風邪も何とか退散の兆し、それでも今日一日だけはおとなしくしておりました。
とはいうものの、二日も寝ていたせいかおとなしく寝ているというわけにもいかず、待望の『寝床でDVD』がやっと三日目にして実現であります。
演目は・・・・・・・なんだか落語でも紹介するような言い回しですが、それもそのはず観たのは、佐藤多佳子原作、国分太一主演の『しゃべれども しゃべれども』でして。
とりわけムチャクチャ素晴らしいというんじゃないんですが、じつに後味の良い映画でした。私はこういった感じの映画は好物ですねぇ。
それぞれの登場人物が、微妙に少しずつ変化していくさまを、登場人物だけでなく観ている我々も気づかないほどに静かに流れ変わっていく、結末だって予想どおりになって、でもそれが自然で、普通に考えればそんなに電撃的な出来事や、衝撃的な結末など起こるわけもないのだから、
「家に来るか・・・ばばぁは居るけど」
「うん」
てな終わり方はじつに良い感じじゃござんせんか。
『お涙ちょうだい』や、『清く正しい純愛』ばかりを強調したい一心で、なんだかあれやこれやとやっているうちに、みんな同じようになっちゃった。みたいなところって、最近の映画に感じることはありませんか?
ちょっと前に、なんだかみんな同じようになってしまったハリウッド映画にゲップをしたら、突然『アメリ』を観てホッとして、ゆっくりと珈琲を飲み直した、みたな(笑)
『アメリ』と比較するのは少々無理はありますが、感覚としてそんな思いが出来たように思います。
見せるから、こんちくしょうめぇこれ見やがって、ビックリして座りションベンして、馬鹿になったら承知しねぇぞ、こんちきしょうめぇ、なぁ、俺だって驚いてんだぞ、これが五十両だ!
あらまちょいとぉぉぉぉ
百両だい!
あ~~~~~んんんん百両・・!
後ろの柱につかまれよ、てめぇひっくりけぇるからよ!
こうかい・・・
そう、これ百五十両!
あ~~~~~~~~
二百両だ!
あ~~あ~~~あん~~~~~~
もう少し我慢して、ほれ二百五十両!
あっあ~あれまぁ、ほんとおまえさんは商売が上手・・・
あっなんだこんちくしょうめ!ほうれ三百両!
ひぃぇ~~~~水を一杯
ほら始まりやがった、俺だって水を飲んだんだよ、どうだ!
ひーひーひー儲かるねぇ、何でも音がするもんにかぎるよぉおまえさん
そりゃそうよ、こんどは半鐘持ってきてたたくからよ
半鐘はいけないよぉ、おじゃんになるから
古今亭志ん生の十八番『火焔太鼓』の落ちでありますが、この『しゃべれども しゃべれども』の中で、大きな意味を持つ噺なのでありまして、それは見てのお楽しみ。
まだ観てない方は、期待せずにぜひともご覧下さい、後味のとても良い温かな飲み物のような映画だと思います。
さて、後味が良い話をした上で、今日の一枚は、私的にはひじょうに後味の悪かったウエイン・ショーターのアルバムです。
面子からいって、私が好んで買うはずもないことは、長くこのブログにお付き合いいただいている方にはおわかりのことと思います。(ファンの方申し訳ありません。)
では、何故手元にあるのか?
これは、先日お話しした植草甚一氏のスクラップ・ブック・シリーズの一冊『モダンジャズのたのしみ』が原因だったのです。
<前略> ふと出したレコードがウエイン・ショーターの最近の一枚「オール・シーング・アイ」だった。
ぼくはショーターが、そうすきではなかったが、この一枚は、妖術的であり呪縛的である要素が、以前よりずっと濃厚になっているし、聴いていて面白いので、なんだか急に彼がすきになってきた。
との一文があるんですよ。・・・・・乗ってしまいました。(笑)
以前、同じ1965年10月に録音されたコルトレーンの「OM」と比べ評し、「バブ、おどろおどろしさは「OM」の方が勝ってんど」なんて、いかにも「OM」よりマシだ的事を言われたことがありました。
違う!絶対に違う!・・・・・そもそも比べるものが違う!
当時のマイルス・グループのメンバーが親分外して、ブルーノートにおける新主流派の各楽器の代表選手で組み直し、ショーターのお兄さんをおまけに付けたみたいなこのアルバム。
たとえばですよ、マイルスの「E.S.P」とコルトレーンの「ASCENSION」を比べますか?
(もちろん「E.S.P」とこのアルバムを比べるのも問題はあると思いますが)
完全に方向性が違うじゃありませんか。
おっと、ちと興奮してしまいました。ともかく、植草さんが「なんだか急に彼がすきになってきた。」と思われたのには、ちっとばかり納得がいかないわけです。
でもね、これも全て個人の好み、好き嫌いがあればこその個性でありジャズであります。
本日改めて聴き直してみましたが、私がしいてこのアルバムで聴けるのは「CHAOS」ぐらいなものでしょうか。
時には、あまり好きくないアルバムの紹介もいいでしょ。
ちなみに、ショーターの兄、アランはラストの「MEPHISTOPHELES」に参加しております。
THE ALL SEEING EYE / WAYNE SHORTER
1965年10月15日
WAYNE SHORTER(ts) FREDDIE HUBBARD(tp,fh) ALAN SHORTER(fh) GRACHAN MONKER Ⅲ(tb) JAMES SPAULDING(as) HERBIE HANCOCK(p) RON CARTER(b) JOE CHAMBERS(ds)
1.THE ALL SEEING EYE
2.GENESIS
3.CHAOS
4.FACE OF THE DEEP
5.MEPHISTOPHELES
おまけ、
いかにあまり好きくないアルバムでも、私は「おじゃん」にはしませんよ。またしばらくたったら聴き直しをしてみます。
いずれ好きなアルバムになるかもしれませんしね。(ほんとかぁ?...笑)