はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

蠟 梅

2017-02-22 22:36:19 | 岩国エッセイサロンより
2017年2月18日 (土)
岩国市  会 員   角 智之

先般、趣味の会で満開の蠟梅の枝を数本飾ると、部屋は早春の雰囲気に包まれた。この花は梅とは別の種類だが、花弁は梅に似て蠟細工のような艶がある。   
花も終わり庭で花殻を集めると雑草に混じり、たくさんの小苗が生えていた。
これを増やしてみたいと考えたが、多くの庭木は接ぎ木か挿し木によるもので、実生では良い花は咲かないだろうと思い、廃棄した。
 ところが、調べると実生でも立派に花が咲くことが分かった。残っていた数本をポットに移植し、次の会合で希望者に譲りたい。数年後、上品な花と香りが楽しめるであろう。
   (2017.02.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

春立つの頃

2017-02-22 22:34:44 | 岩国エッセイサロンより
2017年2月17日 (金)
岩国市  会 員   山下 治子

節分の日、私はいつも鬼の役だった。給食後、年少組の教室にお面をつけて進入。気づいた園児が悲鳴を上げて泣き出す。
 わざとダミ声で「給食残した子はおらんかあ」と園児を追い回す。持っていた玩具を投げる子、私の足にかみつく子、正義の味方に変身する子など園児たちに涙が出るほど笑わせてもらった。「みんな残さず食べました。良い子ばかりです」と先生がかばう。おませな女の子が「あっ給食の先生だあ」と言った。あの懐かしさがこみ上げる。
 息子が玄関を開け「鬼は外……」と豆をまいた。我が家だけのようだった。
   (2017.02.17 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

神ってる

2017-02-22 22:33:34 | 岩国エッセイサロンより
2017年2月16日 (木)
岩国市  会 員   林 治子

道路修理とかであちこち渋滞にぶつかり買い物に意外と時開かかかった。やっと帰り荷物を降ろしレシートを見ながらふとカードが無いのに気がついた。
 買い物袋を逆さにして捜す。あそこかと思う心当たりもない。買い物はしたのだが、その
後どうしたか記憶がない。またか。このごろ、よくこんな場面に出くわす。その都度どこからか救いの手があり解決。今度は駄目かな? いよいよ認知症? 
 覚悟しかけた時、電話のベルが。店から力―ドが落ちていたとの知らせ。思わず大きな声でありがとうの連発。心の中で「神ってる」と感謝。
   (2017.02.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

今度は何色かな

2017-02-22 22:32:12 | 岩国エッセイサロンより
2017年2月11日 (土)

岩国市  会 員   中村 美奈恵

 高2の三男へのクリスマスプレゼントは水色の腹巻きだった。マフラー、手袋と候補はあったが「期末テスト中、おなかが痛くなった」と言っていたからだ。
 イクメンの長男に「腹巻きが癖になるよ」と言われたが、それで安心できるならいいじゃない。昔の私なら同じように思ったろう。次男を産み年を重ねるうちに、ゆるーくなった。それでもまあまあ育っている。だから奮闘中のお嫁さんに「たまには手を抜いて大丈夫よ」と言ってあげたい。
 やっぱり手放せなくなった三男。1月が過ぎ、そろそろ洗濯した方がいいと思う。
      (2017.02.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

天国からの出席者

2017-02-22 22:29:38 | 岩国エッセイサロンより
2017年2月20日 (月)
      岩国市   会 員     吉岡 賢一

 50歳を迎えた節目に「人生の小休止」と題した中学時代の同窓会をおこなった。返信はがきに混じって、聞き慣れない女性名で一通の現金封筒が届いた。中には、満面の笑顔で乾杯ポーズのK君の写真と手紙、そして会費と同額の1万円が添えられていた。
 「主人は人生の小休止を向かえる前に49歳で他界。皆さんに会えるのを楽しみにしていました。同封の写真で出席させて頂きます。お酒が好きだった主人にも一杯ついでやって下さいませ」と綴られていた。
 愛する夫を若くして見送らざるを得なかった無念さの中で、夫の希望を叶え、同窓会に出席させたいと願う奥様の深い愛に言葉を失った。
「夫婦とはかくあるべし」。そんな思いで迎えた当日、天国からの出席者紹介で始まった同窓会は、異様な感動と興奮に包まれ最高に盛り上がった。
 予期せぬ手紙に心震わせたあの日。以来24年の歳月を経た今も、行動する私に勇気と活力を与え続ける珠玉の一篇である。

 2017.2.19 三井住友信託銀行公募「わたし遺産」。入選