わが陋屋の庭には白とピンクの詫助があり、寒風に耐えるように咲いています。時折、静寂を切り裂くようなヒヨドリの鳴き騒ぐ声にふっと我に返ることが多くなりました。ぼんやりしているぼくを気遣う妻が白の詫助を鉄色の美濃に無造作に挿し、春の足音を聞かせてくれます。一緒に聞くのが京旅行で買った香の薫りです。しまい忘れていた香を詫助が呼び起こしたようです。手のひらにぬくもりを感じながらいただく抹茶も春の色であり、香りを感じます。2人に穏やかな時間とほのぼのとした静けさが広がり、無上の幸せを感じる時です。
志布志市 若宮庸成 2017/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載
志布志市 若宮庸成 2017/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載