はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

銀ブラ

2006-02-16 19:01:37 | アカショウビンのつぶやき
2月14日
 暖かな晴天に恵まれ、久しぶりの銀座を歩く、ウインドウショッピングもたのしい。
 一度訪ねたかったのがメソジスト派の銀座教会、明治34年、銀座4丁目に建設されて116年の歴史を持つ。何回も建て替えられているが、パイプオルガンの荘厳な響きに、しばし心静まる時をいただいた。毎日行われる正午からの礼拝は、近くにお勤めの人やショッピング途中の人も自由に参加できる。(上の写真が有名な初代銀座の鐘)
 そして次は明石町まで足を延ばし、聖ルカ国際病院のチャペルへ。ここは病院の患者、職員の祈りと讃美、礼拝の場だが、誰でも自由に見学出来る。正面に輝くブルーのステンドグラスからの光が静かな祈りの雰囲気を醸し出す。ここでも美しいパイプオルガンの音色に魅せられ心を洗われた思い。たとえ信仰は違っても人々の心に愛と平和を与え続けるものが宗教であってほしいとつくづく思う。
 教会巡りの後は、現世に戻って肉の糧。築地で美味しいお寿司を! と足どりも軽く「へたの会ご一行さま」は歩きました。
「へたの会」とは?? 何でしょう。次のお楽しみに……。(アカショウビン)

火鉢事件

2006-02-16 18:13:15 | はがき随筆
2月16日
 火鉢に手をかざして暖をとっていた幼かったある日の事。全身温まるには、自分が火鉢の上にいけば良いのではと火鉢にまたがった。火鉢の縁は広く安定していたし、思った通りカラダの芯から温かくなった。良い方法を見つけたとうれしくなった。降りようとした途端、バランスを崩し火鉢が傾き、炭火が飛び出て、あっと言う間に畳を焦がした。すぐに火箸で炭を元に戻し、焦げ目を隠そうと、その上に火鉢を移動した。においがしたのか母がすっ飛んできて、「火事になるが!」と、火鉢をどけたらくすぶっていた。あの焦げ目は私の心にへばり付いている。
   鹿児島市慈眼寺町 馬渡 浩子(58)

田の神さあ

2006-02-16 18:02:48 | はがき随筆
2月15日
 九州自動車道北インター近くの高架橋の下に、車の行列を見る田の神さあが居られる。風化を続ける永遠の微笑、汚れた野菊の供花がわびしい。
 この付近、1960年代には甲突川の水利を得て、夏は植田から青田、秋は実りの黄金色、冬は刈田、稲架の風情が、田の神さあの視界を満たしていた。
 いま、豊かな水田のかけらも見あたらない、すごい変ぼうだ。
 あの懐かしい風情は再び帰って来ない。田の神さあは、何を思っているだろうか。排気ガスと振動にとまどっているのかも。
   鹿児島市伊敷 福元 啓刀(76)

ユックリズムで

2006-02-16 17:44:15 | はがき随筆
2月14日
 「1年の時の流れが早く怖いくらいです」と、友人の賀状にあった。確かに年々に速度を増して月日が飛び去って行くような気がする。子供のころや、若い時は1日が長く充実していたような……。
 子育てをする時でさえ余裕があつて、例えばお正月には髪を結ってやり、晴れ着を着させて自分も着物を着て、何となく晴れやかな気分で正月を迎えたものだ。
 新年こそは着物を着て、孫たちにも着せさせてと思っていたが果たせなかった。今年は時に流されず、1日1日を豊かにゆったりと過ごして行きたい。
   霧島市溝辺町崎森 秋峯いくよ(65)

メジロ

2006-02-16 17:17:28 | はがき随筆
2月12日
 庭木で遊ぶメジロを見ていると、戦後のメジロ捕りの様子が目に浮かぶ。
 夜明け前、寒さに震えながら兄たちと裏山に登り、雑木の高枝にメジロ籠を2、3箱かけ、小枝にミカンを刺し、鳥もちを巻いた止まり木を渡す。あとは木陰に身を潜めて、籠の囮メジロが「チュリー」「チュウーチン」と響く声で仲間を呼ぶのを待つ。
 捕らえた美声、美形のメジロは小鳥店が引き取ってくれたので、ひと冬で布の野球グラブを買うことができた。庭先の数羽のメジロのさえずりは、鳴き真似が上手だった亡き2人の兄の声音に聞こえる。
   高尾野町柴引 清田 文雄(66)

おとしさん

2006-02-16 10:13:06 | はがき随筆
2月11日
 「母ちゃん、どうして、そんなに靴下をたくさんはくの?」。とても寒い日だったので、靴下を2枚重ねてはいて外出しようとした私に、8歳の娘、三希子が声をかけた。「母ちゃんはもう、おとしだから」「えっ、そんな事、自分で言うんだったら、名前は〝おとしさん〟にしなさい」。怒ったような声だった。あ、ごめん。私が「おばあちゃんですか?」と他人に尋ねられると、三希子は「いえ、母ですから」と、き然として言ってくれるのにね。娘に二度と〝おとしさん〟と呼ばれないよう愚痴らず、身も心も若々しく、娘と夫と共にはつらつと生きたいと思う。
   鹿児島市真砂本町 萩原裕子(53)