褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 山猫(1963) 貴族社会の没落

2024年03月17日 | 映画(や行)
 そういえば山猫は眠らないというタイトルの軍事アクション映画があったが、それとはまったく関係ない。今回紹介する映画山猫は19世紀半ばの激動のイタリアのシチリア諸島が舞台。本作を理解する上で少しばかりこの時期のイタリアの状況を説明しておく必要があるだろう。現在は長靴の形をしたイタリア共和国として存在しているが、元々はバラバラの国として存在していた(サルディーニャ王国、パルマ公国、両シチリア王国等)。そんな時にイタリア統一運動に大きな働きをしたのが革命軍を率いたイタリアでは有名すぎるガリバルディ。ガリバルディがシチリア島に攻め込んでくることが本作の発端となる。
 それとシチリア島の状況も少しばかり説明しておく必要もあるか。本作では主人公であるバート・ランカスターが「シチリアは25世紀に渡って他国に支配されてきた」と言う台詞がある。そして、シチリアは色々な国の支配を受けている歴史がある(スペイン、フランス、ブルボン王朝等)。本作においてはシチリアはブルボン王朝の支配を既に長年に渡って受けていたのだが、そこへ前述したようにガリバルディがブルボン王朝を支配するべく攻め込んできたのだ。
 そんなブルボン王朝の下で甘い蜜を吸っていたのが特権階級に属する貴族たちだが、階級社会で上流にあたる彼らは王朝の庇護を受けて、ボッ~としながらでも豪華な暮らしをすることができた。ところが、王政打倒、共和制を掲げるガリバルディの革命軍がもの凄い勢いでシチリアに攻め込んできた。もしもガリバルディにシチリアを征服されると、この地にいる貴族たちは社会の変革によって彼らの特権は剥奪される恐れを抱かざるを得ない。
 そんな貴族社会がピンチに陥ってしまった事に対して苦悩するのが、長きに渡って続いた名門中の名門であるバート・ランカスター演じる老年のサリーナ公爵。

 古き社会と新しき社会の狭間で揺れる老貴族に訪れる運命はこれ如何に。
 19世紀半ばイタリアのシチリア島において。山猫の紋章を持つ貴族であるサリーナ公爵(バート・ランカスター)はシチリアのパレルモで大家族と共に暮らし、貴族らしく振る舞っていた。しかし、そこへガリバルディによる革命軍がシチリアへ上陸。そんな時にサリーナ公爵の甥であるタンクレディ(アラン・ドロン)は時代の波を嗅ぎつけ、革命軍に参加することをサリーナ公爵に告げる。まさかの申し出に戸惑うサリーナ公爵だったが、日頃可愛がっているタンクレディにお金を持たし、革命軍に参加することを許す。
 ガリバルディによってシチリアも征服され、サリーナ公爵一家は別荘へ逃れる。そこではこの混乱に乗じて資産を増やして勢力を伸ばしているブルジョワ上がりのカロージェロ(パオロ・ストッパ)が市長となっていた。
 そして、軍功を挙げて帰ってきたタンクレディだが、カロージェロの美しい娘アンジェリカ(クラウディア・カルディナーレ)に一目惚れ。タンクレディはサリーナ公爵にアンジェリカとの結婚の後ろ楯になるように頼み込むのだか・・

 貴族社会の特性として近親での結婚が多いことが挙げられる。タンクレディも当初はサリーナ公爵の娘と婚約していたのだが、彼女を振ってブルジョワ上がりの娘であるアンジェリカに乗り換える。名門一族の貴族にとって結婚することにも相手の階級を気にしなければならないのだ。しかも、相手はまるで価値観の異なる家柄の女性。タンクレディは新時代の象徴であり、そして彼の時代を読み取る目が凄いからなのかポリシーを簡単に曲げるのだが、その辺りが俺的にはムカついた。
 そしてサリーナ公爵だが結構なエロ爺。シチリアが一大事な時でも娼婦の館に通い詰める。しかしながら、迫りくる老いと貴族社会の斜陽、それに抗うことに苦悩する。しかし、その姿に名門貴族としてのプライドや引き際の美学を感じさせられた。
 なかなか重厚な人間ドラマを感じさせ、それでいて政治的な面も描かれている。そして現在のイタリアの姿になる激動の時代を少しばかり勉強した気分になる。個人的には非常に面白く観れたのだが、3時間の長丁場。貴族だのイタリア統一運動だのシチリアの綺麗な風景などに興味が無い人には恐らく睡魔との戦いになるか。そのためにもここで述べたような知識ぐらいは予習しておきたいところだろう。更に、後半では30分以上の時間を豪快に踊りまくるシーンが出てくるだけに脱落してくる人も出てきそうなのが不安だ。
 そうは言っても本作は貴族の末裔であるルキノ・ヴィスコンティ監督。貴族の末裔がこのような貴族の没落を描くことの奥深さを感じるし、豪華セットは見所充分、ニーノ・ロータによる音楽は素晴らしいし、何と言っても格調が高い。少しばかりイタリアに興味があり、ルキノ・ヴィスコンティ監督と聞いて心が騒ぎ、3時間の長丁場に耐えられる人に今回は山猫をお勧めに挙げておこう

