JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

御霊に祈る

2007年01月15日 | a-c

先週末、訃報が舞い込んできました。
12日に呼吸不全でアリス・コルトレーン(享年69歳)が、13日にはマイケル・ブレッカー(57歳)が、相次いでお亡くなりになったそうであります。
マイケル・ブレッカーが白血病だというニュースがながれてきたのは、たしか一昨年の6月頃だったと思います。その後、移植ドナーをニューポート・ジャズ・フェスはじめ、各コンサート会場で募集活動が起きた等々、その都度の情報はながれてきておりましたが、結局は病魔には勝てずお亡くなりになったとのこと、ひじょうに残念です。ご冥福をお祈りいたします。

マイケル・ブレッカーに関してはこの訃報を受けて、多くの方が記事を寄せられると思いますので、コルトレーン好きの私としては、あえてアリスについてお話ししようかと思います。

「私たち二人がある特定の精神世界に向かって旅立った以上、ジョンと力を合わせてその旅を続けるのはきわめて当然のことだと私は思っていました。」

アリス・コルトレーンがコルトレーンという名になれたのは1966年ですから、ジョンが亡くなるまで、正式な妻としては1年少々の期間しかなかったことになります。これは、姦通だけが離婚の合法的理由であると定められていたニューヨーク州法が、この年、別居も離婚理由の一つと認めたため、ジョンと前妻ナイーマとの離婚がやっと成立したことに起因します。

アリス・マクロード(アリス・コルトレーンの旧姓)がジョン・コルトレーンと初めて出会ったのは、1960年、故郷のデトロイトでのとあるパーティーでのことだったそうです。

「じっと私を見つめている彼の顔つきから、私たちはきっともう一度会うことになるだろうと思いました。」

ある日、アリスはパリの『オランピア劇場』にマイルス・ディビスのコンサートを聴きに出かけました。マイルスの横でテナーを吹いていたのはジョン

「彼の演奏を聴いているうちに、彼が演奏を通じて私に話しかけているのだという気がしてきました。」

1963年7月18日、アリスはヴィブラホーン奏者、テリー・ギブスのカルテットの一員として『バードランド』に出演、ギブスの人気レパートリー「トゥー・ヴァイブス」では、ギブスとの掛け合いをみごとに演奏しました。
これを聴いていたジョンが、楽屋を訪れ
「これからは、きみのことをなんでも知っている人間になる」

1966年メキシコのファーレスで結婚式を挙げた二人は、ニューヨーク・ロング・アイランド・ハンチントンのディクス・ヒルに新居を構えたのでした。

「・・・わたしたちは教会のような、一つの中心を作り上げようと考えていました。とは言っても、それを教会と呼ぼうとは思っていませんでした。・・・ですけど、それが音楽と瞑想のための場所となり、人がそこで祈りたくなるような教会といってもいいと思います・・・」

えっ?アルバムや音楽の話が何も出てこないって・・・・・
ごめんなさい、私はアリスのリーダー・アルバムを全く所有しておりません。
そこで、二人の愛の軌跡を記してみたというわけです。

ともかく、アリスはジョンの元に旅立ったわけですね。今二人はどんなことを語り合っているのでしょうか?

さて、今日の一枚はリーダーアルバムではありませんが、夫婦共演盤ということでこのアルバムにしてみました。
晩年のコルトレーンは病気の進行に逆らうかのごとく録音を続けましたが、大半をスタジオから持ち帰ったために、その記録は多くが失われてしまいました。
そんななか、まずアルバム「EXPRESSION」が日の目を見ます。次に「惑星空間」、その後も幾つかが発見されアルバムとして発表されました。

「んっ?まてよ、持ち帰った=喪失というのは、ちとおかしいんじゃないの?」
その通り! その多くを今日のその人アリス・コルトレーンが保管していたのであります。晩年だけでなく、その他の貴重な録音を保管していたアリスは、息子ラヴィとともにこれらの録音を調べ始めました。
一昨年でしたか発売になった「ONE DOWN, ONE UP : LIVE AT THE HALF NOTE」なんかもこの成果でしょうが、最初の成果と呼べるのが今日のアルバムです。

前年までの自由さだけを前面に押し出した演奏とはどこか違い、死を察したかのごとく比較的穏やかなコルトレーンがそこには居ます。(ファラオ・サンダースも入ってませんしね)
聴きやすい一枚とは言えませんが、私は晩年ものとしては比較的よく聴く一枚です。

STELLAR REGIONS / JOHN COLTRANE
1967年2月15日録音
JOHN COLTRANE(ts) ALICE COLTRANE(p) JIMMY GARRISON(b) RASHIED ALI(ds)
1.SERAPHIC LIGHT
2.SUN STAR
3.STELLAR REGIONS
4.IRIS
5.OFFERING
6.CONFIGURATION
7.JIMMY'S MODE
8.TRANESONIC
9.STELLAR REGIONS(Alternate Take)
10.SUN STAR(Alternate Take)
11TRANESONIC(Alternate Take)

追伸、
生涯でコルトレーンが愛した女性は、三人いたと言われています。
もちろん、うち二人は、ナイーマであり、アリスでありました。
そして、もう一人は、ロリンズに紹介された白人美人、アリスとの関係はどうだったのか。
コルトレーンと酒を酌み交わした仲でもありませんので、私が知るよしもありませんが、彼の性格を考えれば、三人全ての女性に真剣な愛を持って接していたのだと思います。
(ん?これは『トレーン教信者』のそうあって欲しいという願望かもしれませんけど)

さぁ、教徒バブが生涯で愛する女性の数は何人になるでしょうか????!
だれですか、「これから増えることはまず無い」なんて言う人は、想うぶんには勝手なんですからわからないでしょ。