“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「「時間」はなぜ存在するのか」(吉田伸夫著/SBクリエイティブ)

2024-06-11 09:37:15 |    物理



<新刊情報>



書名:「時間」はなぜ存在するのか

著者:吉田伸夫

発行:SBクリエイティブ

 Q.「時間」とは何か?人類史上最大の謎を解き明かす!「時間って何?」「時間はなぜ存在するの?」そう誰かから聞かれたと仮定しよう。果たしてあなたは正しく答えられるか?おそらく多くの方が答えに窮し、「たしかにそれってなんでだろう…?」と、時間や宇宙へのロマンがかき立てられるのではないか。現代を生きる私たちは、正確に時を刻む時計に囲まれて暮らしている。人間の生活に欠かせない「時間」とは、いったい何なのか?また、「時間」が存在し、流れているように感じるのなぜか? 同書では、「時間」の本当の姿や素朴な謎について、有名なSF作品などを取り上げつつ、わかりやすく解説。同書を読めば、「『時間』とは何か?」という問いに対して、あなたなりの答えが見つかるはず。《同書で取り上げた人気エンタメコンテンツ》★映画『インターステラー』のワームホール★テレビドラマ『スタートレック』のワープドライブ★テッド・チャン「息吹」は人類に向けた黙示録★筒井康隆「時をかける少女」の時間跳躍スキル★ゲーム『Steins;Gate』の歴史改変チャレンジ★テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の無限タイムループ
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「線形代数で考える スペクトラル・グラフ理論入門」(ボグダン・ニカ著/日本評論社)

2024-06-11 09:36:46 |    数学



<新刊情報>



書名:線形代数で考える スペクトラル・グラフ理論入門

著者:ボグダン・ニカ

訳者:三枝崎 剛

発行:日本評論社

 グラフやネットワークの性質を線形代数を応用して解明する「スペクトラル・グラフ理論」を明快に紹介する本邦初の入門書。【目次】第1章 グラフ 第2章 不変量 第3章 正則グラフ 第4章 有限体 第5章 有限体の平方数 第6章 指標 第7章 グラフの固有値 第8章 固有値の計算 第9章 最大固有値 第10章 固有値に関するさらなる結果 第11章 スペクトルを用いた評価 第12章 最後に 付録A 写像,同値関係,商集合,不変量 付録B 群の基礎 付録C 環の基礎 付録D 有限体の構成
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●科学技術ニュース●東北大学など、安定して存在するトポロジカルなキラル量子細線を発見し量子ビットや高効率太陽電池への応用に道

2024-06-11 09:36:17 |    物理
 東北大学、大阪大学、京都産業大学、高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構の共同研究グループは、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)と高輝度放射光を用いた実験と理論計算により、テルルの量子細線が1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした。

 この成果は、バルク結晶(3次元)や薄膜(2次元)形状をした既存のトポロジカル絶縁体とは異なる性質が期待される1次元トポロジカル絶縁体の基礎研究の進展に加えて、量子ビット(量子コンピュータ)や高効率太陽電池などの実現に道を拓くもの。

 今回、東北大学 大学院理学研究科の中山 耕輔 助教、徳山 敦也 大学院生(研究当時)、材料科学高等研究所(WPI-AIMR)の佐藤 宇史 教授、多元物質科学研究所の組頭 広志 教授、大阪大学 大学院基礎工学研究科附属スピントロニクス学術連携研究教育センター(CSRN)の山内 邦彦 特任研究員(常勤)、京都産業大学理学部の瀬川 耕司 教授、量子科学技術研究開発機構(QST)の堀場 弘司 グループリーダー、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の北村 未歩 助教(現QST)らの共同研究グループは、らせん構造をした量子細線が束になった構造を持つテルルという物質に着目した。

 テルルは、らせんが右巻きの場合と左巻きの場合で異なる光学特性を示すキラルな物質として古くから研究されてきたが、最近の理論研究により、テルルの量子細線1本1本が1次元トポロジカル絶縁体になることが予測されている。