 監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。映画界に多くの名作を遺した。サスペンスの傑作郵便配達は二度ベルを鳴らす、女の情念を感じさせる夏の嵐、1960年代のイタリアの南北格差を描いた若者のすべて、骨肉の争いが凄まじい地獄に堕ちた勇者ども、本作と同じくバート・ランカスター主演でうるさい訪問者に悩まされる家族の肖像、彼の遺作であるイノセント、ひたすら豪華さを求めるならルードヴィッヒがお勧め






 



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映画 マッチポイント(2005) 人生で一番必要な物とは?

2024年03月10日 | 映画(ま行)
 テニスボールがネット上を行き交い、ネットに引っ掛かり真上に上がる。さて、引っ掛かったテニスボールはどちら側に落ちるのか?そんな冒頭シーンで幕開けするのが今回紹介する映画マッチポイント。ロンドンの景色をふんだんに活かしたウディ・アレン監督による愛欲にまみれたミステリー。優柔不断な男が自業自得で大ピンチを招くのだが、いかにして乗り切るのか?というのがこの映画のテーマ。
 こういう男を主人公にした映画を観ると、果たして俺だったらどんな行動をするのか?と思いながら観てしまう。俺にはもっと違う方法があるように思えたのだが、しかしながら結果が良い方に転ぶかどうかわからない。運命を知るのはネットに引っ掛かったテニスボールのみ。

 やっぱり人生で一番必要なのはこれだよね~なんて思わせるストーリーの紹介を。
 ロンドンにおいて。アイルランド人の元テニスプレイヤーであるクリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、上流階級に属するトム(マシュー・グッド)と知り合いになる。クリスはトムの妹クロエ(エミリー・モーティマー)と親しくなり、結婚する。そして、義父(ブライアン・コックス)の会社に就職することになり順調に出世する。
 しかし、クリスはトムの婚約者でありアメリカ人であるノラ(スカーレット・ヨハンソン)のセクシーさに目を奪われて、ノラの魅力の虜になってしまう。やがて、トムとノラは婚約解消しトムは別の女性と結婚。そしてノラはクリスの知らぬ間にアメリカに帰ってしまう。
 ある日のこと。クリスはいつの間にかロンドンに戻って来ていたノラと出会う。クリスはクロエに内緒でノラと逢瀬を重ねる。ところが予想外のことにノラが妊娠してしまい・・・

 ノラ役のスカーレット・ヨハンソンが着ている服装からしてエロエロ。悲しいかな男なら十中八九でスカーレット・ヨハンソンのエロさの軍門に陥ってしまうのは無理がない。最初はクリスもノラに猛アタック。ノラは一度の過ちを繰り返すことに抵抗するのだが、抵抗されればされるほどクリスの男心が燃えてしまう。
 しかし、今度はノラが妊娠してからが立ち場が逆転。彼女からクリスへ「早くクロエと離婚して、妊娠している私と一緒になってよ!」と迫られる始末。クロエと離婚するっていうことは今の出世街道まっしぐらの社会的地位を捨てること。優柔不断でノイローゼ寸前にまで陥ったクリスが重い腰を上げて起こした意外な行動とは?、その行動はクリスに吉をもたらすのか凶をもたらすのかが本作のポイント。クライマックスから結末へ向けてウディ・アレン監督らしい皮肉に満ちた展開が刺激的。決断や努力も大切だが人生に必要なのはコレだよ、なんて思わせるが、気づいた時には何だかやるせない気持ちになってしまったのは俺だけか。
 そして、この作品までひたすらニューヨークを舞台にした映画を撮ってきたウディ・アレンが本作を切っ掛けにヨーロッパを舞台にした映画を撮り始める。本作はロンドンを舞台にしているが、その地へアイルランド人とアメリカ人を登場させたことを考えると何だか意味深な物を感じる。
 この監督らしい期待するような笑いは無いが、それでもスリリングで考えさせられる展開と内容。今回はマッチポイントをお勧めに挙げておこう

 監督はウディ・アレン。名作、傑作が多数。笑いとサスペンスが融合されたブロードウェイと銃弾、シリアスな作品ではインテリア、笑いに寄せた作品ならばタロットカード殺人事件等がお勧め








 
 


 

 

 
 
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映画 バットマン ビギンズ(2005) 誕生秘話です

2024年03月08日 | 映画(は行)
 DCコミックが送り出した不滅のヒーローであるバットマン。現在に至るまで多くの俳優がバットマンを演じてきたが、最も格好良いのが本シリーズにおけるクリスチャン・ベールが演じるバットマン。そんなシリーズの第一作目が今回紹介する映画バットマン ビギンズ。生身の人間であり金持ちの御曹司であるブルース・ウェインが如何にして戦闘能力を身に付けたのか。そんなバットマン誕生秘話が描かれているのが従来のシリーズとは違うところであり、この辺りは個人的には楽しめると同時に、ヒューマニズム性も感じさせらた。

