goo blog サービス終了のお知らせ 

はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

台風10号

2012-08-01 19:42:45 | アカショウビンのつぶやき
10号台風は思わぬ方角から九州に近づいてきた。
広報車は朝から「午後3時頃に最接近」と注意を呼びかけていた。
私の力では、ガタとも動かぬ二階の雨戸は、いつものようにTさんが閉めに来て下さった。

ぐずぐずしているうちに、強く降り出した雨の中、植木鉢やプランターを安全な場所に。
然し15時には、西に向かって通り過ぎて行った。ゴーッと吹いたのはほんの数時間。
ああよかった。

9号に居座られた沖縄に大きな被害はなかっただろうか。
昔は9月1日が二百十日。台風は秋に来るものと思っていたが、最近は春でも発生する。

今日は外にも出られないので、たまりにたまった…はがき随筆のアップに専念する。
旅行中も帰ってからも、新聞を読む暇もない半月だったので、15日分、頑張りました。

然し、数日前にやって貰った、フレッツネクスト工事のあと、パソコンがおかしくなり、早くなるはずの操作がものすごく遅くなり、その上、フリーズするは、立ち上がらないわ…で、散々でした。
一体どうなっちゃったんでしょう。
明日はパソコンドクターのO氏に見て貰う予定。

楽しみにお越しくださった皆様ゴメンナサイ。
まだ14日から17日の新聞が手に入らず抜けてますが、あちこち手を尽くして探していますから、もう少し待ってくださいね。

野鳥はどこへ

2012-08-01 19:33:01 | はがき随筆
 家庭菜園を始めてから15年になる。毎年春に植えたトマトは夏の収穫期には鳥の襲撃に遭い、鳥と知恵比べをしながら収穫していた。今年は何の手立もせず、赤く完熟したトマトが取れる。ネットを張ったりテグスを高く通したりの苦労がないのはうれしかったが、だんだん拍子抜けがしてきた。
 早朝、小鳥のさえずりに元気をもらい、美しい羽やしぐさに癒されていた。
 暮れのころ、冬鳥が少なく春はメジロを見なかった。急に野鳥を見なくなった。あの小鳥たちはどこえ行ったのだろう。私の地域だけだろうか。
  出水市 年神貞子 2012/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載

祖母の悲しみ

2012-08-01 19:25:00 | はがき随筆
 父の戦死の公報が入った時に気丈な祖母(父の母)は「バンザイ」と叫び、お祝いだと言って飼っていた赤鶏をつぶして村の人たちにごちそうしたという。威厳のある祖母だったが、その時77歳ぐらいだったか。私は4歳。母屋に一人で暮らしていて、離れにはやはり戦争で夫を亡くした伯母たちが住んでいた。祖母は私たち母子が墓参りに行くのを心待ちにしていた。
 晩年90歳を過ぎた祖母は、認知症となり「勇一どんはどこへ行ったどかい。戻っこんが」と父を探し回っていた。本当はどんなに頼りにしていたか。祖母の涙顔が忘れられない。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/7/31 毎日新聞鹿児島版掲載

高校野球とヘリ

2012-08-01 19:07:25 | はがき随筆


 甲子園を目指す球児たちの活躍が伝えられる季節になった。高校1.2年の同級生に野球部員がいた。2年生からセカンドのレギュラーだった。クラスで誘い合い応援にも通った。前日の豪雨でグラウンドがぬかるみが残る試合日があった。延期になると応援にいけなくなる。観客席でやきもきしていた。遠くからごう音が。ヘリコプターがマウンドの一㍍程真上に下りてきた。空中に停止したまま、プロペラの回転でグラウンドを乾かし始めた。試合結果は覚えていないが、観客と選手全員で、機体が小さくなるまで手を振っていたことを思い出す。
 鹿児島市 高橋誠 2012/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載

