はがき随筆4月度受賞者は次のみなさんでした。(敬称略)
【月間賞】9日「ちゃんと考えて」平田壮一朗=宮崎県都城市
【佳作】15日「ヒゲダンス」矢野小百合=熊本市西区
▽28日「思いがけないゆとり」永井ミツ子=宮崎県日南市
▽17日「失くしたもの」久野茂樹=鹿児島県霧島市
新型コロナウイルスの感染症対策として日本政府は4月に緊急事態宣言を実施。さらに5月末までの延長が発表された。全国の小中高校は3月から一斉休校となり、その間の卒業式や春休み、入学式などの自粛要請で異例のものとなった春4月。
「未来のぼくへ」と投稿したのは11歳の壮一朗君。「ごめんね。お姉ちゃん」。素直に謝るだけではなく、取っ組み合いのけんかでお姉ちゃんを爪でひっかいてけがをさせてしまったことを手紙に書いたのです。未来を生きていくこれからの自分への決意。ちゃんと考えて「落ち着いて」。壮一朗君、多くを学びましたね。
コロナウイルによる感染症の死亡者は日本でも600人を超えると伝えられています。お茶の間の人気者のコメディアン、志村けんさんの感染死をしのんだ「ヒゲダンス」。困難でなかなかうまくいかないことも、きっとできる。彼は笑顔で拍手して応援してくれている。小学生の頃からのお気に入りの芸人の突然の死を惜しみつつエールを送る、矢野さんの心温まる作品。
「コロナ」の影響で時間は無限にあるように感じると、捉えている永井さん。自粛生活の中で過ぎし日の忙しさを取り戻すように自然とたわむれている情景は読む者の気持ちを和ませます。ウグイスの鳴き声、ご飯をマキで炊く、山菜採りに行く……。緊急事態宣言は夫とのゆとりの時間の大切さ、かけがえのなさを気付かせてくれたのですね。
「失くしたもの」。今こそ身に沁みて考えるとき。「ぼくたち大人は、働くことに一生懸命で何かを失くした。そして大人たちの多くは、何かを失くしてしまったことさえ思い出せずにいる」と久野さんは書きます。与えられた命を全うする。元気に生きていくこと。忘れてはいけない大切なこと。
パンデミックと称されたコロナウイル感染症は世界を大混乱に陥れて各国が感染を食い止め死者が出ないよう必死。街中はひっそりとしています。その変化をはがき随筆にして投稿。かつてない風景、想いを共感し、一日も早い終息を願っています。
日本ペンクラブ会員 興梠マリア