47✖78㌢の机君。君が我が家に来て20年近くになるね。義妹から譲り受けた時は白木の正目がきれいだった。短歌の推敲や清書は食卓だったから自分の机に憧れていたんだ。4畳半の和裁部屋の隅っこに置かれたね。
数年前、仕立てをやめてからは部屋の中央が君の居場所になった。ふすまを閉めると、居間のテレビの音が小さくなって、空気の流れが止まる。鉛筆のこすれる音、置き時計の針音。遠く草刈機のうなる音。私は3Bの鉛筆を握り、マス目を埋めていく。アッ、机君の声が⏤⏤。
「早く、早く描かないと言葉が逃げちゃうよ」
宮崎県延岡市 佐藤桂子(72) 2020/11/13 毎日新聞鹿児島版掲載
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