災害

2012-08-01 18:59:23 | はがき随筆
 梅雨のさなか、気の合う仲間と連れだって大分、熊本の旅に出た。高速で熊本に向かい阿蘇、竹田、津久見、臼杵の石仏を見学する1泊2日の旅だった。
 竹田市岡城前では走行中にタイヤから流れる荒城の月のメロディーに、行ったり来たり。土地の料理や焼酎に楽しい思い出がいっぱい。ところが先日の豪雨で行った先々の町が大変なことになっているではないか。
 あの時、道を尋ねた人、親切なスタンドの人、レストランの人たち、大丈夫だったろうか。楽しかった思い出が不安に変わる。負けるな大分、頑張れ熊本、心から祈らずにはおれない。
  指宿市 有村好一 2012/7/29 毎日新聞鹿児島版掲載

味方の手

2012-08-01 18:53:22 | はがき随筆
 「生きていこうよ、母ちゃん」
 「うん」
 「100歳を超えてもいいから、生きていこうねえ」
 夫が突然そう言った。私はその時、いろんなごたごたで落ち込み“死”について、じっーと考えていた時だった。その言葉で、ハッと我にかえった。
 「お母ちゃん、精神的にまいらないようにしろよ」
 半身マヒの夫が、ゆっくりと右手を差し出した。
 握手をしたら、世界中のだれよりも温かく大きな手で「味方の手」だった。死は遠のき、安心が残った。
  鹿児島市 萩原裕子 2012/7/28 毎日新聞鹿児島版掲載

水蜜桃の謎

2012-08-01 18:33:15 | はがき随筆


 「じいちゃん、砂糖をかけたらおいしいねえ」。5歳の孫の言葉に発奮した妹婿。退職を機に桃づくりを始めた。
 先輩に教えを請い、いそしんだいあって、今年は形のよい大粒の実が大量になった。
 三十数軒に配り喜んでもらったが、妹はシロップ漬け、ゼリー、ジャム作りにも追われた。皮が薄く傷みやすいので日を置かず加工しなければならない。妹は柿だといいのにとこぼす。
 実のなる木は他にもあるのになぜ水蜜桃なのか。当人に聞いても返事がない。私と妹は、あの生めかしい形と肌ざわりのせいだと、ひそかに思っている。
  伊佐市 山室浩子 2012/7/27 毎日新聞鹿児島版掲載

ヘビやムカデ

2012-08-01 18:26:14 | はがき随筆
 何が嫌いといってヘビが一番嫌い。この地上に存在しなかったらどんなにいいだろうと子供の頃から思っている。ムカデは危険。娘が中1の時、夜にかまれてショック状態になり、救急車で病院に運ばれた。現在、夜は蚊帳をつる。今時のは畳に接する面に木綿布が張ってあり、一角のタテとヨコのファスナーを開閉して出入りする。
 以前、仲畑流万能川柳に「冬が好きヘビもムカデもでないから」とあり、全く同感。この生き物のうごめきに戦々恐々の毎日。アスファルトジャングルなる言葉があったが、それでもいい。町のど真ん中に住みたい。
 鹿児島市 内山陽子 2012/7/26 毎日新聞鹿児島版掲載

夢からさめて

2012-08-01 18:20:25 | はがき随筆
 3階建ての家に住む女が何か探している。2階に上がったが見つからない。3階へ。ない。また1階へ。1階はさっきも探した……。もうへとへと。へたりこんでしまった。
 我が家は2階建てだが、ほとんど1階で暮らす。散らかって手狭になると手当たり次第2階へ置きに行く。今や2階には物があふれ、積み重なってどこに何があるかわからない。
 今日は本腰を入れて2階の片づけをします。 
 すっきり片付けば、ステキな夢を見れそうな気がするので。
  鹿児島市 馬渡浩子 2012/7/25 毎日新聞鹿児島版掲載

立派になあれ

2012-08-01 18:00:42 | はがき随筆


 夕方、台所で取り込み中、弟が娘と生後3カ月の男児を連れて来宅。一瞬困惑。紅茶とちまきを出し応接間の方へ。男児は大声で泣き体をよじりオムツの交換を催促。お茶どころではない。母親が慌てて処置した。
 その後、急いで抱いて玄関の方へ。「また来ます」と足早に去った。私は後を追い、車のドアを開けると、オッパイに吸い付き「ゴクリ、ゴクリ」。なるほどこれで満足なのだ。「では泣き声の特別賞ね」と寸志を差し出す方を横目で「ジロリ」。
 自分が誰の家に来て何をしてもらっかさっぱり。始まったばかりの人生。立派になあれ。
  肝付町 鳥取部京子 2012/7/24 毎日新聞鹿児島版掲載

二つの土産

2012-08-01 17:28:50 | はがき随筆
 10年以上前、地球を旅していた頃、南の島(トンガがフィジーかサモア)で出会った大阪の青年が、たこ焼き器を手土産に突然やって来た。30代から50代へと一気にオッサン化した彼は、糖尿病と脳梗塞を患い、天涯孤独のイケてないデブと化していた。窓際族だが、幸運なことに住居とサラリーは支給されている。何より不死鳥のように死地から舞い戻り、言語も取り戻し、曲がりなりにも独力で小旅行までこなせるようになった彼の努力を、私は褒めたたえた。
友は元気のない私に「不器用な生きざま」を置き土産に、再会を約束して鹿児島を後にした。
  霧島市 久野茂樹 2012/7/23 毎日新聞鹿児島版掲載

夕空

2012-08-01 17:20:37 | はがき随筆
 早めの夕食を取り、ソファに寝転んで空を見上げた。
 西から東へ行く雲の間から、久しぶりに青い空が見える。網戸から入る風は、雲の流れと同じ西風。マユミの木の葉が大きく揺れ、雨後の風は涼しい。
 雲は黒ずんだもの、灰色のものがある。その上は白で夕光に染まって、さらにその上に青空がある。
 いつも見ている青空への思いと異なって、なぜか懐かしさを感じる。
 もう3週間余り、神経の痛さに耐えてきて、こころなしか痛みも和らいだ夕べ。自然のありようで心が癒された。
  鹿児島市 東郷久子 2012/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載

アクシデント

2012-08-01 17:13:11 | はがき随筆
 4月のはがき随筆で入選となり、ラジオで放送されることになった。少し見えもあり、カッコよく話そうと思った。生まれも育ちも生粋の鹿児島県人。父の転勤で県内を転々としたので、イントネーションが他とチッ違う。練習して、いろいろな質問に、返答もバッチリのつもりだった。
 しかし、放送直前、何やら口の中で「ガリッ」と石をかむ音。「何で今」。義歯が2本接着部分からとれた。とっさに「もの(言葉)が分かっけ」「ゆっ、分かっが」。初の声デビューは、言葉がはっきり分かるように話し、終わった。 
  阿久根市 的場豊子 2012/7/21 毎日新聞鹿児島版掲載

母への感謝

2012-08-01 17:06:10 | はがき随筆
 母は5月、102歳で生涯を閉じた。入院するほどの大病も認知症もなく、家族にみとられながら自宅で亡くなった。3年ぐらい前、家族だけのささやかな白寿の祝いをした日の笑顔を今でも忘れない。暮らしは貧しかったが、7人の子を育て上げ、いつも幸せだと言って笑っていた。私は母から多くのことを学んだ。時々私が「長生きの秘訣は」と尋ねると「いつも感謝の気持ちを持つこと。クヨクヨしないこと。人生なるようにしかならぬ」と。いつも喜びの多い暮らしをしていた。母さん、ありがとう。
 亡き母の言の葉深し沙羅の花
  出水市 橋口礼子 2012/7/20 毎日新聞鹿児島版掲載

まぶしい教え子

2012-08-01 16:59:23 | はがき随筆
 鮮烈な再会だった。熊本で開かれた九州合同植物観察会にたまたま参加した時のこと。
 開会直前「先生、Sです」と声がする。振り向くと、未熟な私が生徒に最も厳しかった20代の時の、T中の教え子だ。
 偶然、彼は鹿児島県の参加者17人の案内と植物名の講師役。私は驚くとともに、S君がまぶしかった。彼は「中学の植物採集の宿題で一つも名をつけず、叱られたのがきっかけです」と話してくれた。
 私はその時、どんなに心ない言葉で叱責したことだろう。だが、うれしかった。S君は発憤して立派に成長していた。
  出水市 小村忍 2012/7/19 毎日新聞鹿児島版掲載