ふぐのおいしい時期になった。福岡では出張者を近くのふぐ料理の店に連れて行くと喜ば れた。値段も手ごろだった。
本社に転勤し、残業していると、上司から「新橋のふぐ料理店にすぐ来い」と電話があった。 席に着くと先輩3人がいて上機嫌だった。大皿には数枚のふぐ
刺ししかなかった。小一時間もすると、ふぐ雑炊が出てお開きとなった。部長が浮かぬ顔で戻ってきた。〆て7万円也。全員の金を集めても足りずに、翌日払うことにした。「田中君は新橋でえらく高いふぐを食べたそうだ」と評判になった。先輩方 はもうこの世にいない。
鹿児島市 田中健一郎(82) 2021.2.14 毎日新聞鹿児島版掲載
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