はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

巨人の星

2013-11-05 22:46:03 | はがき随筆


 元巨人軍監督の川上哲治さんが亡くなった。93歳だった。52歳の私が知っているのは巨人V9監督としての川上さん。赤バットで“打撃の神様”と称された現役時代を知らないが、私と同じ熊本県人であるため、少年時代から「川上」といえば野球を連想していた。
 川上さんも太平洋戦争で召集された。沢村栄治投手ら多くの野球人が戦死し、川上さんは野球ができる幸せを語っていた。私の少年時代の人気スポ根アニメ「巨人の星」に登場する川上さんは既に監督で、主人公星飛雄馬の父一徹とはチームメートだった。
 10月24日にあったプロ野球のドラフト会議で県内からも横田慎太郎(鹿児島実業高)、二木康太(鹿児島情報高)両選手らが指名された。高校野球を担当する支局の記者も元高校球児で鹿児島に赴任以来、ドラフトに指名された選手らを追ってきた。いずれも「取材にははつらつと応じ、気持ちよかったですよ」と絶賛、プロでの活躍を楽しみにしているようだ。
 私も甲子園で活躍した球児や有名選手を見てきたが、中には取材慣れをしているのか、あるいは「勘違い」をしているのか、こちらの取材に答えず、完全に無視する者もいた。こちらが聞きたい内容は「試合を振り返って」とか「将来はどんな選手になりたいか」など一般的な質問だったのだが……。「スポーツは人間教育」だと思っている私に一部スポーツマンの態度は異様に映った。監督ら指導者はどんな教育をしているのかなと。
 指宿市であった全国高校駅伝競走大会県予選表彰式に出かけた。体育館前で、男女の選手たちが私に元気よく「こんにちは」と一礼してくれた。選手たちは私の肩書など知らない。柔道ならば「礼に始まり、礼に終わる」。懐かしい気持ちになった。それぞれ、今の気持ちを忘れずに大きな世界を目指してほしい。
 鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/11/4 毎日新聞鹿児島版掲載

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