はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

タチウオ釣り

2013-09-20 21:51:46 | はがき随筆


 水俣の湯の児を出た漁船は白波を立てて天草に向け進む。昨夜、妻の弟の退職祝いで二日酔いの頭をなぎの潮風が冷やしてくれる。30分で五所浦沖に着く。先着のタチウオ釣り舟から歓声が聞こえる。身内5人のボルテージが上がってきた。
 初めに釣ったのは義弟のT。スマートで銀白色のきらきらと光るタチウオに皆が「きれい」を連発する。続いて義弟のKが次々と釣り上げる。私の糸が強く引いた。「きたぁ」。獲物は60㌢の大物だ。はしゃぐ私に義妹2人が拍手喝采で喜ぶ。
 2時間かけて二十数匹の収穫。既に朝日は昇っていた。
  出水市 清田文雄 2013/9/18 毎日新聞鹿児島版掲載

プレゼンテーション

2013-09-20 20:09:52 | ペン&ぺん

 8日は眠たかった。2020年の東京五輪開催が気になり、夜通しテレビを見たからた。「無理かな」と諦めていたので、私も興奮して、結局眠れなかった。
 皆さんも何度もご覧になったように、高円宮妃久子さま、パラリンピックの佐藤真海選手、そして滝川クリステルさんの「おもてなし」の心などいずれのプレゼンテーション(企画案の提示、説明)も素晴らしかった。阿部晋三首相は福島第一原発について「状況はコントロール下にある」と世界注視の中、言ってのけた。先に福島で日本で言ってほしかったが、あの席で国際公約を述べたのだから、あとは約束通り実行してほしい。
 ついにイプシロンロケットも打ち上げ成功。ロケットの射場がある内之浦宇宙空間観測所を支えてきた肝付町の人たちはごう音を上げ上昇していく機体に感激もひとしおだっただろう。県内外から2万人が訪れたといい、改めて「ロケットの町」を全国に知ってもらえたのではないか。地元は官民挙げて受け入れに細心の注意を払い、遠方から来る人を待った。先月の延期時の再来訪者も多かったという。
 20年は鹿児島国対の年でもある。世界から五輪選手や多くの観戦者、観光客も来日する。五輪招致活動で「プレゼン」が、またイプシロン打ち上げで地元の「おもてなし」がいかに大切かが、分かった。7年後は鹿児島が誇るこの自然や歴史、文化遺産などを広く紹介、PRし、多くの人を鹿児島に呼び込みたい。
 大震災に見舞われ、原発事故も起きたが、日本の説明に納得ができたから、世界のIOC委員は東京に投票した。なぜ必要か、納税者が納得できる説明を、知事がもっと上手にプレゼンしたならば、違う結果になっていたかもしれない。プレゼン軽んずべからず。
鹿児島支局長 三嶋祐一郎  2013/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載

5分の1

2013-09-20 16:46:41 | はがき随筆
 僕の12歳の夏から母はリウマチで6年間ふしていた。母の口から毎日、料理の仕方を習っていた。母亡き今でも懐かしい母の味を再現している。
 上等で高価な髪切りハサミを新婚の妻に渡して行った。「これからこれで散髪を頼むよ」。妻は驚いていたよなあ。専門家に研いでもらって大切に使い続けたハサミは40年余りで2本目だ。
 今日も妻に散髪しいもらったが、当然のことなから、なんてこっちゃ! あの頃は切られた髪はツヤツヤして量も多かった。妻は何も言わないが、量も黒さも5分の1だ。僕の人生の残りもーーー!
  出水市 中島征士 2013/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載

初秋

2013-09-20 16:32:28 | はがき随筆

 夏空を彩ったサルスベリが色あせ、朝の空気も肌に冷たく感じる。そんな雨の朝、旧知の友が訪ねてくる。あいさつもそこそこに駆け寄ってくる。「雨の日は夫と2人でしょ。息が詰まるの」と、ひとしきりの鬱憤話に「まあ、羨ましい」と返すと「うまくいかないものね」とお互いにため息。話は尽きず、ありあわせの昼食を楽しむ。
 愛する人を失ったが、生きがいは日々の暮らしの中にあることに気付かされる。子供たち、友人、仕事、書き物をすれば、そばに寄る愛犬のぬくもり。小さな幸せを数えてみる。開き始めたコスモスを目で追いながら。
  出水市 伊尻清子 2013/9/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ペットの盆供養

2013-09-20 16:22:51 | はがき随筆
 「当園では毎年、ペット達の盆供養をしています。読経と法話をお願いしたいのですが」という、ペット霊園からの電話である。
 行ってみて驚いた。40人~50人収容できるホールは満員で、入り口の外にテントを張るほどの参列者である。家族の一員として暮らしたペットとの断ちがたい絆を私は感じた。
 読経の後、東京の渋谷駅前に建つ「忠犬ハチ公」の話をし、ペット達にも、犬のハチのように、飼い主に対する深い思いがあるのでは、などと話した。
 参列者の中には、在りし日を思い出してか、目に涙が……。
  志布志市 一木法明 2013/9/15 毎日新聞鹿児島版掲載