褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 わが谷は緑なりき(1941) モノクロの映像の凄さを感じます

2017年01月01日 | 映画(わ行)

 映画史に名を残す巨匠ジョン・フォード監督。西部劇の神様と呼ばれるぐらいだから駅馬車荒野の決闘など西部劇の名作が多い。しかし、彼の詩情豊かな映像はヒューマンドラマにこそ生かされると思っているのは俺だけではあるまい。そんなヒューマニズムを謳いあげる彼の頂点に立っている映画が今回紹介するわが谷は緑なりきだ。 
 19世紀末のイギリス、ウェールズの炭鉱の町を舞台に、家族、善意、ノスタルジー、信仰、生と死など、名作なだけに多くのことを見ている我々に問いかける。

 さて、炭鉱町を舞台に描かれる人間模様のストーリーとはいかなるものか。
 かつては炭鉱の町として栄え、緑の谷だったロダンの谷。今や炭鉱の町として成り立たなくなり、すっかり緑も消えて砂塵が吹いていて、町の住民の心からも善意が消えてしまっていた。50年間この場所で暮らしていたヒュー・モーガン(少年時代:ロディ・マクドウォール)は故郷を離れることを決心した。彼が少年だった頃、まだ彼の家族が揃っており、ロダンの谷に緑が溢れ、人間の善意が成り立っていた頃を懐かしみ、回想する。
 モーガン家の男達は、まだ少年のヒュー(ロディ・マクドウォール)以外は炭鉱で働き、女性達は家庭を支える。ロダンの谷は緑に恵まれ、町には常に歌が流れ、人々の善意で溢れていた。しかし、ロダンの谷にも炭鉱業の不景気の波が押し寄せられ、同時に住民の心もどこか荒んでいくにしたがい、モーガン家もバラバラになっていき・・・

 ストーリーはそう単純なモノでもなく、色々なエピソードがモーガン家を中心に積み重なっていく。モーガン家のしきたり、ロダンの谷にやってきた牧師とモーガン家の長女の恋愛、炭鉱場で起きる事故、ヒュー少年に対するイジメなど、悪いことが起きれば良い事も起きるのだが、そのサジ加減のバランスが良くて、非常に落ち着いた気分で観ることができる。
 そしてこの映画がタイトルからは受けるイメージとは異なり、映像はモノクロ。しかし、このモノクロの映像から映し出されるロダンの谷は美しく、見ている我々の想像力をかき立てる映像は歴代映画の中でも群を抜く素晴らしさ。
 そして見る人によって本作について色々な感想がありそうだ。俺が本作を観て、最も感銘を受けたのが、『今の記憶が消せても、過去の記憶は消せない』というフレーズ。確かに過去の出来事においての家族や愛する人との別れの悲しみは一生消せない。しかし、それは決して悪いことばかりではない。逆に言えばいつまでも家族や愛する人は自分の心の中に生き続けるのだ。
 そんな前向きに生きるメッセージを得られるのが本作の良さであり、信仰は自らに重大な決断を促し、歌からは大きな力を得ることができて、愛する故郷をたとえ離れても自らの心の中に在り続けることを本作を観れば理解できる。誰にとっても大切なモノを失った悲しみは大きいだろう、しかし失くして大切なことに気付くことも多くあるはずだ。
 今年最初に観る映画として、今年はどんなに辛いことがあっても前向きに生きるんだという強い気持ちになれて、大いに感動できる映画として、わが谷は緑なりきをお勧めしておこう

わが谷は緑なりき [DVD] FRT-113
ロディ・マクドウォール/アンナ・リー/ウォルター・ピジョン/ドナルド・クリスプ/モーリン・オハラ
ファーストトレーディング


 監督は前述したとおり巨匠ジョン・フォード。映画史に名を残す偉大なる監督なだけに名作かつお勧めは多数。スタインベック原作のヘンリー・フォンダ主演の怒りの葡萄、西部劇の範疇にとどまらず映画史に残る大傑作駅馬車、アイルランドを舞台にチョッと恋愛にブキッチョな男をジョン・ウェインが演じる静かなる男が良いです。


 
 

 
 


   
 
 
 

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4 コメント

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ディープインパクトさん、こんにちは (アスカパパ)
2010-03-13 11:14:00
何時もコメントとトラックバックありがとうございます。またこの記事では、私のブログを紹介して頂き光栄です。
この映画については、ディープインパクトさんと同じ感情の世界に浸れて幸せに思います。
特に、和解の場面、あの大合唱!いつも感動します。
モーリン・オハラは、フォード映画に切っても切れない存在ですよね。「静かなる男」や「長い灰色の線」でも、存在感抜群ですし。
そういえば、ジョン・フォードは、男の世界ばかりではなく、女性の描き方にも秀でたものがあると思います。
「怒りの葡萄」で、ヘンリー・フォンダの母を演じたジェーン・ダーウェルの逞しさなども忘れられない存在です。
ながながとお喋りしてしまいました。すいません。ではまた。
返信する
コメント&TB有難うございます (ディープインパクト)
2010-03-14 13:39:17
 モーリン・オハラは僕もジョン・フォード映画で知りました。
 最初はジョン・フォードは西部劇のイメージが強く、豪快なイメージがありましたが、彼の色々な映画を見ていると、本当に女性の描き方がうまく、詩情豊かな映画が多いのにびっくりします。

〉ながながとお喋りしてしまいました
 いえいえ、僕の方が長々とコメントしていると思いますよ〈笑)
 これからもよろしくお願いします
返信する
『How Green Was My Valley』 (ETCマンツーマン英会話)
2013-10-08 15:18:09
『わが谷は緑なりき』を調べていてこちらに辿りつきました。
ウェールズの知人に、ウェールズのことを知りたいなら、『ウェールズの山』なんかよりも、まずはこの映画を観て欲しいと言われた映画です。
彼らが大切にしているもの、そしてプライドのようなものがすべて、この映画の中に凝縮されているようなことを言っていました。

>失われていく人間の強さ、信仰に対する付き合い方、失われていく自然、色々と考えさえられる映画だけれど、決してユーモア精神を忘れないジョン・フォード監督らしいヒューマンドラマ

おそらくこの映画は一度見て終わりの映画ではないのでしょうね。おっしゃるとおり、何度でも見直してみてくなりました。
返信する
ETCマンツーマン英会話さん (ディープインパクト)
2013-10-09 09:37:27
 たどり着いて頂いてありがとうございます。この映画は良いですよ。ヒューマン映画として考えたら、『我が谷は~』の方が良いと思いますが、ウェールズを考えた時は『ウェールズの山』の方が個人的には良かったと思います。いずれにしても両方観るべきですね。僕もおかげで『我が谷を~』再見したくなりました。
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