“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

★科学技術ニュース★大阪大学と産総研、歩行中もノイズの少ない心電計測を可能とする世界最薄・最軽量のノイズ低減機能付き生体計測回路を実現

2019-08-16 10:13:59 |    生物・医学

 大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授、植村隆文特任准教授(常勤)(産業技術総合研究所特定フェロー兼任)を中心とした研究グループと、産業技術総合研究所が大阪大学内に設置した「産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ(PhotoBIO-OIL)」は、世界最薄・最軽量の生体計測用の差動増幅回路の開発に成功した。

 ヘルスケアや医療用途の生体計測回路は、これまで、シリコントランジスタに代表される硬い電子素子で構成されていた。しかし、硬い電子素子が柔らかい肌などの生体組織に触れると炎症を起こしやすいため、日常生活において長時間の生体信号の計測は困難であった。

 同研究グループは、有機トランジスタという柔軟な電子素子を厚さ1マイクロメートル (マイクロ:100万分の1) の薄くて柔らかいプラスチックフィルム上に集積することで、装着感のないフレキシブル生体計測用回路を開発した。

 作製した回路は差動増幅回路とよばれる信号処理回路の一つ。従来のシングルエンド型の増幅回路と比較すると、同研究のフレキシブル差動増幅回路は、微弱な生体電位を増幅可能なだけではなく、外乱ノイズを取り除くことができる。実際に人の生体計測に用いることで、重要な生体信号である心電信号のリアルタイム・低ノイズ計測を実証した。

 同成果によって、日常生活において心電信号に限らない様々な微弱生体信号 (脳波や胎児心電など) を機器の装着感なく正確にモニタリングすることが可能になると期待される。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「IT負債」(室脇慶彦著/日経BP社)

2019-08-16 09:27:12 |    情報工学

 

<新刊情報>

 

書名:IT負債~基幹系システム「2025年の崖」を飛び越えろ~

著者:室脇慶彦

発行:日経BP社

 著者は長年、野村総合研究所において大規模システムに携わっており、現在指摘されている「2025年問題」を自分の問題として取り組んでいる。その著者が米国のクラウドベンダーやユーザー企業を見てたどり着いた1つの答えが、「マイクロサービスによる基幹系システムの刷新」だ。単純に刷新するのではなく、業界共通部分はエコシステム化を提唱するなど、意欲的な内容である。同書では、日本企業の経営層に厳しい指摘もしている。だがそれは、期待の裏返しでもあるように思う。著者の思いが、ぜひ経営層に届いてほしい。

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★科学技術ニュース★産総研など、原子の振動を波として電子顕微鏡で捉えることに成功

2019-08-16 09:26:42 |    物理

 産業技術総合研究所(産総研)ナノ材料研究部門電子顕微鏡グループ 千賀 亮典 主任研究員と同研究部門 末永 和知 首席研究員、ウィーン大学、ローマ・ラ・サピエンツァ大学、日本電子の森下 茂幸 博士は、新しく開発した電子顕微鏡を用いて、従来よりも2桁以上向上した空間分解能で、物質の最も基本的な性質の一つである原子の振動(格子振動)を波として計測する手法を開発した。

 その結果、1原子の厚みしかないグラフェン1枚の格子振動を初めて計測できた。

 格子振動は、熱伝導、電気伝導、光学的特性といった材料の性質に深く関わっているため、ナノ材料のデバイス応用を考えるうえで詳細な理解が必要不可欠である。しかしながら、従来手法ではバルクの試料から平均的な信号を得ることしかできず、測定できる試料にも限りがあった。

 今回開発した技術は、原子を構成する原子核と電子の位置が原子の振動によってわずかにずれることを利用して、格子振動のエネルギーと運動量を計測する方法である。この手法を用いることで、原理的にはすべての材料の格子振動を10 nmの局所領域から計測できる。

 これにより、これまで理論計算が先行していたさまざまなナノ材料の格子振動を直接計測することができるため、材料科学の発展に大きく貢献できる。また、工学的には格子振動が直接性能に影響を与える熱電素子や光電子デバイス、超電導体などの研究開発への貢献が期待される。

 今回開発した手法を用いて、超電導など格子振動が影響するとされるさまざまな未解決の物理現象のメカニズム解明を目指す。また、格子振動によるエネルギー損失を最小限に抑えた高効率な熱電素子や光電子デバイス用材料の開発に貢献できるように、空間分解能やエネルギー分解能をさらに向上させ、幅広い材料の格子振動と物性の関係を明らかにしてゆく。

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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「イラストで学ぶ ヒューマンインタフェース<改訂第2版>」(北原義典著/講談社)

2019-08-16 09:26:10 |    情報工学

 

<新刊情報>

 

書名:イラストで学ぶ ヒューマンインタフェース<改訂第2版>

著者:北原義典

発行:講談社

 「どうしたら使いやすくなるのか」「使いやすさはどうやって測るか」、人間特性、GUI設計、ユーザビリティ評価などをイラストとともに学べる。ヒューマンインタフェースの全貌をわかりやすく解説する、モノ作りにかかわる全ビジネスパーソン・全学生必読の書。人間の特性、GUI設計、ユーザビリティ評価などをイラストとともに学ぼう。事例も適宜紹介され、ヒューマンインタフェースの全貌をわかりやすく解説。

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