2014年7月31日 (木)
岩国市 会 員 安西 詩代
朝、玄関を開けると床で私を出迎える形で待っていた。頭を上げ、前脚をしっかり伸ばし、シャキッとした姿勢で背中に一筋の割れ目のある抜け殼。
まだ梅雨の明けていない昨夜はどしゃ降りだった。玄関の軒下で羽化した蝉は、この雨の中、どこでしのいでいるのだろう。
抜け殼を棚に置いて眺めた。小さいながら威厳のある姿に驚いた。「抜け殼のような」という表現は負の時に使われるが、「抜け殼でさえ威厳のある」と使う方が良い。長い間、土の中で身を潜め、地上に出るのを待った。たった数日の命で自分の使命を果たす、潔い蝉よ!
(2014.07.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます