辺り一面の緑。桑畑でせわしなく働くかすりのもんぺ姿。その人は美しく鮮烈だった。口数少なく働き者だった義母。
25歳で夫を戦争で亡くし、姑と田畑を守り、一人息子の成長を楽しみに生きた。女手には余るほどの土地を必死に守った。寂しさとの葛藤はなかったのか。孫の誕生には30年ぶりと喜び、毎日の入浴を手助けし、いつも笑顔で包んでくれた。
来る日も来る日も一輪車を押し田畑に。その後ろ姿が焼き付いている。94歳。一人身の苦節70年。慈愛にあふれた義母逝く。ただ祈りのごと蝉の声に送られて……。
出水市 伊尻清子 2016/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載
25歳で夫を戦争で亡くし、姑と田畑を守り、一人息子の成長を楽しみに生きた。女手には余るほどの土地を必死に守った。寂しさとの葛藤はなかったのか。孫の誕生には30年ぶりと喜び、毎日の入浴を手助けし、いつも笑顔で包んでくれた。
来る日も来る日も一輪車を押し田畑に。その後ろ姿が焼き付いている。94歳。一人身の苦節70年。慈愛にあふれた義母逝く。ただ祈りのごと蝉の声に送られて……。
出水市 伊尻清子 2016/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載
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