大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授、植村隆文特任准教授(常勤)(産業技術総合研究所特定フェロー兼任)を中心とした研究グループと、産業技術総合研究所が大阪大学内に設置した「産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ(PhotoBIO-OIL)」は、世界最薄・最軽量の生体計測用の差動増幅回路の開発に成功した。
ヘルスケアや医療用途の生体計測回路は、これまで、シリコントランジスタに代表される硬い電子素子で構成されていた。しかし、硬い電子素子が柔らかい肌などの生体組織に触れると炎症を起こしやすいため、日常生活において長時間の生体信号の計測は困難であった。
同研究グループは、有機トランジスタという柔軟な電子素子を厚さ1マイクロメートル (マイクロ:100万分の1) の薄くて柔らかいプラスチックフィルム上に集積することで、装着感のないフレキシブル生体計測用回路を開発した。
作製した回路は差動増幅回路とよばれる信号処理回路の一つ。従来のシングルエンド型の増幅回路と比較すると、同研究のフレキシブル差動増幅回路は、微弱な生体電位を増幅可能なだけではなく、外乱ノイズを取り除くことができる。実際に人の生体計測に用いることで、重要な生体信号である心電信号のリアルタイム・低ノイズ計測を実証した。
同成果によって、日常生活において心電信号に限らない様々な微弱生体信号 (脳波や胎児心電など) を機器の装着感なく正確にモニタリングすることが可能になると期待される。