わが初心ここにありけり敗戦日 ひよどり 一平
(わがしょしんここにありけりはいせんび)
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その日、私は国民学校五年生。夏休みの最ン中だった。
アメリカ第七艦隊の艦砲射撃で逃げ惑ったり、飛行機の機銃掃射に怯えたり、空襲警報で町中が焼かれたりと、ひどい日常を送っていた。でも、子供たちにとっては、楽しい夏休みだった。
あの日、天皇陛下のお言葉を聞くため、大人たちと共にラジオの前に座った。
大人たちは泣いた。私たち子供も泣いた。さほど意味が分かったわけではなかったが、大人たちに倣って泣いた。大変なことになったとだけは分かった。
夏休みはそのまま継続され、九月一日から二学期が始まった。
先生たちの作業は大変だったのだろうが、私たちはひたすら教科書に墨を入れた。進駐軍に見られて不都合なところを、先生の指示に従って墨で消したのだ。
戦争に敗けることの意味を知った。
それからの日常は、アメリカ軍の方針による勉強に切り替わった。
軍国少年であった私にとっては、大きな変わりようであった。
日本が大きな過ちを犯したということより、戦争をしてはいけないという意識が強かった。
その意識は今もさほど変わっていない。
やはり、欲張ってはいけないということですよね。
他国へ攻め入るなんて・・・・・
戦後の暮らしは田舎の果てまでも苦しいばかりの記憶です。
欲張らないことは平和をもたらします。
しかし、その色々なことがコンセンサスを得られるかどうかにかかって来るようです。
賢くなかったのかもしれません。