ようやく息子は自転車の補助輪を外した。齢7歳の秋である。ハンドルを構え、姿勢を整え、こぎ始めさえクリアすれば、あとはバランスを取るだけた。風を切る彼の後ろ姿は全能感に満ちていた。翌日には吹上浜のサイクリングコースを猛スピードで駆け抜け、同級生に乗り方の指導までしていた。
遺伝子は姿形や体質は伝えるけれど、知識や技術までは引き継がない。もしかすると、それは、獲得の喜びを味わうために生物が作りだした知恵なのかもしれない。補助輪のない自転車が彼に教えたのは、新しい扉の開き方なのかもしれない。
鹿児島市 堀之内泉 2017/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載
遺伝子は姿形や体質は伝えるけれど、知識や技術までは引き継がない。もしかすると、それは、獲得の喜びを味わうために生物が作りだした知恵なのかもしれない。補助輪のない自転車が彼に教えたのは、新しい扉の開き方なのかもしれない。
鹿児島市 堀之内泉 2017/12/6 毎日新聞鹿児島版掲載
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