昨日は、めずらしく仕事が9時過ぎまでかかり、そのままいつものバーへ1人で寄り道してしまいました。
いつものようにママと話ながら飲んでいると、私より幾分年上だと思われる男性客が1人入ってきました。
ジン・ロックを飲み始めた彼にママが
「こちらの方もジャズが好きなのよ」とのふり
若干趣味は私とは違うようでしたが、ジャコパスやウエザーリポートの話をひとみ輝かせ話し始めました。そしてふとこんな話をしだしたのです。
「私、もう10年近く単身赴任なんですよ、21の娘がいましてね、離れているせいかちっとも相手にしてくれなかったんですが、先日ジャズに興味が出てきたからお父さんのCD貸してって言うんですよ。なんか嬉しくなっちゃって、今CD-Rでベスト盤作ってるんですがね」
私は、ふと知り合いの美容師の話を思い出していました。
その美容師さんは50代のおやじなんですが、とんでもないロック・マニアで、1000枚以上のレコード・CDを持っている方です。やはり娘さんがいらして、ある日ギターを始められたそうです。そこで喜んだおやじは、自分が好きなギター演奏を何巻ものカセット・テープに録音して「聴いてみな」と贈ったそうなんです。
「バブさん、あんたもね、娘さんがサックス始めたからといって、「これもいいあれもいい」とか言いながら、押しつけちゃあダメだよ。逆効果だから、おかげでうちの娘なんかあんた、ロックのロの字も今は聴きゃあしないんだから」
大喜びではしゃいでテープを作った自分がバカみたいだったとおやじは話してくれました。
じっさい、私の娘がアルト・サックスを始めたとき、ベスト盤を作って聴かせようなんてふと思ったりもしましたが、美容師おやじの教訓を胸にじっとこらえました。
さて、バーに話を戻しますが、この「美容師おやじの教訓」を話すべきか、私はふと迷いました。こんな嬉しそうに単身赴任の彼が話しているのに.....
「それでも教訓は教訓だ、彼のためにもお話ししよう!!」
とても良い方で、真面目に教訓をお聞きいただき
「それじゃあ、娘が「これがいい」っていうのを貸してやればいいんですね」
「そうだと思います」
娘がアルト・サックスを始めたとき、ベスト盤を贈ったとしたら、きっとこのアルバムの1曲「I LOVE YOU」も入っていたでしょう。
SWING,SWANG,SWINGIN' / JACKIE McLEAN
1959年10月2日録音
JAKIE McLEAN(as) WALTER BISHOP Jr.(p) JIMMY GARRISON(b) ART TAYLOR(ds)
1.WHAT'S NEW
2.LET'S FACE THE MUSIC AND DANCE
3.STABLEMATES
4.I REMEMBER YOU
5.I LOVE YOU
6.I'LL TAKE ROMANCE
7.116th AND LENOX
おまけ、
マクリーンといえば、泣きのアルトというか、ひたむきでうら哀しいというか、そういったイメージがあります。
15才だった彼は、テナー・サックスをかついでバド・パウエルのアパートに通い続けました。ある日、チャーリー・パーカーを聴いた彼は、アルト・サックスに転向します。
17歳の時、パウエルが出演中の「バードランド」で客席で聴いていた彼にパウエルが「ジャッキー、サックスを持っているならステージに上がったらどうだ。」ジャッキー・マクリーン、デビューの瞬間でした。
初レコーディングは、マイルスの「DIG」彼は19才でした。