 すっかり腐敗してしまった生まれ故郷であるゴッサムシティの街に平和を取り戻すために戦い続ける宿命を背負ったバットマンを描いたストーリーの紹介を。
 少年時代に目の前で両親を浮浪者チル(リチャード・ブレイク)に殺されたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)。青年になった彼は司法取引で仮出所をしてきたチルを復讐するために拳銃を持って近づいた矢先に、ゴッサムシティを牛耳るマフィアの親玉ファルコニー(トム・ウィルキンソン)の手下によってチルは射殺されてしまう。
 その帰り際に幼馴染みであり、今や女性検事補になっているレイチェル(ケイティ・ホームズ)から復讐しようとしたことを責められ、ゴッサムシティが不況に陥り、浮浪者を大勢生みだし、司法、警察の汚職や腐敗を招いているのは全てファルコニーが原因だと諭される。
 ブルース・ウェインは単独でファルコニーに会いに行くが、彼の手下に叩きのめされ、しかも刑事や政治家がファルコニーに操られていることに、己の無力さを知ってしまう。そんなウェインは自ら犯罪を繰り返して、犯罪者の気持ちを理解しようとし世界中を周る。彼がアジアの刑務所に収監されている時に、謎の男(リーアム・ニーソン)と出会い、彼の下で戦闘力を身に付けるべく修行に励むのだが・・・

 少年時代にレイチェルと一緒に遊んでいる時に井戸に落っこちてしまいコウモリに襲われたり、両親を目の前で殺されたり等、トラウマを抱えてしまったブルース・ウェイン。やさぐれてしまった気持ちを、どこへ向けるのかと思っていたら犯罪者になることだって!正直なところ、この展開は失敗しているようにも思えた。しかし、この映画の奥深いのはブルース・ウェインがゴッサムシティに戻ってから。復讐することは単なる自己満足であることに気付かされ、本当の正義に目覚めてからはバットマンというコウモリ姿のコスプレに身を纏い悪人を叩きのめす。そんなバットマンだが、どんな悪人であろうと決して人殺しはしないことを信条にしている。そんなことは当たり前だろうとツッコミたくなるが、その信条が時には弱点になることもある。
 そして強い奴が現れたら、更に強い奴が現れる。善人がいるから悪人も存在してしまう。まるで国際関係の仕組みを暗示しているようなテーマ性を含ませる内容は流石である。そして、この監督の特徴でもある意外性も感じさせてくれるのが良い。そんな理由でとにかくバットマンの映画が大好きな人は勿論だが、少しばかり奥が深いアクション映画を観たい人に今回はバットマン ビギンズをお勧めに挙げておこう

 監督はクリストファー・ノーラン。本作の続編にあたるダークナイトは必見。他では天才マジシャン同士の対決を描いたプレステージ、デビュー作にあたるフォロウウィング、救出作戦を描いたダンケルク、驚きの映像が観れるテネット等お勧め多数の天才監督です










 
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映画 シンシナティ・キッド(1965) 年季が違うぜ

2024年03月06日 | 映画(さ行)
 ギャンブル映画の中でもポーカーを扱った映画は多くあるが、今回紹介する映画シンシナティ・キッドはその中でも名作の部類に入るだろう。ポーカー(スタッド・ポーカー)での対決シーンも見どころだが、天才が凡人以下に叩きのめされるストーリー展開が良い。ギャンブルを生活の生業にすることの厳しさを本作から教えられる。

 さて、早速だがストーリーの紹介を。
 アメリカ南部のニューオリンズにおいて。通称シンシナティ・キッドと呼ばれるエリック(スティーヴ・マックウィーン)は地元では無敵のスタッド・ポーカーの名手。その強さはイカサマをしている疑いをかけられるほどだ。
 ある日のこと、ポーカーの世界ではザ・マンと呼ばれており30年間に及んでナンバーワンに君臨するランシー(エドワード・G・ロビンソン)がニューオリンズの地に降り立つ。そのことを聞きつけたエリックはギャンブラーとしての血が騒ぎ、ランシーに勝負を挑むのだ・・・

