はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

川内川あらし

2022-09-11 05:56:10 | はがき随筆
 妻の実家は薩摩川内市高江地区にあるが、ご多分にもれず空き家で、年に数回、墓参りや清掃のために帰郷している。家の前には広々とした田んぼがあり、緑の稲が育っている。
 時として秋や春、田んぼ一面に霧が立ち込め、幻想的な景色が見られる。今の季節、はかない夢を持って月屋山(160㍍)に登った。早朝7時に登り始めたが、山頂の展望台に着いて河口や甑島が手に届くように見える。残念ながら川内川の霧は皆無だった。地元の人はそれを「川内川あらし」と呼んでいるそうで、晩秋に来て、ぜひ山頂から名物の霧を見たいものだ。
 鹿児島市 下内幸一(73) 2022.9.11 毎日新聞鹿児島版掲載

平和の祈り

2022-09-11 05:47:23 | はがき随筆
 広島市街地を流れる川には被爆し焼け焦げた死体がひしめき合い浮上した。ドドド、ピカッ。と一瞬の光は「きのこ雲」に映った。少年が被ばくし妹をおんぶした。妹は「スイカを食べたい」と死に水を求めた。
 77年前、1945年8月6日広島、8月9日の長崎で、米軍により原子爆弾が投下された。毎年平和式典が開催される。心から感謝の誠をささげましょう。献花、献水しましょう。
 核なき世界へ、広島、長崎から全世界へ、戦争の恐怖と平和の尊さを訴えるメッセージを発信しましょう。恒久平和を自宅の仏壇でお祈りします。
 鹿児島県姶良市 堀美代子(77) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

幸せの洗濯物

2022-09-11 05:39:43 | はがき随筆
 今朝もたくさんの洗濯物が朝日に輝いている。白、オレンジ、ブルーなど色とりどりの子供たちのシャツが干されている。
 最近完成したその家は我が家の西方70㍍くらいの所にある。間は広い畑だけ。
 朝6時ごろには新聞を取りに玄関を開けるが、いつも子供たちのシャツの方が早く干されている。小さい子供たちが暑さの中で元気に汗をいっぱいかいて遊ぶのだと思うとうれしくなる。洗濯物は映画「幸福の黄色いハンカチ」をも思わせる。
 夕方、近くを通りかかったら、若いご夫婦と3人の子供たちが楽しそうに花火をしていた。
 宮崎市 杉田茂延(70) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

私の避暑地

2022-09-11 05:33:40 | はがき随筆
 今年の夏も数回、熊本県北にある岳間渓谷に出かけました。渓流沿いの駐車場で車を降りると、涼気がふんわりとまとわりつき、カナカナとひぐらしのやさしい声が、林のあちこちから聞こえてきます。
 少しのぼって、河原におりると、巨岩のわきに小さな滝があります。私は少し下流まで歩き、渓流の中にある、いつもの岩にとび渡り、おしりをつけて座ります。
 そして、苔むした巨岩と、しぶきをあげる小滝に相対し、清流、濃い緑の木々、ひぐらしの声につつまれ、ぼんやりとしたひと時を過ごします。
 熊本市北区 岡田政雄(74) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

孫との2人暮らし

2022-09-11 05:24:50 | はがき随筆
 3泊4日の予定で小学2年の孫がやってきた。ところが、その間に保育園児の弟がコロナ感染。当然ながら親も陽性反応が出てしまった。孫か帰るに帰れず、2人暮らしはそれから2週間に及んだ。夜は抱きついてくる孫と手をつないで眠った。電話やメールで親と交信できるとはいえ、「帰りたい」とは一言も言わず、よく辛抱できたと思う。夏休みも終わりの土曜日、晴れて両親と迎えに来た弟とハグして喜ぶ姿がいじらしかった。「大変お世話になりました」「いいえ、ぱあちゃんは楽しませてもらったよ」「僕こそ……」と頭を下げて帰っていった。  
 熊本市中央区 渡邊布威(84) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

軍歌と映像

2022-09-11 05:16:52 | はがき随筆
 私が生まれてすぐだった。真珠湾攻撃で勃発した太平洋戦争。4歳にみたないうちに終戦となった。私世代より少し上だと戦争の悲惨な記憶もお持ちだが、80歳の私には幸か不幸かそれがない。
 施設訪問をしていた頃、「軍歌」を聞くと号泣が止まらなくなる人や軍歌の演奏そのものを拒む人がいた。
 「軍歌」が引き金となり、悲惨な戦争がよみがえり苦しませる状況を直に見聞きした。が今、ウクライナの戦況を露骨にテレビが映し出す。その映像が後々「軍歌」のように当事者を苦しませることのないように祈りたい。
宮崎市 日高達男(80) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

幸多かれ!

2022-09-11 05:08:03 | はがき随筆
 7月14日午前7時40分、ひ孫がこの世の生まれ出ました。普通なら何はさておき産院にすっ飛んで生き、ご対面となるのでしょうが、新型コロナの再燃でそうはいきません。
 しかし、便利な世の中で、生まれたばかりの女児が両手両足をばたつかせ、生まれ出た喜びを全身で表現した動画がスマホで送信されてきました。
 今、碧い地球が戦禍によって赤く染まりつつあります。ウクライナの罪のない子供が殺されています。こんなことが起こらないように日本が、いや世界が平和であり、この子に幸い多かれと強くいのる曽爺です。
 鹿児島県肝付町 吉井三男(80) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載

おばちゃんありがと

2022-09-11 04:55:33 | はがき随筆
 友だちから「EXILE(エグザイル)」のコンサートに行くよ、と誘われた。会場に着き看板を見ると、別の歌手の名前が。? と思ったが、そのまま入場した。1曲目が始まると、皆、一斉に立ち上がり手拍子。その時私は斜め前の「おばちゃん」から、目が離せなくなった。
 年の頃は70代。手拍子と共に大きく体を動かし踊りだした。まさに踊っているのだ。それが曲に合っていて面白く、素晴らしい。メンバーを知り尽くしているなと、うらやましかった。
 私は一曲も知らないまま「ゴスペラーズ」のコンサートは終わった。メッチャ、楽しかった。
 宮崎県日南市 永井ミツ子(74) 2022.9.10 毎日新聞鹿児島版掲載