棒をクルクル回し、廊下を軽やかに歩く教頭先生。中学生の頃、部活帰りに教室に忘れ物を取りに行ったことがあった。先生は1階から2階へすたすたと上がっていく。暮れなずむ校舎内の戸締りらしい。「遅くまで一人残って大変だなあ」と思っていると、鼻歌が聞こえてくる。お手製の棒は先端がフック状になっていて高い窓の鍵がしっかりとかけられる。「楽しみながらやっているのよ」と振り返った。早朝の花壇の水やりでもそんな感じ。「花たちがうれしそうでね」とにっこり。当時、変な人だなと思っていたが、今はその人のすごさがよく分かる。
鹿児島県出水市 山下秀雄(52) 2021.11.27 毎日新聞鹿児島版掲載
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