 エリックとランシーの激闘は大いなる見せ場だが、彼らの周囲の人間のキャラクター設定も興味深い。カネのやり繰りに困っていてイカサマを仕掛ける奴や、ポーカーが下手くそで自業自得で負けているのにヤクザみたいに脅迫してくる奴、そしてエロいフェロモンを出しまくって誘惑してくる美女など。特にエロい美女が勝負に集中させてくれないし、ギャンブラーにとっては女はご法度であることが本作を見ればよくわかる。
 そして、本作で印象に残る台詞が「年季が違うぜ」。エリックが冒頭で黒人の靴磨きの坊やからコイン投げの勝負を挑まれて勝った時の台詞だが、この台詞が最後にも効いてくる。ダメな時は何をやってもダメなんだということの教訓が得られる。
 そして、この世の中には疫病神みたいな女が存在するのと同時に、聖女のような女性がいることも本作では教示してくれる。単なるギャンブル映画に収まらない色々なテーマを内包しているのだ。
  スティーヴ・マックウィーンの勝負師としての表情が印象的だし、百戦錬磨のランシーを演じるエドワード・G・ロビンソンの貫録も印象的。そして、ポーカーの中でもスタッド・ポーカー(5枚のうち4枚まで見せておいて、最後の1枚を見せない)にしているのが、視覚的に抜群の効果を発揮している。そして、ジャズの街であるニューオリンズらしさも描かれているし、レイ・チャールズによる主題歌も良い。とにかく娯楽作品として楽しいし、どこか切なさの余韻も感じられる映画シンシナティ・キッドをお勧めに挙げておこう

 監督はノーマン・ジュイスン。今年の1月に亡くなっていたことを今まで知りませんでした。人種差別が色濃く残るアメリカ南部で白人警察と黒人刑事がタッグを組んで殺人事件に臨む夜の大捜査線、本作と同じくスティーヴ・マックウィーンが大富豪の泥棒を演じる華麗なる賭け、アル・パチーノが弁護士を演じるジャスティス、シェール、ニコラス・ケイジ共演のラブコメ月の輝く夜に、デンゼル・ワシントンが実在のボクサーを演じたザ・ハリケーン等、お勧めがたくさんです








 
 
 
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映画 バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992) チョ~悪です

2024年03月01日 | 映画(は行)
 本来ならば正義の味方なのに、なぜか映画の悪役でよく使われるのが刑事。そんな映画史上においてもナンバーワンに値する極悪刑事を描いたのが今回紹介する映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト。かなりブ千切れた刑事を本作で観れることができる。ありとあらゆる違法行為やモラルに反することに手を染めてしまうように刑事失格どころか、人間として失格。超ダメダメの刑事に対して訪れる運命は如何なるものか?

 早速だが悪の限りを尽くす刑事がやらかしてしまうストーリーの紹介を。
 ニューヨーク、ブロンクスにおいて。息子2人を車に乗せて学校へ送り届けるような良きパパに見える警部補(ハーヴェイ・カイテル)。車から息子を下した後に、コカインで一発決めた後に殺人現場へ向かう。現場のことよりも自ら手をだした野球賭博の結果が気になり、しかも不運なことに彼が賭けているチームは負け続ける。その間も麻薬の売人と売り買いをしたり、家庭がありながら愛人や売春婦にのめり込む。
 更に警部補はドラッグ、アルコールにまみれて、しかも野球賭博で負け続けて借金も倍々に膨らんでしまい、もはや酩酊状態。そんな時に修道士の女(フランキー・ソーン)が2人の若い男にレイプされる事件が発生。警部補はレイプされた修道士の女に、『俺が犯人を見つけて代わりに成敗してやる』と告げるが、彼女から意外な言葉を発せられ・・・

 今や名優であるハーヴェイ・カイテルが猛ハッスルする。ボカシが入るほどの全裸になったり、自慰行為をしたり、イライラしてきたら拳銃をぶっ放し、思いっきり泣き叫ぶなど、メーターを振り切った怪演を披露する。とにかく悪の限りを尽くし、野球賭博で負け続けて本当に首が回らなくなるほどの借金を背負ってしまう警部補はどんな結末を迎えるのか。
 警部補は修道女と出会ってから、心の変化が現れる。すっかり泥沼にはまりこんでしまい、今さらマトモな人間になんか成れるわけがないだろうと思っていたら、キリスト様は粋な計らいをする。まさにキリスト教の厳しさと優しさの相反するような両者を身をもって感じさせられた。
 正直なところ子供に見せるには悪い影響を与えそうな内容だが、大人が観るには充分に鑑賞に堪えられる。自分の人生がどん底に陥ってしまいそうな人に映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリストをお勧めに挙げておこう






 
 
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映画 ハムレット(1947) モノクロ映像の素晴らしさに感服

2024年02月17日 | 映画(は行)
 誰もが知っている超有名人のイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア。多くの傑作戯曲を遺しているが、現在においても世界の何処かで上演されているだろう。その中でもシェイクスピアの四大悲劇の一つとされ、彼の最も有名な作品はハムレット。今回紹介する映画がそれを原作とする同名タイトル作品。名優ローレンス・オリヴィエが監督、主演を務め、彼はシェイクピア俳優として有名なだけに渾身の作品となっている。
 ちなみに本作はモノクロ映像であり、それを活かした重厚なセットかつ緻密なカメラワークが素晴らしい。またタイトル名は知っているが、内容は全く知らない人も居る思うが、そんな人でも現在においても通じるテーマが本作では描かれているし、比較的登場人物も少ないのでわかり易い。

