はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆の9月度月間賞は次の皆さんでした。

2017-10-14 11:41:37 | 受賞作品
 【優秀賞】1日「モンシロチョウの宿と夢」小村忍=出水市大野原町
 【佳作】15日「流れる星は」田中健一郎=鹿児島市東谷山
▽21日「黒電話」竹之内美知子=鹿児島市城山

 「モンシロチョウの宿と夢」は、モンシロチョウはどこで眠るだろうという長年の疑問が、実際の観察で解決したという内容です。いくつになられても、こういう好奇心を持ち続けておられることに感心しました。文章も、その好奇心に従って、読む者の好奇心を解明に向かってみちびいてくれる魅力を持っています。
 「流れる星は」は、藤原ていの引き揚げ記『流れる星は生きている』の再読後の感想を紹介し、同時に戦争の弱者に及ぼす過酷さに触れた内容です。前にも触れましたが、戦争は政治家が始めて庶民が苦しむということを、現在の国情からも考えさせられる文章です。
 「黒電話」は、戦後しばらくは電話を容易には取り付けられなかった。それが取り付けられたときの家族の騒動(?)が生き生きと描かれています。電話のある家はかなり離れた家にも取り次いでいました。電話への興味も薄れた頃、受話器を取ると父の急死の知らせであったと言う悲しい思い出もあり、対比的な内容が効果的です。
 この他の3編を紹介します。
 宮路量温さんの「水鏡」は、美しく心和む文章です。田植えの前、田んぼに水がはられると、周囲の自然を写す水鏡と化す。それを母は「清風名月」と呼んでたたえていた。その美しさが分かるようになった今、その風景をさかなにビールを飲んで妻と親しむという内容です。
 本山るみ子さんの「エアコンが来た!」は、鹿児島移住13年、クーラー無しの扇風機生活を続けていたが、流石に今夏の暑さと熱中症騒ぎにエアコンを購入した。今までの意固地さが恥ずかしいくらい快適で、よく眠れるという内容です。
 田中由利子さんの「高校3年生」は、雨にぬれて、母親とケンカした孫が祖母の元に一時避難。着替えを出して、食事を出すと、黙々と食べ終わる。慰める言葉が思いつかない。親は怒るものだというと、気分が落ち着いたか、迎えの母親と素直に帰っていった。高校生の年頃の心理がよく描かれている内容です。
  鹿児島大学 名誉教授 石田忠彦

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