインシュタイン方程式とは?そして宇宙のはじまりはどのように考えられてるのか?を、ひとつずつ段階を踏みながら解説し、「ナノグラブ」によって行われた「パルサー」を用いた宇宙空間の精密観測「パルサータイミング法」と今後の観測計画、そして15年以上にもわたる「パルサー・タイミング・アレイ」による観測の結果から、この謎の超長波長の重力波「ナノヘルツ重力波」の正体に迫っていく。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「図だけでわかる! 量子論」(和田純夫監修/ニュートンプレス)

2024-06-25 09:52:34 |    物理



<新刊情報>



書名:図だけでわかる! 量子論~宇宙のすべての謎を解く~

監修:和田純夫

発行:ニュートンプレス

 ニュートンから新しい書籍シリーズが刊行!第1弾のテーマは量子論。難解なイメージを持たれやすい量子論を、図を眺めるだけでサクっと理解できる。STEP1~3を順に読んでいくだけなので、長い解説を読み込んだり、読む順番に迷ったりということもない。量子論を理解するポイントである「波と粒子の二面性」と、「状態の共存」をわかりやすく解説。さらに、身近なところで関わってくる量子論の世界も取り上げる。レーザー技術やリニアモーターカーだけでなく、渡り鳥や光合成といった意外なものまで登場する。最後には,今ニュースで耳にする機会もふえた、量子コンピューターなど、量子論がもたらす技術革新にもせまる。スキマ時間で効率よく量子論の知識が身につく1冊。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術ニュース●KEKなど、”2024年は「ミュオン加速元年」” 正ミュオンを光速の約4%まで加速する実証に成功しミュオン加速器実現へ

2024-06-25 09:50:10 |    物理
 高エネルギー加速器機構(KEK)、岡山大学、名古屋大学、九州大学、茨城大学、日本原子力研究開発機構、新潟大学の共同研究グループは、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)のミュオン実験施設において、ミュオンの冷却技術、高周波加速技術を組み合わせることで、正ミュオンを光速の約4%まで加速する技術の実証に成功した。これは、世界初の成果となるもの。

 ミュオンの寿命は、2マイクロ秒(100万分の2秒)ほどしかなく、素早く加速しないと崩壊してしまう。

 また、電子より200倍重いので段階的に加速する必要もあるが、技術開発を進め、最終的には光速の94%まで加速する予定。

 ミュオンの加速技術にめどがついたことで、世界で初めての「ミュオン加速器」の実現が視野に入り、2024年は「ミュオン加速元年」とでも呼ぶべき年になった。

 今後、加速されたミュオンを使ったさまざまな研究が進むことが期待される。

 素粒子ミュオンを加速器で加速できると、素粒子物理学や物質生命科学、地球科学など、さまざまな分野での活用が期待される。ミュオンは、ミュオン g-2/EDM 実験と呼ばれる素粒子標準理論のほころびの超精密検証実験などに有用だが、加速は技術的に難しく、成功例はなかった。

 加速器を用いて人工的につくったミュオンは、向きや速さのばらつきが大きく、上記のような実験に適しない。しかしプラスの電荷を持つミュオン(ミュオンの反粒子の正ミュオン)なら、ほぼ止まるまでいったん減速して向きや速さをそろえる(冷却する)ことができる。今回、正ミュオンを改めて光速の約4%まで加速することに世界で初めて成功した。

 同研究グループでは、これまで冷却・加速技術の開発を続けてきており、今回初めて、素粒子ミュオンそのものの冷却・加速ができることを示した。標準理論の超精密検証実験を始めるための大きな一歩となる。加速ミュオンを用いた全く新しいイメージングによって、ミュオン顕微鏡、文理融合研究などさまざまな応用も検討されている。<高エネルギー加速器機構(KEK)>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●科学技術ニュース●JCB、TISと日本IBM、メインフレームの基幹系システムをリアルタイムで連携させ2024年度内の稼働を目指す

2024-06-25 09:44:41 |    情報工学
 JCB、TISと日本IBMは、メインフレームの基幹系システムに含まれるデータをほぼリアルタイムでデータコアサービスへと連携する実証実験とデータコアサービス上でのローコード開発や開発自動化プロセスに関する実証実験を2023年12月末まで実施したが、この実証実験の成果を踏まえ、JCBとTIS 、日本IBMは、2024年3月よりシステムの本格展開に向けたシステム化要件定義に着手し、2024年度内の稼働を目指す。

 これにより、基幹系システムのデータ利活用が伸展すると共に、開発生産性の向上が期待されている。

 同実証実験においては、日本IBMのデジタル・インテグレーション・ハブ(DIH)アーキテクチャーを採用し、IBM InfoSphere Data Replication により既存のメインフレームの業務処理への影響を最小限にとどめながら基幹系システムの元帳にあるデータをほぼリアルタイムで抽出するとともに、データコアサービス上に配置したApache Kafkaによるデータの連携・保存と日本IBMの開発効率化アセットとの統合によるデータ加工のストリーミング処理、同アセットによる接続インターフェースの効率的なAPI化を実現した。

 このアーキテクチャーにより、コマンドクエリ責務分離を図りメインフレームの処理負荷低減と、基幹システムの開発と比較して、20%~30%の開発生産性向上と周辺システムとの接続の簡易化が可能という結果となった。

 今後、基幹システムの機能と資源の最適配置によりビジネスアジリティの向上と効率化を進めつつ、データ利活用による新たな価値提供を推進するため、データコアサービス実装に着手する。

 これにより、従来の基幹システムからのバッチ型データ送信ではなく、分散システム環境のデータコアサービスに向けて基幹システムの更新情報をほぼリアルタイムで連携することが可能となる。

 データコアサービスでは、安全性は堅持した上で、Apache Kafkaイベント連携により、従来のバッチ型アーキテクチャーの脱却を可能にするイベント駆動アーキテクチャーを提供すると共に、API連携により周辺システムとの接続容易性を向上させ、コマンドクエリ責務分離により現在基幹システムにて実現しているデータ連携機能を周辺システム向けに提供することで基幹システムの負荷低減を図る。

 また、クラウドネイティブな技術要素と、日本IBMの展開する開発効率化アセットを活用し、データコアサービスで展開するAPI開発の生産性向上を実現する。<日本IBM>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする