はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

牙はサトウキビ

2010-02-15 22:36:07 | はがき随筆




 今年も西之表市の郵便局横に平成22年の干支トラのオブジェがお目見えした。郵便局員のOBの作だそうだが、ほぼ実物大の見事な出来栄えである。
 その素材がまたユニークだ。キンカンの目、松ぽっくりの歯にサトウキビの牙、耳はススキの穂、胴体はワラ、つめもサトウキビと、島の産物が巧みに活用されている。さらにその後ろ姿を見れば、大きなユズでオスの印、金の玉袋がぶら下がり芸の細かいところも見せている。
 尾を背中に背負い、ひげをピンとはねあげ″ガオーッ″とほえるさまは迫力満点。見る者の目を楽しませてくれている。
  西之表市 武田静瞭(73) 2010/2/15 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は武田さん提供

チョコっと「交通安全」

2010-02-15 22:05:57 | アカショウビンのつぶやき
 鹿児島市の専門学校生が、鹿児島医療福祉専門学校前で、運転手にチョコレートを配った。
 「チョコっと注意」
 「スピードを控えめ」
 「ライトを早めに点灯」
など交通安全の呼びかけを添えて。

 受け取ったドライバーは、思わぬプレゼントにニッコリ…。

 チョコっと効き目があったかな。

診断されて

2010-02-15 21:56:58 | はがき随筆
 いつもの一般健康診断を受けた後、今度は更に精密検査を、との通知をもらいました。
 PSA(前立腺特異抗原)という耳なれない名前の数値が高いということでした。
 病院では「生検」つまり細胞を採取してもらい、その結果、アウトの判定でした。
 がんとは不思議な生き物らしい。細胞の中で、それ自体では死の方向性を持たず、故に宿主の死を早めるように成長する。
 目を友人や知人に向けてみると経験者の多さに驚きます。
 世界井一周中の間寛平さんもそうだとの報を受けました。なお走り続ける寛平さん、頑張れ。
  出水市 松尾繁(74) 2010/2/14 毎日新聞鹿児島版掲載

お大事に

2010-02-15 21:45:00 | はがき随筆
 初めての胃の透視をした。結果は胃かいようと十二指腸かいようのダブルパンチだ。原因はストレスとの診断。看護師さんの「お大事に」の一言が緊張を和らげた。慰めと勇気づける言葉だろうか。看護師さんの″決まり文句″だろうか。不思議でならない。永久に消滅するあいさつではないだろう。これ程に「お大事に」を重視したことはなかった。病気の重さを痛感した。お大事にの決まり文句の言葉が脳裏に強く刻まれた。病院の帰り際に看護師さんの「お大事に」のあいさつが印象的だった。30年近くも働いた体もくたびれたろう。ねぎらいたい。
  加治木町 堀美代子(65) 2010/2/13 毎日新聞鹿児島版掲載

いざ往きめやも

2010-02-15 21:40:41 | はがき随筆
 私の気力を引き出す文章は「いざ、生きめやも」
 ふと、42年ぐらい前の高校生の時の記憶がよみがえった。テストに出た「生きめやも」の文法的説明ができなかったこと。
 時を経て、正解を知りたくなった私は、知り合いの国語の先生に教えてもらった。
 詩人ヴァレリーの詩集の中に出てくる一節を正解のようにいうと<どうして生きられようか、とても生きてはゆけない>という解答に驚いた。しかしずっと、生きてゆくのだという意味のつもりだったし、小説の中で出合った一節だ。だから、2010年もいざ、生きめやも。
  鹿屋市 田中京子(59) 2010/2/12 毎日新聞鹿児島版掲載


きつね火

2010-02-15 21:28:08 | はがき随筆
 小学1年のころ、母がきつね火が出ていると知らせてくれた。家の外に出てみると、村の墓地の下の辺りに、赤い火と青い火と交互に火の玉が舞っていた。春の暖かい夜であった。好奇心から、しばらくきつね火に見とれた。余り気持ちの良いものではなかった。
 この光景とは別に、兄が八代から山越えの時、山里で日が暮れ、樫の木峠から一人きりで行く手に大きな火球が動かない。下げたちょうちんのしんきろうではとちょうちんを動かしたが火の玉は動かずゾツとした。集落の灯が見えてから火の玉もいつとは無しに消えたという。
  鹿屋市 山口弘(77) 2010/2/11 毎日新聞鹿児島版掲載

何の変哲もなく

2010-02-15 21:23:23 | はがき随筆
 目がさめ灯をともすと、まず一番幼い孫の写真にお早う、次は10歳、16歳君へ「お早う」と声かける。仏壇へ線香とお茶をあげ新聞を読む。6時半になるときっちり外へ出てラジオ体操。頭上の星や月を仰ぎながら少しあかるくなる朝の中にたたずむ。寒いが、手を擦り体を動かすとあたたまる。すんだら40分から新川沿いの散歩へ。いつものことをいつものように繰り返している。が、この変哲のないことも私の大事な日々であり、果たしていつまでこうあれるのか。健康をベースに反復する時々刻々への念は深い。今年も自然に、はがき随筆へよろしく。
  鹿児島市 東郷久子(75) 2010/2/10 毎日新聞鹿児島版掲載



1月の大そうじ

2010-02-15 20:25:38 | はがき随筆
 長男、次男が家を離れて生活するようになってから、1月に大そうじをするようになった。
 年末の大そうじで背伸びをしての作業が続くと「2人が帰ってきた時やってもらおう」と長身の2人をあてにして、高い部分のそうじを残してしまうからだ。結局は、友人と外出するか家で寝てるかの二つに一つの彼らに多くを言い出すこともできないまま、短い冬休みを終えるということになるのだが。
 今年はそれが3回目。脚立に上って窓ふきしながら「元気かな」と2人のことを思う。
 帰りを待つ作業の始まりかもしれない。
  薩摩川内市 横山由美子(49) 2010/2/9 毎日新聞鹿児島版掲載