 この予測を実証するためには、量子細線の清浄な断面を準備し、そこに現れる電荷を観測する必要がある。しかし、原子同士が強く結合した細線が束になった物質を切断しようとしても、細線がつぶれるなどして、断面をきれいに揃えることは容易ではなかった。

 同研究では、新たに開発したアルゴンガスのクラスターをイオン化して試料に照射する装置(GCIB装置)を用い、量子細線の端をきれいに削ることで、断面を揃えた上で清浄性も実現することに成功した。
 
 その後、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーにおいて真空紫外放射光をミクロン径に集光して高い空間分解能を実現したマイクロ角度分解光電子分光(ARPES)装置を用いて、量子細線の断面の電子状態を精密に測定した結果、バンドギャップ内に現れるスピン偏極した電子状態の観測に成功した。

 第一原理計算(理論的な計算値)との比較から、このバンドギャップ内に現れた電子状態は、量子細線の端に現れる電荷に由来することを明らかにした。

 また、紫外光で試料表面を走査してこの電子状態の空間分布を調べた結果、隣接する量子細線間を電子が飛び移ることで、理論的にも予想されていなかった伝導経路(エッジ状態)が形成されることを明らかにした。
 
 今回の成果は、安定して存在する固体において1次元トポロジカル絶縁体状態の存在を初めて示したもの。<量子科学技術研究開発機構(QST)>
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●科学技術ニュース●QST、パーキンソン病やレビー小体型認知症でのαシヌクレイン沈着を捉えるPET薬剤を開発し生体脳で可視化することに世界で初めて成功

2024-06-11 09:35:56 |    生物・医学
 量子科学技術研究開発機構(QST)量子医科学研究所脳機能イメージング研究センターの遠藤浩信主任研究員と量子生命科学研究所の小野麻衣子研究員らは、パーキンソン病およびレビー小体型認知症患者脳におけるαシヌクレイン沈着病変を世界で初めて可視化し、その沈着量が運動症状の重症度と関連することを明らかにした。
 
 パーキンソン病やレビー小体型認知症は、αシヌクレインというタンパク質の病的な凝集体が出現し、神経細胞死を引き起こすことが示されている。

 パーキンソン病は、根本治療薬のない進行性の脳の病気のうちアルツハイマー病に次いで多いにも関わらず、αシヌクレイン病変を生体脳で可視化する技術は未確立で、患者が亡くなった後で脳の病理検査(組織を取り出して染色等を行う)により病変を調べない限り、確定診断は行えなかった。
 
 QSTでは、アルツハイマー病の原因となりうるタウタンパク質の病変を世界に先駆けて画像化するなど、異常タンパク質の沈着を生体脳で可視化する技術の開発に取り組んできた。

 そうした開発で得たノウハウを活用し、タウ病変よりもさらに量が少なく画像化が難しいとされるαシヌクレイン病変の生体脳での検出に挑み、2022年に製薬企業との連携でPET用薬剤(18F-SPAL-T-06)を開発した。

 このPET薬剤では、αシヌクレインが多量に沈着する多系統萎縮症という疾患では病変を画像化できたが、病変量が非常に少ないパーキンソン病やレビー小体型認知症では病変の画像化に至っていなかった。
 
 そこで同研究では、αシヌクレイン病変に強く結合する別のPET用薬剤として18F-C05-05を開発し、パーキンソン病やレビー小体型認知症のモデルとなるαシヌクレイン病態伝播マウスおよびマーモセットで、病変を画像化できることを明らかにした。

 次にこのPET薬剤を臨床で評価し、パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者で病変を検出できることを実証した。また、PETで検出されるαシヌクレイン病変の量と、運動症状の進行の間に関連性があることが示された。
 
 今回新たに開発された18F-C05-05は、脳の病理変化に基づくパーキンソン病やレビー小体型認知症の診断や病気の進行度を客観的な評価に利用できることに加えて、治療薬開発時の効果判定にも有用な可能性がある。また、疾患モデル動物と患者の両方でαシヌクレイン沈着を検出できることから、非臨床と臨床をつなぐ橋渡し研究に利用でき、病態解明や治療薬開発を促進することが期待される。<量子科学技術研究開発機構(QST)>
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