東京の最高地点雲取山。山頂直下の小屋にいまだ明けきらぬ頃たどり着いた。小屋の中は意外と明るく、奥にカップルが休んでいただけで、静かな時間。会釈をして先客が出て行くと、我々も重い腰を上げ出発した。
夜が明けて歩き始めると、ある疑問が離れない。あの2人は? 登りも下りも視界を外れるには優に1時間はかかる距離なのに姿がない。1人がその疑問を発すると私も、俺も……皆叫んだ。服は何色? 顔の形は?
声は高い低い? すべて皆答えられない。後日談がある。その後、その小屋を見たことが私はない。
鹿児島県湧水町 近藤安則(66) 2020/11/7 毎日新聞鹿児島版掲載
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