 それでは全体的に憂いをおびた主人公が印象的なストーリーの紹介を。
 デンマークにおいて。デンマーク国王が死亡、その跡を継いだのが王の弟であるクローディアス(ベイジル・シドニー)。そして彼は前王の王妃であるガートルード(アイリーン・ハーリー)を娶る。父王の死と母である王妃の早すぎる再婚に悩むハムレット(ローレンス・オリヴィエ)は聡明な父とは違い、新しく王に就いた叔父のクローディアスの人間性を嫌っており、彼のやり場のない怒りは深まるばかりだった。
 ある日のこと、ハムレットは親友のホレイショ(ノーマン・ウーランド)から夜の12時に城壁の露台に、亡き国王(ハムレットの父)の幽霊が現れると聞きつける。その話を確認するためにハムレットはホレイショー達と一緒にその場に向かい、父の亡霊と会う。ハムレットは亡霊から、父の意外な死因を聞かされてクローディアスに対して復讐することを誓うのだが・・・

 とにかくハムレットは新しく王となった叔父さんのことが大っ嫌いで、亡き父から復讐をそそのかされるのだが、これがいざ実行になかなか移せない。しかも、ハムレットのとった作戦は正気を失ったような振りをする織田信長と同じ、うつけもの戦法。正直なところそんな作戦必要?なんて俺は思ったのだが、物語を盛り上げるためには効果充分。恋人オフィーリア(ジーン・シモンズ)や王妃である母親を苦しませ、悲劇的結末にも良いスパイスを効かせていた。
 しかし、本作の凄いのは前述したが重厚なお城のセット。こんなセットを作り上げ、またそのセットの奥行きを計算したかのようなカメラワークも抜群。内容だけでなく演出でも惹きつけられる。そして、本作では人間の欲望といったテーマが盛り込まれているが、それも現在までハムレットがなぜ人気があるのか理解できる要因であるだろう。そして、「生きるべきか、死ぬべきか」・・・等、多くの印象的な名台詞も本作の格調の高さを感じさせる。しかしながら、悲しいことに俺の記憶力の悪さが、それらの殆どを忘れさせてしまった。
 シェイクスピアに興味がある人、またはシェイクスピアは敷居が高いと思っている人、格調の高い映画を観たい人、原作の内容を知っている人も知らない人も、モノクロの映像テクニックに浸りたい人・・・等に今回はハムレットをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにローレンス・オリヴィエ。個人的には俳優としての方が印象が強い。彼のお勧め俳優作品を挙げるとヒッチコック監督作品のレベッカ、ダスティン・ホフマン共演のマラソンマン、脇役ならスパルタカス素晴らしき戦争もお勧め












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映画 アメリカン・ハッスル(2013) 実在の事件が基ネタ

2024年02月06日 | 映画(あ行)
 現在の日本の政治は裏金、キックバック、政治資金記載漏れなどの言葉が連日賑わしており、史上空前の政治スキャンダルの嵐が吹いている。会計責任者に不手際の責任をなすりつける等、何とも醜いことになっている。そして今回紹介する映画が1970年代にアメリカで実際に起こった政治スキャンダルであるアブスキャム事件にヒントを得たアメリカン・ハッスル。強烈な個性を持った登場人物達がドタバタを繰り広げながら笑わせてくれる。
 一瞬タイトル名だけを見ると「アメリカよ、もうこれ以上ハッスルするな!」なんて思った人も居たかもしれないが、実はこのハッスルには『詐欺』の意味が込められている。そう言えば俺の周りにもハッスルし過ぎて空回り、そして詐欺師みたいな奴が居ることを思い出してしまった。

 早速だが、こんな事件が本当にあったのか⁈なんて思えるストーリーの紹介を。
 体はブヨブヨで、頭は禿げているのだが一九分けのセットが痛々しいアーヴィン(クリスチャン・ベイル)は詐欺師。彼は愛人兼仕事のパートナーのシドニー(エイミー・アダムス)と次々に詐欺を成功させていくのだが、ついにはFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に逮捕されてしまう。
 しかし、意外なことにリッチーから2人に他の4組の詐欺師グループを摘発するのに協力すれば、罪を見逃してやると提案される。当然の如く断るわけがなくリッチーに協力するのだが、次第にリッチーの野心は詐欺師を摘発するどころか、カジノ利権に群がる政治家達をターゲットにすることになってしまう。アーヴィングとシドニーも嫌々ながらもリッチーに協力するのだが、思いも寄らなかった超大物が捜査線上に現れて・・・

