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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

神の声

2018-03-21 16:20:39 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月16日 (火)
 
岩国市  会 員   吉岡 賢一



 ありがたいのかどうなのか、やや複雑な思いで「後期高齢者」の指定を受けた。あれから1年過ぎた今も、自ら健康優良老人を名乗るだけあって、一般検診や血液検査、がん検診など、検査項目すべて特に異常なし。
 「ほらね、この通り」と自分の手柄のように報告した。だが待てよ。朝はおかゆとみそ汁に自家製梅干し。夕飯は玉ねぎワインと酢をたっぷりの大根おろしの前菜を欠かさない。そんな用心深い食事管理を毎日するのはカミさんじゃないか。そのお陰だと、胸の中で手を合わす。
 「メタボだけは自己管理よ」と厳しい声が耳を刺す。



  (2018.01.15 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

胸躍る2軍キャンプ

2018-03-21 16:19:24 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月10日 (水)
   岩国市   会 員   吉岡賢一

  岩国市の新球場で広島東洋カープの2軍キャンプを実施するという。思いがけないお年玉をもらった気分で、「こいつぁ春から縁起がいいわい」と悦に入っている。
 2軍の春季キャンプ第1クールの2月1~3日を、 「キズナスタジアム」で行うという。早速、友達にも声を掛けてカレンダーに書き込んでおいた。
 キズナスタジアムは、国が米軍と市民の共同施設として整備、昨年11月にオープンしたばかりで、どのような施設なのか興味津々。そして、グラウンドを駆け回る選手のユニホーム姿に今から胸を躍らせている。
 ありがたいことに、岩国市には由宇球場というカープの2軍練習場がある。2軍公式戦も行われ、注目の選手に近くで声を掛けることもできる。
 今年は大型選手の入団で、由宇球場は熱く燃えるに違いない。球春に胸躍る春季キャンプの岩国実施は、野球ファンに限らず楽しみなイベントだ。粋な計らいに拍手を送りたい。 

    (2018.01.10 中国新聞「広場」掲載)

「その日始め」心掛け

2018-03-21 16:18:46 | 岩国エッセイサロンより
2018年1月 8日 (月)
   岩国市   会 員   片山清勝

 仕事始めの記事を読みながら、それに縁のなかった職場時代を思い出した。30代半ばくらいまで、化学製品の製造プラントで3交代勤務をしていた。連続して安定・安全運転をすることが毎日の仕事で、仕事始めなどという区切りはなかった。
 プラント運転ではちょっとした油断は事故や災害につながる。毎日の運転や安全についての始業前ミーティングが重要な仕事始めだったと思い当たる。
 年末年始の勤務によっては、タワーの頂上から瀬戸内海に昇る初日の出に何か手を合わせた。思い返せば、ぜいたくな経験をしていた。
 昔、農村では田畑へのくわ入れ、山村では木の切り始め、漁村では舟の乗り始め、商家では初売りや初荷を仕事始めとしたとある。
 現在は官庁、企業とも職員を集め、幹部の訓話が一般的となっている。それに比べると、昔の仕事始めはそれらしい実感が湧く。
 今年からは毎朝、「その日始め」を実行したい。平穏に過ごせることを実践し、人に迷惑を掛けないように心掛けたい。 

     (2018.01.08 中国新聞「広場」掲載)

ミカン作りねぎらう

2017-12-27 17:10:42 | 岩国エッセイサロンより
2017年12月24日 (日)
   岩国市   会 員   横山恵子

 下関から地元の岩国に帰って、はや38年。その間、亡夫の教え子のご両親から、毎年ミカンが送られてきた。
 先日、その中に「今年をもって、ミカン作りを終えることにしました」という手紙が添えてあった。
 数年前から年齢を重ねて作業が難しくなったと話されていたので、やはり来るべき時が来たと一抹の寂しさを感じた。
 賞を取ったこともあるミカン作り。夫は「あのミカンはひと味違う」と毎年楽しみにしていた。
 下関時代には、出荷で忙しい時など、猫の手くらいだったが夫も休日に手伝っていた。当時、赤ん坊だった息子をミカン箱に入れて作業していたことを、懐かしく思い出す。
 下関を離れても、教え子の結婚式に夫婦で招かれたり、6年前には息子一家と訪れて昔話に花を咲かせたりと、思い出は尽きない。
 半世紀以上ものミカン作りは、ご苦労があったと思う。お体に気を付けて、ゆったりと過ごしてくださるように願っている。

