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●科学技術ニュース●茨城大学など、空間反転と時間反転の対称性が逐次的・自発的に破れる相転移を発見し新たなトポロジカル電子状態を提案

2024-06-28 09:42:11 |    電気・電子工学
 茨城大学大学院理工学研究科の下田愛海さん(研究当時大学院生)、茨城大学原子科学研究教育センターの岩佐和晃教授を中心とするグループは、茨城大学大学院理工学研究科の桑原慶太郎教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の佐賀山基准教授と中尾裕則准教授、総合科学研究機構中性子科学センターの石角元志副主任技師と中尾朗子副主任研究員、J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹と村井直樹研究員と大原高志研究主幹、東北大学金属材料研究所・高等研究機構の南部雄亮准教授の協力のもと、Remeika相化合物のうちネオジム・ロジウム・錫(スズ)を含むNd3Rh4Sn13が示す結晶構造相転移と磁気秩序の詳細を明らかにし、空間反転と時間反転の対称性が逐次的・自発的に破れる相転移を発見した。

 結晶中の原子配列の対称性は物質の性質を決定づける因子である。

 例えば、原子が存在する物質領域とその外側の真空の境界で空間反転対称性が破れた場合、物質内部が絶縁体であっても、境界表面では電流が生じるというディラック電子状態が知られている。

 また、右手と左手、あるいは右ネジと左ネジのような対掌性の関係にある構造は、鏡に映る実像と虚像の関係にあるが、右と左それぞれは反転対称性が失われている。

 このようなカイラル対称性においてもワイル電子と呼ばれる特殊な電子状態が現れ、実効的には質量のない電子が運動する半金属状態が期待されている。

 同研究グループは、このような空間反転対称性の破れた結晶構造に自発的に相転移し、さらに磁気秩序によって時間反転対称性も破れうる物質を開拓すべく、Remeika相化合物Nd3Rh4Sn13を詳しく調べた。

 その結果、この物質がカイラル対称結晶構造に相転移し、さらに反強磁気秩序化することを明らかにした。

 特に、ネオジムイオンの一次元鎖状格子の磁気モーメントが反強磁気状態を取りつつ、隣接する一次元鎖と三角格子を介して連結して三次元構造をとるという特徴を明らかにした。

 このような対称性の破れは新たなトポロジカル電子状態を示唆するものと期待できる。<高エネルギー加速器研究機構(KEK)>
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