はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ペンクラブ賞に堀さん、馬渡さん

2015-11-19 11:31:15 | 毎日ペンクラブ鹿児島


 毎日ペンクラブ鹿児島の秋の研修会が15日、鹿児島市の市勤労者交流センターであった。昨年10月からの1年間、本誌鹿児島版に掲載された「はがき随筆」の中から選ぶ「ペンクラブ賞」の表彰式もあり、姶良市加治木町の堀美代子さん(71)と鹿児島市慈眼寺町の馬渡浩子さん(68)に高橋宏明会長からそれぞれ記念の盾が贈られた。
 堀さんの作品「祖母の手仕事」は96歳の祖母にちゃんちゃんこをひしらえてもらった思い出をつづり、短文を積み重ねた独特のリズム感が評価された。馬渡さんの「又もやへまを」は往復はがきの折り目をまっすぐ切り離せず、さらに切手を上下反対に貼ってしまった失敗談をユーモラスに描いた。
ペンクラブは「はがき随筆」「女(男)の気持ち欄の愛好者でつくるグループ」。研修会後は別会場で懇親会もあり、会員同士が交流を深めた。
  【西貴晴】 2015/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載


思いやりの心を

2015-11-19 11:30:28 | はがき随筆
 スーパーの3階から階段を下りていた。おぼつかない足取りを見かねて女性が「持ちましょうか」と声をかけてくれた。
 「ありがとうございます。助かります」。その人は急ぎ足で1階まで下りていかれた。「ここに置きまーす」。階段を下りながら軽く会釈した。
 ホットな気分で食品売り場を歩いていたら、後方から男性の押すカートが弱い左足の踵を直撃した。あまりの痛さにその場にしゃがみ込んだ。
 無言で立ち去る男性に少しでも思いやりの気持ちがあれば、痛みも和らいだかもしれない。
  鹿児島市 竹之内美知子 2015/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

2015-11-19 11:27:51 | はがき随筆
 98歳だが、かくしゃくとした父が脳梗塞で倒れた。
 病室から見る有明海のかなたに、激動の異国での青春の在りし日に思いをはせているのか、時折合掌している。
1世紀近く愚直に生き、平和を重んじ、人命を尊ぶことを語る父を大樹の如く仰ぎ見て私たちは育った。「もうすぐ退院できる」と耳もとで言えば笑顔で応じる。「枯れ木も山のにぎわい」と裏方に徹した父の寝顔に、枯れ木は春の芽吹きを待つ裸木と思える自分になった。
 退院したら、温泉で背中をながしてやると言えば、酸素マスクの父はうなずいた。
  出水市 宮路量温 2015/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載