     (2017.12.24 中国新聞「広場」掲載)

健康守って社会人に

2017-12-27 17:09:53 | 岩国エッセイサロンより
2017年12月18日 (月)
   岩国市   会 員   片山清勝

 13日付ヤングスポットの「就職まで学業も全力」は、就職試験前の緊張と内定の喜び、卒業までの心構えと周囲への感謝などが簡潔に書かれていた。
 読みながら、現役の頃、高卒採用担当として受験生に接し、強く印象に残っていることを思い出した。
 それは手を膝の上で握りしめ、顔を紅潮させ、正面を向いて懸命に答えてくれる面接試験での姿だ。
 背筋を伸ばし、真摯な姿に接すると、全員を採用したいと思ったこともある。
 筆記試験の感想を問われると、謙遜か学校の指導なのか分からないが、高得点なのに自信たっぷりの答えはあまりなかった。
 投稿者は「残りの学生生活は学業も手を抜かず全力で楽しむ」と結んでいる。
 経験からこれに一つ加えるなら、健康管理を十分に果たしてほしい。今年の就職内定率はこれまでにない高さという。みんな健康で明るく第一歩を踏み出してほしい。

     (2017.12.18 中国新聞「広場」掲載)

年賀状 年重ねても続けたい

2017-12-27 17:09:09 | 岩国エッセイサロンより
2017年12月16日 (土)


   岩国市  会 員   林 治子 



 近所のスーパーで、古くからの知人を久しぶりに見かけた。
 数年前に年賀状のやりとりが途絶え、気になっていた方だ。

 声をかけて年賀状の話を持ち出すと、「もう80をと~うに超えたのよ。 まだ書けって言うの」と言われた。意外な反応に、怒らせてしまったのではと心配した。

 数日後、同世代の友人から電話があった。 電話より手紙、という筆まめな人なので珍しく感じた。

 年賀状の話題になり、彼女は「書くのが億劫になってきた。今年はどうしょうかと思う」とこぼした。気力や体力が追いつかないらしい。
 私は書くことは億劫ではないものの、気持ちはわかった。 同じ理由で、用事を先延ばしにしたくなることが増えたからだ。 スーパーで会った知人もそうなのかもしれない。
  「年に一度だし、頑張って書いて『元気』とアピールしようよ」。
 自分自身にも言い聞かせるつもりで、友人を励ました。

(2017.12.15 読売新聞「私の日記から」掲載)   

炊飯器寿命かな?

2017-12-10 21:15:01 | 岩国エッセイサロンより
2017年12月 8日 (金)
岩国市  会員  林 治子

 朝ウオーキングから帰り玄関を開けた途端いつも匂ってくるご飯の匂いがない。確かにセットしたのに。とうとう寿命か。コンセントを外したり差し込んだりしてみた。どうにか動きそう。やがてコトコト音がした。3合炊きで家族が少なくなった今重宝している。  
 15年前に大阪から帰る時、田舎は都市ガスでないから電気で炊くようになるという友人からの頂き物。その親切に感謝した。でも品物を見てびっくり。中の釜にご飯粒がついていた。嫁入りさせる時は磨きをかけるのでは? 彼女にどんな考えがあったのか。聞くわけにもいかないが今も不思議だ。
(2017.12.08 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

