幼い頃、風をひいて発年した。祖母は梅粥をこしらえた。
残りの麦飯を小鍋に移し、梅干しの肉をほぐし、削り節を添えた。雅な梅の香りが漂う。やがて梅粥ができ、お椀についでもらい「頂きます」。熱いので息を吹きかける。舌やのどがお粥の味を覚えた。頬や背中、手足まで温まった。梅干しの香りと薄塩の味がなじんだ。精根込めた祖母の味に「ありがとう」。
せまい額、頬の縦横のしわは絹糸のような光沢で気高く見える。手拭いを濡らし、つげの櫛ですいてくれた。風邪を引くと、いにしえの祖母の梅粥に思いをはせる。
鹿児島県姶良市 堀美代子(74) 2019/7/25 毎日新聞鹿児島版掲載
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