名著『秀吟百趣』

2015-02-06 15:54:06 | 本の話
塚本邦雄著『秀吟百趣』講談社文芸文庫

香り高い名著です。

昭和53年、毎日新聞社刊の本をもとに昨年11月講談社より
文庫化されたものです。

簡潔に本書内容をまとめた宣伝を引用しますと
『漱石、白秋、・・・岡井隆まで。天才歌人が「今朗誦すべき」
 短歌・俳句を厳選、批評・解釈を施した秀逸な詞華集。』

取りあげた歌人の作から、塚本さんの選ぶ一首一句を紹介し
文庫2~3頁で文章をつけられています。

勉強になりますね。

すでに知っている作品でも塚本さんの解説で
奥深い世界が開けます。


塚本邦雄は前衛の天才歌人。
長い間、敬遠していました。

あるとき、古い歌の簡単な解説を目にし
認識が変わりました。
作品が前衛だからといって歌の基本0は共通。

たいへんに細やかで深い世界に誘われると
分かったのです。

(遅かった・・)

詩人の文章は多く名文ですが塚本さんも凝縮された
名文を書かれます。

御存じない方にお勧めいたします。


たとえば村上鬼城

たいへんに有名な句を取りあげておられます。

『冬蜂の死にどころなく歩きけり』

情景も浮かび易く、私でも知っている句です。

塚本さんはこれを分かり易く解き深めます。
そうして巷間、しばしば比較される一茶との
決定的な違いを指し示し、鬼城の人生まで簡潔に
描ききります。


ただし、この本に、若い方には注意が必要かも。

表記が、正字正仮名遣いなのです。
もちろんその方が圧倒的に正しいのですが
慣れないと初めはつらいかもしれません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