はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

読み聞かせたき

2016-08-30 07:11:38 | はがき随筆
 父は戦死。母との2人暮らし。小学生の頃、国語の教科書を音読すると、母は疲れた体を起してうれしそうに聞いているのが子供心にもわかった。高学年になると面倒くさくなり、また黙読の方が早く、音読をやめた。母ががっかりしているのは分かっていたのだが。
 母の晩年に一緒に暮らすようになったある日「小学ん頃、本を読んで聞かっしゃっとが楽しんやった」と言ったことがあった。孫の世話などで多忙だった私は聞き流し忘れ去った。
 今ならばと悔やむことが多い〈緑陰に読み聞かせたき母は無く〉逝って5年3カ月だ。
  霧島市 秋峯いくよ 2016/8/27 毎日新聞鹿児島版掲載

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