はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

処暑

2022-09-02 16:40:54 | はがき随筆
 連日の熱中症警戒アラートの中で立秋を迎えた。しかし秋の気配なんてどこにもない……。
 列島各地を熱波が襲い、酷暑日なんて言葉が連日報道された。
 そして今日は処暑。厳しい暑さが峠を越す目安とある。深夜、トイレに起きると、か細いコオロギの鳴き声が聞こえた。日中の暑さは続いても生き物には季節の変化が分るんだなあ。
 翌朝、窓を開けると、ひんやりとしてまぎれもない秋の空気。久しぶりに生い茂る雑草取りを頑張った。私がかすかな秋を感じる花「玉すだれ」も満開になっていた。
 鹿児島県鹿屋市 西尾フミ子(88) 2022.9.2 毎日新聞鹿児島版掲載

ナイス・キャッチ

2022-09-02 16:32:08 | はがき随筆
 母の日の前、毎年花をくれる娘に「小さい苗でいいよ」と言った。数日後「私も聴いてみたいから、ゴスペラーズのコンサートにする」と私を喜ばせた。
 娘が選んだ赤い服を着て娘の運転で出かけた。明け方の雷がうそみたいな好天で気分も上々。席に着くとやっと会える思いでワクワクした、アカペラの声量、歌唱力に圧倒された。後ろの席でも響き渡り胸を打った。すっかり魅了され酔いしれた。
 「行きたいな」とテレビにつぶやいたのを、さだまさし、小椋佳に無反応の娘がキャッチしていた。母の日と、少し早い誕生祝のすてきな夜をもらった。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(68) 2022.9.1 毎日新聞鹿児島版掲載


夜半の雷

2022-09-02 16:24:54 | はがき随筆
 熟睡しているまぶたを引っ張られるような光と強烈な音。時計を見ると床に就いてまだ1時間、日付も変わっていない。居間でテレビを見ていたかみさんのところへ行き、「すごかったねぇ」。そうしている間も10秒おきぐらいに、ピカッ、ゴロゴロ、ダーン、
 暑い午後の夕立ちならこんなのもたまに経験するが、真夜中にとは……。地球温暖化の影響などが、こんな形で表れるのか。太平洋戦争末期の佐世保大空襲の時も、こんな土砂降りの中、破裂音や光で生きた心地がしなかったな、と思い浮かび、2時間以上寝付けなかった。
 熊本市東区 中村弘之(86) 2022.8.31 毎日新聞鹿児島版掲載


ラジオ体操

2022-09-02 16:01:43 | はがき随筆
 「よいしょ、よいしょ」。講師の掛け声が我が家の庭いっぱいに広がると、蝉時雨もかまびすしくなる。午前6時半、夫と二人のラジオ体操が始まる。
 数年前から細々と一人続けてきた。4月1日から定年した夫が加わった。在職中はいくら誘ってもまるで興味なかったのに。夫は現職さながらに、身体の動きにバネがあってリズミカルだ。私はだらだら半分寝ぼけている。夫婦二人のラジオ体操も5カ月。そろそろ私も夫を見習わなくっちゃ、そういう気分になっている。
 たおたおと ラジオ体操 蝉時雨
 鹿児島県霧島市 白坂功子(64) 2022.8.30 毎日新聞鹿児島版掲載