避難用に取っていただいたホテルの6階の窓から、台風14号の横なぐりの雨と風をぼうぜんと見ている。突風で自宅の屋根瓦が吹き飛ばされたのだ。妻は……。
妻は3日前の朝、脳梗塞で倒れ、ドクターヘリで運ばれICŪに。倒れ込んだ妻の顔と身体の半分は硬直して「ああっ、ううっ」と言葉にならない。抱き起そうとした私の右腕が抜けない。不安神経症を抱え取り残された私は……。病院への往復の車内で、風呂でキッチンで「お母さん」と声を上げて泣いた。そうだ、今日のことだけを考えるんだ!
鹿児島県霧島市 久野茂樹(73) 2022.9.30 毎日新聞鹿児島版掲載