 アーヴィンにはイッチャッテルゥ~嫁ロザリン(ジェニファー・ロレンス)が居るのだが、これがことごとくアーヴィング達の邪魔をしてしまう。ジェニファー・ロレンスの弾けっぷりがなかなか見ものだ。
 しかし、本作で面白いのがFBIと詐欺師がまさかのタッグを組んで、虚々実々の駆け引きをしていること。このように書くと鮮やかな騙しの手口が見れるのかと思いきや、ハッキリ言ってそこに快感は全く得られない。むしろ人間誰しもが完ぺきではないし、弱みを持っていることが描かれていることに興味が惹かれる。
 アーヴィングにしてもサッサとそんな馬鹿な嫁と別れろよと思えるが、そこには親権の問題が絡んでいて簡単に離婚できなかったり、シドニーにしても自らの経歴に大きな傷があったり、アーヴィングと親友になるニュージャージー州の市長であるカーマイン(ジェレミー・レナ)にしても、真剣に市民の事を考えているのだが裏では黒い繋がりに関わっていたり、リッチーは果てしない野心によって自らを追い込んでしまったり。このように本作には多くの悩めるキャラが出てくる。
 裏金を貯えたり、政治資金記載漏れを他人のせいにしている国会議員の連中には腹が立つが、本作の登場人物達はどこか憎めない。俺ってダメ人間だよな~なんて嘆いている人に今回はアメリカン・ハッスルをお勧めに挙げておこう

 監督はデヴィッド・O・ラッセル。外れが少ない優秀な監督。社会派、アドベンチャー、コメディ等色々な要素が含まれているスリー・キングス、異色ボクシング映画ザ・ファイター、何となく生きる気力が湧いてくる世界にひとつのプレイブックがお勧め







 
 

 
 
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映画 ザ・タウン(2010) 強盗稼業です

2024年01月28日 | 映画(さ行)
 最近は二刀流という言葉がよく躍っているが、監督と俳優(主演)の両方をこなしてしまうベン・アフレックも二刀流と言えるだろう。しかしながら最近は監督業も不振だったり、今さらバットマンを演じたりで迷走している感じもあるが、再び監督業に気合いを入れて専念して欲しいと個人的には思う。
 そんな彼の監督・主演をこなした最高傑作となると今回紹介するクライムサスペンスの傑作ザ・タウンを挙げたい。今ではあんまり有名でもない気がするが個人的には何時までも語り継ぎたい映画であり、ザ・ヒートを思い出させる銃撃戦はテンションがアゲアゲだ。
 この映画がユニークなのはアメリカ、ボストンのチャールズタウンが舞台であること。ボストンと言えばメジャーリーグに少しでも興味がある人ならば、現在は吉田正尚、かつては松阪大輔、上原浩司といった日本人選手も在籍していたことで知られているが、今回の映画で見せるボストンはとんでもない危険地域。本作の中でも説明があるが、このチャールズタウンは広大なアメリカの中でも最大の犯罪地帯。なんせ家系代々が強盗を生業としていたり、犯罪利権が存在している。我々のような一般人にとっては絶対に近寄りたくない場所だ。

 さて、ベン・アフレックの故郷ボストンへの愛を感じさせるストーリーの紹介を。
 ボストン、チャールズタウンの銀行において。今日もダグ(ベン・アフレック)と弟分であるジェム(ジェレミー・レナ)と他に2人の家族同然の仲間と現金強奪を企む。今回も鮮やかな手口で大金を奪うことに成功。しかし、人質にとった女支店長であるクレア(レベッカ・ホール)が同じ町の住人だと知る。彼らはもしかしたらクレアに正体がバレてないか不安に陥り、ダグはクレアを追跡するのだが・・・

 綺麗なオネエさんをストーカーしてたら、いつの間にかお互いに恋に落ちてしまう。クライムサスペンスでありながら青春ドラマの要素も感じさせる。ダグは、もうこんなえげつない強盗稼業を辞めようと、タウン(チャールズタウンを地元の人々が愛着を込めて呼ぶ)をクレアと一緒に抜け出したいと願う。しかし、クレアに対して銀行を襲って怖い目に遭わしたのは自分だとはバレたくないし、代々家系が強盗稼業であることなど知られたくない。このもどかしい気持ちが男心を揺さぶる。
 しかし、そんなダグを簡単にタウンから抜け出せないようにしているのが、チャールズタウンを仕切る強盗斡旋者の存在。もうこれが最後の強盗の仕事と決意しながらも、斡旋者の奴らが『この仕事を断ったら付き合っている女を殺すぞ』と脅して強制的に大金強奪の仕事を持ち掛けてくる。そしてすぐに血が上りやすいジェムの存在。彼とは兄弟のように幼い頃から一緒に行動し、しかもジェムからは恩を受けている。そんな彼と簡単に別々の道を歩めるのか。更にはダグ達を追いかけるFBI捜査官のアダム(ジョン・ハム)による猛烈な追跡。ダグはこれらの障害を乗り越えてタウンを抜け出すことができるのか⁈
 もちろん本作は前述したように銃撃戦が素晴らしい。特にボストンのレッドソックスの野球の本拠地であるフェンウェイ・パークを舞台にした激しい銃撃戦はかなり引き込まれる。そして、レベッカ・ホールブレイク・ライヴリーといった美女達の存在も男どもにとっては嬉しいところだ。パワフルな映画が観たい人、クライムサスペンスが好きな人等に今回はザ・タウンをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにベン・アフレック。彼が監督、主演した映画ではアルゴ、彼が監督に専念したゴーン・ベイビー・ゴーンがお勧め。






 


 

 




 
 








 

 



 

 
 
 

 





 

 

 
 
  
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映画 レイジング・ブル(1980) デ・ニーロ・アプローチを見ろ!