最期のとき

2017-12-05 17:07:57 | 岩国エッセイサロンより
2017年12月 4日 (月)
   岩国市   会 員   片山清勝

 5年ほど前、妹の連れ合いが難病と診断された。全快の約束はなく、妹たちはそれなりの心構えをした。痛みの緩和はもちろん、余病の併発にも注意を払いながら、入退院を幾度となく繰り返していた。
 ある日、主治医から複数の延命策について説明があった。義弟は延命治療を望んでいなかったものの、それでも妹は、3人の子どもとしっかり話し合った。「夫の厳しい症状を考え、延命治療は受けないことにした」。そう決めた妹の表情は、苦渋に満ちていた。いつかはこうなると覚悟し、心の準備はしていたが、いざ直面すると、皆、沈黙した。
 夫として、父として、そして祖父として…。妹たちは、これまでに義弟から受けた深い思いやりに感謝し、手を握り、体を優しくなでながら、最期のときを見守った。傍らにいて胸を打たれた。
 義弟は73歳で生涯を終えた。闘病の苦しみを感じさせない、寝顔のように穏やかな表情に救われた。
 妹の長男は、会葬者を前に、遺族としてしっかりとした内容のあいさつをした。聞いていて「義弟は安らかな気持ちで彼岸へ旅立った」と私は信じた。

   (2017.12.04 中国新聞「明窓」掲載)

イノシシと共存遠く

2017-11-08 06:08:59 | 岩国エッセイサロンより
2017年11月 7日 (火)
   岩国市   会 員   片山清勝

 散歩中、イノシシが防獣ネットの外周りを掘り起こし、土中の餌を探した跡が長く続いている畑で、農作業中の人と話した。
 どこの畑にも防獣ネットは張ってある。それでも入り込み、農作物を荒し、畑を掘り返す。最近は人を恐れないのもおり、安心して仕事ができずに困っているそうだ。
 あの大きな体を維持する餌の量は半端ではなかろう。雑食性だから餌選びはしないだろうが、山から危険を冒して麓まで下りてくる、生きることの大変さは人も動物も変わりはない。
 ある日の夜明け前の散歩中、道沿いの畑から数頭のうり坊を連れた大きなイノシシに出くわしたことがある。
 子に合わせてゆっくりだが堂々とした歩みで道を横切り、山中に続くけもの道を上る姿を見送った。 人の親と同じく、子を思う優しい姿が強く印象に残っている。
 ちょっと、イノシシ寄りの心情になったが、荒らされた畑の様子を見ると共存の夢は遠い。

    (2017.11.07 中国新聞「広場」掲載)

やったね88歳

2017-10-26 14:15:23 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月16日 (月)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 市では時計が午後6時を指すと「ふるさと」のメロディーが流れる。聞きながら愛媛に1人で暮らす父に思いをはせる。
 耳が遠くなり電話で父の声を聞くことができないので帰省した。10年くらい肺気腫を患っていたが、今では見違えるほど元気になりデイサービスに週3日通っていると弟が言う。お墓参りで、弟に手を引かれながらも一生懸命に坂道を上る姿を見てまだまだ元気と安心した。
 昨年の数え年での米寿のお祝いの席で「健康長寿」と力強く願いごとを書いた父がまもなく満88歳を迎える。
 父さん、誕生日おめでとう。
  (2017.10.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

やったね88歳

2017-10-16 12:27:48 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月16日 (月)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 市では時計が午後6時を指すと「ふるさと」のメロディーが流れる。聞きながら愛媛に1人で暮らす父に思いをはせる。
 耳が遠くなり電話で父の声を聞くことができないので帰省した。10年くらい肺気腫を患っていたが、今では見違えるほど元気になりデイサービスに週3日通っていると弟が言う。お墓参りで、弟に手を引かれながらも一生懸命に坂道を上る姿を見てまだまだ元気と安心した。
 昨年の数え年での米寿のお祝いの席で「健康長寿」と力強く願いごとを書いた父がまもなく満88歳を迎える。
 父さん、誕生日おめでとう。
  (2017.10.16 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

カーテンの洗濯

2017-10-14 21:58:58 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月14日 (土)
   岩国市   会 員   片山清勝

