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JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

ここは一発小説家?

2007年11月15日 | m-o

今日も快晴、気温も上がり、まさに『小春日和』でありました。
とうぜん、昼食は公園駐車場か、海を眺めながらと思ったのですが、なにせひ弱な私のこと(笑)冷たい風にあたって風邪がぶり返しても今夜の酒が不味くなりそうだってんで、いつもの喫茶店でのランチでした。

昼食を済ませ珈琲を飲んでいると、ふとカウンターの隅に置かれた本が気になります。
「なになに、倉橋由美子『わたしのなかのかれへ』???!!!!!!」
ママが昔読んだ本を引っ張り出してまた読み始めた、そんな一冊なのだそうですが
「あっ、これ読んでないけど知ってる。」
わけわかんないことを言い出した私。

じつは、一昨年発売になったマイク・モラスキー著『戦後日本のジャズ文化』(以前「自殺予備軍?」で紹介)に、倉橋由美子女史、そして『わたしのなかのかれへ』の話が出てくるのであります。
女流作家の作品をほとんど読まない私は(差別だ!男尊女卑だ!)倉橋由美子女史の本もほとんど読んだことがなく、『戦後日本のジャズ文化』を読んだあと、ちょっとだけ同書を探したことがありました。(その時は探しきれずそのままになってしまいましたが)

「ママは倉橋由美子なんて読むんだぁ・・・・ひょっとして『暗い旅』なんかも持ってたりして」
「探せばあると思うわよ。」とわざわざ引っ張り出してきてくれました。

あなたは親しげな微笑みとともにいった、「リクエストして、いい?」「とうぞ」とウエイトレスは答えた、   <中略>
「オーネット・コールマンですね」とカウンターの娘が口を尖らした。
「ございませんわ。うちのマスターが嫌いで、みんな持って帰っちゃったんです」
「チャーリー・ミンガスではいけません?」とウエイトレスがとりなすようにいった。
「じゃ、『BLUES & ROOTS』のA面、お願いするわ」
どうしてミンガスがオーネット・コールマンの代用になるというのか?・・・ミンガスは怒ってるにちがいない、猛烈なわめき声・・・そしてジャッキイ・マクリーンが切り裂くような音であなたをひっ掻く・・・・

これは『戦後日本のジャズ文化』にも抜粋されていた『暗い旅』の一部です。

「ママ、倉橋由美子はジャズ喫茶でバイトしてたことあるんだってさ、なんだか、俺と共通項があるような気がしない?ここは一発、俺も小説でも書いてみようかなぁ・・・
「バブさん、倉橋由美子は歯科医師で、なおかつ明大文学部にも行ってたんだよ。ジャズ喫茶でバイトしてたからって、バブさんとの共通項は微々たるもんだと思うけど。」
「・・・・・・・それって、コールマンとミンガスの違いぐらい?」
「そんくらいの違いだったら小説家になれんじゃないの」
「・・・・・・・・」

ともかく、ママが『わたしのなかのかれへ』を読み終わったら、二冊とも貸してくれるということですので、私が小説家になれるかどうかはそれからということで(笑)

さて、今日の一枚は、文中に出てきた以上これしかないでしょう。ミンガスです。
「どうしてミンガスがオーネット・コールマンの代用になるというのか?」というのもたしかに不思議ですが、そこで「直立猿人」ではなく、このアルバムが出てくるというあたりも不思議といえば不思議な気がします。
いや、そこらあたりが「倉橋女史ならでは」なのかもしれませんけど

同じジャッキー・マクリーン(文中では本に書かれているままの綴りにしました。)、マル・ウォルドロンが参加したJAZZ WORKSHOPとしては「直立猿人」より、かなり目立たない感のある今日のアルバムです。

文中の「そしてジャッキイ・マクリーンが切り裂くような音であなたをひっ掻く」の表現はじつによく分かります。マクリーンのアルトがまるで叫んでいるかのごとく、人の肉声だったり、馬のいななきだったり、ミンガス・ミュージックとでも言えばいいのか、ムチャクチャ泥臭いのに都会的でもあるといった感じに、バッチリとはまっています。

一曲目の「WEDNESDAY NIGHT PRAYER MEETING」が始まった瞬間に、だれしもがミンガス・ワールドへ引き込まれる一枚ですよね。

BLUES & ROOTS / CHARLES MINGUS
1959年2月4日録音
CHARLES MINGUS(b) JACKIE McLEAN, JOHN HANDY(as) BOOKER ERVIN(ts) PEPPER ADAMS(bs) JIMMY KNEPPER, WILLIE DENNIS(tb) HORACE PARLAN, MAL WALDRON(p) DANNIE RICHMOND(ds)

1.WEDNESDAY NIGHT PRAYER MEETING
2.CRYIN' BLUES
3.MOANIN'
4.TENSIONS
5.MY JELLY ROLL SOUL
6.E'S FLAT AH'S FLAT TOO

おまけ、
今日はヴォージョレ・ヌーボーの解禁日、これからMさんの配達を手伝いに行ってまいります。いつものバーの「おーくママ」も「今回は私も飲んでみようかしら」とMさんのところに注文をいただき、本来、本日中に届けて味見をとていただくところ
「バブさんも配達手伝うんで大変だろうし、今日飲んでも明日飲んでもヌーボーには変わんないんだから、バブさんが飲みに来るときでいいわよ。」との暖かいお言葉。
「ママ、明後日持ってきますからね。お楽しみに」