もと上司のお宅を訪問していたのは、毎週金曜日だった。博覧強記で以前は大企業の研究職をされていた。文庫本をポケットに桜並木をふらり散歩。それが日課だった。浜松出身で歴史にも造詣深く、徳川家についても教えていただいた。私が会社の近況を報告すると恵比寿様のような笑顔でうなずかれた。仕事に悩む20代に的確な助言も下さった。倒れられ半身不随と聞いたのは私が退職し転居した後だった。お見舞いに伺った。やっと聞き取れたのは本の名前。読んでごらんとの優しい表情。今の私を支える一冊。重なる司馬と家康とその上司である。
出水市 山下秀雄 2018/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載
出水市 山下秀雄 2018/3/17 毎日新聞鹿児島版掲載
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