 秋のよく晴れた日、我が家恒例作業の一つ、カーテンの洗濯をする。私の分担は、取り外しと洗濯後の取り付けの二つ。
 取り外しは、大した作業ではない。外した後でレールを水拭きする。
 洗濯を終えたそれは、水分を含み、取り外し時の倍くらいの重さと感じる。これをレールに取り付けるのは、両腕を上げた姿勢で行う。年々、骨が折れる作業と思う度合いが増す。
 現役の頃は家内1人でこの作業をしていたことになる。まあ、若かったが、大変だったろう。    
 気持ちよさそうに揺れるカーテンを見ながら、お茶を飲む。
(2017.10.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

孝と不幸と

2017-10-10 22:17:34 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 9日 (月)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

  その朝は、ちゃぶ台に卵が1個置かれていた。「これを飲んで滋養を付けて徒競走を頑張って」という家族の願いが込められた生卵である。台所では仕事を休んだ母が、運動会の弁当を手際よくこしらえている。
 「ヨーシ、今年こそはいいとこ見せよう」と気張ってはみるが、生来の鈍足。生卵のかいもなく孝行できないままに終わった。
 夢に描いた都会生活も俊足の兄に先を越された。夢を封印し同居を選んだ。父も母もこの手でお浄土へ送り届けお墓も仏壇も守っている。少しの孝と遠い昔の不幸が思い出される秋半ば。金木犀の香りが心潤す。
   (2017.10.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

メモで知識を充実化

2017-10-10 22:15:11 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 9日 (月)
     岩国市   会 員   片山清勝

 ある会の会報編集を年6回している。孫新聞は作り始めて17年だが、その作り方はいわゆる我流で通している。
  「伝わる文章力 広報紙の作り方のこつ」という興味を持たせる講座が公民館で開かれ、参加した。 広報に必要な文章の書き方、分かりやすいレイアウトなどの講義があった。
 文章は「分かりやすく、読者の気持ちを思って書くこと。もちろんミスは撲滅する」など、事例を交えての解説に納得した。
  「メモは言葉の引き出しを増やす」という言葉が心に残った。「これは」と気付けばメモする。書けないときはデジカメに撮っている。しかし、それはちょっとした覚書で、その存在を気にすることはなかった。
 今回の講座のレジュメにいくつか短いメモを残している。それがなければ、ポイントは思い出しづらいと気付いた。
 メモは知識の引き出しを充実させる。粗末にしてはつかんだものを逃してしまう。さて、次回からどう生かすか思案している。

     (2017.10.09 中国新聞「広場」掲載)

日々楽しむ友

2017-10-04 15:56:54 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 4日 (水)
   岩国市   会 員   林 治子

 百日草が生き生きと描かれた絵手紙が届いた。どなたから、と思わず差出人を確かめる。しかし、名前だけでは顔が浮かんでこない。
  「あなたの絵手紙を新聞で拝見しました。この頃、同窓会にはお出掛けではないのですね」。添え書きがあった。それで分かった。高校時代、仲が良かった友だちだ。
 声を聞きたくなった。急いで受話器を握り、電話をかける。呼び出し音が長い間続く。なかなか出てくれない。大きなお屋敷かも、と想像をたくましくしながら待つ。もう切ろうかと諦めかけた時、「もしもし」と細く優しい声がした。「あなたの絵手紙を偶然、新聞で見つけたのよ」から始まって、しばらく思い出話が続いた。
 今は1人暮らしで、24時間全部が自分の時間だという。 「お金も自由にたくさん使えれば、なおいいのだけど」 
 ふふふ、と笑って彼女は言葉を続ける。
  「1人で何でもするのよ。洗濯、掃除、買い物、料理。時間はかかるけれど、とても楽しいのよ」
 聞いていて、うらやましかった。―人で身の回りのことをこなす方は多いが、楽しんでしているとなると、どうだろう。嫌々、あるいは仕方なくしている人も少なくないのではなかろうか。
 日々、楽しんでいるなんて最高だ。見習わなくては。

       (2017.10.04 中国新聞「こだま」掲載)