2024年01月21日 | 映画(ら行)
 先日シルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロのW主演によるボクシング映画のリベンジ・マッチをアップしたのだが、なぜかロバート・デ・ニーロ主演の映画レイジング・ブルを観たくなった。スタローン主演のロッキーシリーズがどん底から立ち上がるような、非常に心地良くなるようなサクセスストーリーを描いていて多くのファンもいる。一方、今回紹介するレイジング・ブルの方だが、同じボクシング映画でもロッキーシリーズとは真逆のような展開。しかし、数多くあるボクシング映画の中でも傑作との評判の名作だ。
 本作の見所として、ボクシング映画ならではのファイトシーンも見応え充分だが、ロバート・デ・ニーロの代名詞とも言われる究極の役作りにこだわったデ・ニーロ・アプローチ。ボクサー時代の研ぎ澄まされた肉体改造だけでなく、引退してからのブヨブヨに太った肥満体を造り上げたように大幅な体重増(およそ20キロ以上)を敢行するなど、狂気さえ感じさせるデ・ニーロ・アプローチを本作で見られる。まあ、今では役作りのために体重を増加させたり、減量するような俳優はいるが、本作が公開された時代にはそんな俳優は滅多に居なかった。本作が後の俳優に与えた影響は大きい。

 ちなみに本作のレイジング・ブルのタイトルの由来は『怒れる牡牛』。実在したミドル級世界チャンピオンだったボクシング選手のジェイク・ラモッタのニックネーム。ジェイク・ラモッタの自伝映画だが、彼の栄光を感じさせる部分は少しだけ。むしろ暗い気分になるぐらいの転落っぷりが描かれている。

 モノクロの映像に主人公のダメっぷりが、これでもかと描かれているストーリーを紹介しよう。
 1941年、デビュー以来無敗をほこっていたジェイク・ラモッタロバート・デ・ニーロ)は相手から7回もダウンを奪ったのに疑惑の判定で敗れる。そんな怒りを嫁や弟でマネージャーのジョーイ(ジョー・ぺシ)にぶつけてしまう。しかも、市営プールで偶然目にした金髪美女のビッキー(キャシー・モリアーティ )と妻が居るのに関わらず公然とビッキーと付き合い、結婚までしてしまう。
 その後、再び連勝街道を突き進むジェイク・ラモッタ。当時は無敵であり、後の宿命のライバルになるシュガー・レイ・ロビンソンに土をつける。しかし、その後にタイトルマッチに挑戦するために八百長に加担し、ミドル級チャンピオンに輝くも次第に家族を省みなくなったラモッタは次第にビッキーが他の男と付き合っているのではないかとの強迫的なまでの猜疑心に襲われ、ついにはビッキーと弟のジョーイの仲まで疑ってしまい・・・

 ジェイク・ラモッタがとことん嫌な奴。チャンピオンにまで上り詰めるが、孤独に陥り、破滅に追い込まれる。本作を観れば何時の時も調子に乗り過ぎるなと痛感させられる。そして、ボクシングシーンでは結構な血量がぶっ飛び、監督の演出力を感じさせる暴力的なシーンも多く出てくる。この暴力シーンこそ流石はマーティン・スコセッシ。人間の狂気、破滅、暴力を描かせたらこの監督の独壇場だ。
 そして、ボクシングを引退して芸人を生業とするジェイク・ラモッタが、なんだか難しそうな台詞をぶつぶつ呟くシーンがある。自らの人生の過去を振り返る姿に、当時30歳代後半に差し掛かったマーティン・スコセッシ監督の人生を知っている者には非常に興味深く感じられる。この監督もまた大きな挫折を味わっているのだ。
 映画には監督と俳優の名コンビというのがあるが、本作のマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロがまさにソレ。そんなコンビ作品の中でも本作はその頂点を極めているか。そして、弟役のジョーイを演じるジョー・ぺシが良い。彼もまたその後のマーティン・スコセッシ作品やホーム・アローン、リーサル・ウェポンといった人気シリーズでアクの強い演技を見せつける名優ぶりが本作で垣間見えるのが映画ファンには嬉しいところだ。
 ボクシング映画に気持ちの良いストーリーを求める人には本作は向かない可能性があるが、監督、俳優のこだわりが見れる映画を好む人、破滅、転落を描いた映画が好きな人、古い映画に興味がある人ならばレイジング・ブルは満足できるだろう

