はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

巡る季節に

2009-11-12 22:10:54 | はがき随筆
 柿の木に登り、実を取ろうと枝に手をのばしたとたん、バランスを崩して落ちた。
 日吉町の山あいに引っ越して迎えた秋。高さ3㍍くらいからだったが、シラスの庭だったためか、軽い打ち身ですんだ。しかし、当時10歳の私は、初めてのことで死ぬかと思った。
 縁側で縫い物をしていた母が、はだしでとんで来た。「母ちゃん、死にたくない」。しがみつくと「おとなしくならんと」ときつく抱きしめてくれた。
 男の子とチャンバラごっこをしたり、野山を駆け回っていた私は、静かになった。母も逝って7度目の季節が過ぎていく。
  いちき串木野市 奥吉志代子(61) 2009/11/8 毎日新聞鹿児島版掲載

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