はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

初孫の旅立ち

2015-04-19 21:23:20 | はがき随筆
 東京に住む孫が、はるかに遠い赤道を越えた島国の高校に留学した。
 小さい時から春も夏も、休みはこっちで過ごし、寝つくまで背中をかかせる子でそれがまた、祖父を知らない私の至福の時でもあった。
 出発の前夜、布団の中で久しぶりに背中をかいてやりながら、「敦士よ、涙は見せるなよ」と言ったら、うなずきもせず黙っていた。だが、成田空港でいよいよ搭乗する時は多分、涙ぐんでいたのであろう。隠れるようにして人ごみの中に消えた。時々、あの時の寂しそうな婿の顔が目に浮かぶ。
 曽於市 新屋昌興 2015/4/17 毎日新聞鹿児島版掲載

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