はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

碁敵

2008-12-05 11:24:42 | はがき随筆
 遅い。碁敵の到着が遅い。
 聞き慣れた車の音。「今日は、巌流島のじらし作戦だな」。彼は笑ってとぼける。碁はすでに始まっている。
 「間の抜けた手を打つアホガラス」「深慮遠謀の一手と知らぬとんま野郎」。余りの口汚さに、母が心配げに顔を出す。2人の技量はきっ抗して、舌戦も勝敗を大きく左右する。
 碁盤を囲むと犬猿の仲。3日も会わぬとそわそわ落ち着かない水魚の交わり。彼の奥方に「妻と碁敵、どっちが大切なの」としっとさせる。
 私の501勝548敗17持碁。2人の夢は1万対局。
   出水市 道田道範(59) 2008/12/5 毎日新聞鹿児島版掲載

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