若い頃、昼休みに職場近くの書店でよく立ち読みしていた。そのなかに、童画風だが幻視の風景画とも言える谷内六郎の絵が表紙を飾る週刊誌があった。
我が家には和紙5枚に書かれた谷内自筆の書がある。東京で編集社員をしていた義姉が、彼の原画を無くした。母親まで上京し謝罪したことへの、謝意の手紙文である。谷内が亡くなる2年前のこと。その肉筆が素晴らしかったので、義母は5枚を横に並べ額装にした。
今年は谷内の生誕100年、没後40年。義姉が見失った絵は、今も見知らぬ街の空を漂っていそうな気がする。
鹿児島市 高橋誠(70) 2021.9.25 毎日新聞鹿児島版掲載
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