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最低の英艦上機

2013-05-18 14:56:16 | 軍事技術

最低の英艦上機

 英海軍は空母の先駆者であるにも拘わらず、第二次大戦当時の艦上機に関しては日米海軍に比べると、お寒い状況であった。中でも時代遅れで有名なのは、複葉の雷撃機のソードフィッシュとアルバコアである。第二次大戦中にも最前線で使われていたソードフィッシュは開発年次が古いから仕方ないとしても、後継機のアルバコアなどは、なんと低翼単葉引込脚の九七艦攻が採用されたのと同じ、昭和十二年の仕様で開発が始まったのに、複葉固定脚のアナクロなのである。逆に、でかくて複葉で、最大速度が220km/hという超のろまのソードフィッシュを撃退できなかった、ビスマルクなどのドイツ艦隊の防空能力はどうなっていたのであろう。

 たが英海軍の錯誤はそれに止まらない。それは艦上戦闘機である。艦戦のブラックバーン・ロックはなんと艦爆のスキュアから開発したものである。複座でしかも後部には巨大な銃筒までが設けられている。これでは、米海軍のドーントレス艦爆にさえ空中戦では負ける。フェアリー・フルマー艦戦は陸軍の軽爆撃機から開発したもので、全幅は14m以上と馬鹿でかい。艦戦と艦爆の両用に使うはずのものであったが、戦闘機としてまともに使えるはずはない。その後継機のフェアリー・ファイアフライは艦戦専用ということになったが、複座である。英海軍が艦戦の複座にこだわったのは、洋上航法のための航法士を乗せるためであったが対戦闘機戦闘には不利であるし、日米の艦戦は単座で任務を果たしている。しかし対戦闘機戦闘には不利で、搭載量が大きいと言うことが取り柄で、結局艦爆や雷撃機代わりに使われることが多かった。

 ブラックバーン・ファイアブランドに至っては、自重が5tを超え、2,500馬力の巨大なエンジンを積んでも最大速度は560km/hしか出ないありさまで、唯一の取り得の搭載量の大きさから、雷撃機兼用になってしまった。しかも雷撃機なのにこちらは単座である。米海軍も、雷撃と爆撃が可能な巨大な単座の長距離艦上戦闘機XF8Bを試作した。ファイアブランドより重量もエンジンも大きいが速度性能ははるかに優れ、航続距離は4倍近く、搭載量も3倍と、大きくしただけのカタログデータ上の効果はあった。まあ、まともな対戦闘機戦は望めなかったろうが。そもそもファイアブランドがこれだけ大きな機体になったのは、性能から考えると不可解としか言いようがない。要するに発注者の仕様に問題があったのである。

 このように、第二次大戦に向けて英海軍が開発した艦上機にはまともなものが皆無に等しいのである。その多くの原因は戦闘機に雷撃や爆撃などの能力を持たせようとしたことや、複座の艦戦にこだわったことにある。英空母は重装甲としたために極端に搭載機数が少ないことが一因であろうが、それだけでは説明できない。しかもその結果虻蜂取らずの見本で、全ての用途に使い道が無くなっている。唯一陸上戦闘機と対等に戦えたのが、シーファイアなのだが、戦闘での損害よりも、着艦事故の方がはるかに大きいと言う無様な結果となっている。それを補って余りがあったのが、援英機などとして導入された、ヘルキャットやアベンジャーなどの米海軍の制式艦上機であった。

 確かに日米海軍共に複座や双発の戦闘機といった一種の無駄な戦闘機開発も行ってはいる。しかしそれは、まともな艦上戦闘機があっての無駄だから、本来の用途について不足をきたすことはなかった。だが、英海軍はまともな艦上戦闘機も作らずに、遊びとしか思われないような複座の艦上戦闘爆撃機のような使い物にならないものばかり開発したのが問題なのである。あげくが、艦上機としての適性が最悪のスピットファイアを使うはめになった。

 一般的には飛行機のエンジンは後方から見ると時計回りに回る。最近気付いたのだが、なぜか英国製のエンジンには、この反対のエンジンもかなり存在する。艦上機が発艦しようとすると、エンジントルクのため、左舷方向に行きやすい傾向があるから、ほとんどの空母の艦橋はそれを避けて右舷に置かれている。ロールスロイス・マーリンエンジンでは問題ないのだが、後継のグリフォンは回転方向が逆な上に大馬力なものだから、これを装備した後期のシーファイアは発艦作業が大変であったろう。そこで途中から二重反転プロペラをつけるようになった。シーファングも量産機は同様にする予定であったから、影響は大きかったのである。何とかまともに戦えるシーファイアでさえこんな重大な欠陥も抱えていたのである。

 英海軍の艦上機開発の失態が露呈しなかったのは、独伊の海軍力が潜水艦を除いてあまりにも貧弱だったためである。結局英海軍は航空母艦の先駆者でありながら、運用や艦上機の開発には失敗した。第二次大戦の海軍で、航空母艦の運用と艦上機の開発運用に、バランスが取れた成果をあげたのは、日米海軍しかなかったのである。ファントムやトムキャットなどの米海軍の艦上戦闘機に誇らしげに旭日旗が描かれているのは、強い日本海軍航空隊に勝ったと言う誇りを示しているのである。

 


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