はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「恋」テーマ 文学大賞に4作品

2007-06-17 22:32:19 | グランプリ大会
文学大賞 受賞者 喜びの声

ちょっと欲が 鹿児島県出水市 清水昌子さん

 信じられません。いつもと違って、甘い文章を書いたので恥ずかしい。作文は2年前から始め、新聞部だった高校以来、30年ぶりに書く楽しさに浸ってます。これからは短編や長めのエッセーも書いてみたい。ちょっと欲が出てきました。

「恋未満」
 生け垣のくちなしが咲き出していた。道場はすでに開け放たれ、彼は無心に弓を引いたいた。久しぶりに見る彼の姿だった。入部したての頃、私は彼から手取り足取りで弓道を教えてもらっていた――。
 練習を終えた彼は、他の部員たちに近況報告を始めていた。
 「就職も決まった。結婚も決めた」。矢をつがえていた私の耳に、その声は確かに届いた。ギリッギリッと振り絞る。矢は的中。「ヨッシャ!」。すかさず彼の温かく懐かしい声がした。
 でもあの頃とは違う私たち。でもあの頃のようにくちなしは薫っていた。


継母への鎮魂歌 鹿児島市 鵜家育男さん
読み手に伝わるように何十回と推敲を重ねた末の受賞でうれしい。継母は兄弟を分け隔て無く育てる気配りの人でした。死を目前にして、父に50年連れ添いながら、生母も眠る墓への遠慮が胸に詰まったのです。これは継母への鎮魂歌です。

「恋慕」 
 当時幼い私たち2人を抱えた若い父に若くして嫁いだ継母。1児をもうけたが分け隔てなく愛情を注ぎ育て上げてくれた。その母が生前病床でポツリ「父さんのお墓に入れない」とつぶやく。
 何を意味してポツリ。私はそのつぶやきが耳から離れずのどに小骨が刺さったようにうずく。母は生母よりも何倍もの歳月、父と生活を共にしてきたはず。今となっては聞くすべもない。頑張り屋で優しい控えめな母の心情は「最初に父さんを愛した人は……」との思いがあったのだろうか。私は、生母と父が眠る墓地に「安らかに」と強い意を込め両手を合わせ納骨した。


両親に内緒で投稿  北九州市 加来慎志さん
 題材は約15年前のエピソード。父のイメージとかけ離れた文面が意外でしたが、虹のくだりには当時、強烈な印象を受けました。はがき随筆初挑戦ですが、思ったことを短文に凝縮するのは難しいです。ちなみに両親には内緒で投稿しました。

「恋文」
 父が結婚前に母に送った手紙を読ませてもらった事がある。それが最初で最後の、唯一の恋文らしい。
 「雨は嫌いですか? 紫陽花の葉の裏を蝸牛が這っています。濡れそぼった犬が悲しげに吠えています。今、君は何をしていますか?」。何という陳腐さ! でも自分のロマンチストな性格が父譲りであるのを発見して、苦笑交じりに妙に納得できたものだった。手紙の最後。「雨上がりの空に虹を見つけました。今、僕は、君に会いたいなあ、と強く思っています」
 以来、空に虹を見つけると、誰かにラブレターを無性に書きたくなる。


日ごろの思い正直に 北九州市 豊浦美智子さん

 初投稿ですが、他のテーマなら書かなかったかもしれません。夫の病死から間もなく2年。この5月に銀婚式のはずでした。「ああすれば良かった」などといろんな後悔が今も残っています。そんな日ごろの思いを正直に書きました。

「恋」
 6月は苦手。空の色、空気の温度が私の心をしめつける。
 雨降りが続くとなおさら苦手。会いたくて、胸が痛くて、泣きたくなる。
 この気持ち……まぎれもなく、これは恋。それも生まれて初めての、超遠距離恋愛だ。当たり前だと思っていたけど、一緒にいられることの幸せに、もっと早く気付けばよかったのに……遠く離れて、私の想いは募るばかり。「ありがとう」も「ごめんね」も言えないまま、会えなくなった愛しい人に、初恋にも似た「胸キュン」のせつない気持ちで、私はずっと恋してる。
 7月1日、もうすぐ主人の三回忌。







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