 監督は前述したようにマーティン・スコセッシ。お勧め作品多数。本作と同じくロバート・デ・ニーロとジョー・ぺシも共演しているグッド・フェローズカジノがお勧め。他にはこのコンビの最高傑作だと思っているキング・オブ・コメディ、そしてブラックコメディなアフター・アワーズをお勧めに挙げておこう









 

 
 
 
 
 

 
 
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映画 リベンジ・マッチ(2013) 遺恨マッチです

2024年01月16日 | 映画(ら行)
 すっかりガス欠を起こしてしまい久しぶりの投稿。これからはもう少し頻度を上げて投稿しようと思うので今年もよろしくお願いします。さて、今回紹介する映画はボクシング映画の金字塔ロッキーシリーズで一躍大スターに登りつめたシルベスター・スタローン。そして、こちらもボクシング映画の名作として誉れ高いレイジング・ブルで大幅に体重を増加させた役作りで名を馳せたロバート・デ・ニーロ。まさかの2人のW主演によるボクシング映画が今回紹介するリベンジ・マッチ
 本作の公開時にシルベスター・スタローンは67歳。ロバート・デ・ニーロにいたっては70歳。老優の2人が裸をさらしてボクシング対決をする。この2人のボクシング対決と聞いて、なせか俺はエイリアンVSプレデターを思い出してしまった。嫌な予感しかしないようなボクシング映画を見せられるのかと思いきや、俺の予想は良い意味で大きく裏切られた。

 シルベスター・スタローンとロバート・デ・ニーロのかつての主演作のパロディーを存分に取り入れたストーリーの紹介を。
 1980年代に一世を風靡したボクサーだったヘンリー(シルベスター・スタローン)とビリー(ロバート・デ・ニーロ)。2人の対戦成績は1勝1敗の五分。しかし、決着をつけるはずの第3戦目を迎える直前でヘンリーが突然引退してしまったことにビリーは30年経った今でも根に持っていた。一方ヘンリーもある理由でビリーを嫌っておりずっと避けていた。
 そんな2人に目を付けたのが、プロモーターであるダンテ(ケヴィン・ハート)。無謀にも彼らを30年ぶりに戦わせて大儲けをしようと企むのだが・・・

 前述したようにロッキーレイジング・ブルという2人のボクシング映画の代表作のパロディーをけっこう取り入れてくるので、できればこの2作品は観ておいた方が良いだろう。なぜなら本作ではギャグとして効果を上げているので予め両作品を観ている人は観てない人よりも笑えるからだ。
 笑えるのはパロディーだけではない。60歳を超えたジイサン連中の口の悪さが凄い。特にロバート・デ・ニーロの罵詈雑言、スタローン演じるヘンリーのトレーナーに抜擢されるルイス(アラン・アーキン)の場所をわきまえない下ネタ等・・・良い子を持つお母さんも顔を真っ青にしてしまいそうな台詞の数々が最初から最後まで怒涛の如く飛び交うのが、俺にはかなりウケた。
 そしてクライマックスのボクシングシーンだが、思いのほか熱いファイトシーンを見せてくれる。自らの誇りのために30年の想いをぶつけ合う激闘に俺のハートが熱くなった。コメディ色が強い映画だが、ここには家族愛、誇り、友情等も感じさせる。そして本作がニクイのが最後にボクシングファンを喜ばせるシーンを用意しているところ。
 それにしてもシルベスター・スタローンもロバート・デ・ニーロも凄いのが年齢を感じさせない肉体を鍛え上げていること。特にスタローンは水を得た魚のようなハッスルしているし、ロッキー健在ぶりを本作でも見せつける。ロッキーシリーズを見続けている50歳以上の大人達には当然楽しめるし、ロッキーシリーズやレイジング・ブルを観ていない人でも一応は楽しめそうだ。自分で言うのも何だが、今年一発目に紹介するのに相応しいリベンジ・マッチをお勧めに挙げておこう

 監督はピーター・シーガル。本作以外にもコメディ作品で確かな演出力を見せつける。ラブコメの傑作50回目のファーストキス、かつてバート・レイノルズ主演のリメイク作品ロンゲスト・ヤード、スティーヴ・カレル、アン・ハサウェイ共演のスパイ映画ゲット・スマートがお勧め。






 
 

 

 
 

 
 
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映画 リンカーン(2012) 偉大なるアメリカ大統領!? 

2023年11月03日 | 映画(ら行)

  今でも最も人気のあるアメリカ大統領が第16代大統領エイブラハム・リンカーン。「人民の人民による人民のための政治」で有名な演説、黒人奴隷解放、南北戦争と言ったところで、我々日本人にとっても最も有名なアメリカ大統領の1人である。そんな彼が56歳で凶弾に倒れるまでの数々の立派な業績をまくし立てるのではなく、56年間の人生の内、たった4週間分を殆どの時間を割いて描いたのが今回紹介する映画リンカーン。恐らく本作を観たからと言って、リンカーンは偉いとは多くの人は思えないだろう。

 大統領として、夫として、父親としてひたすら苦悩する主人公を描いたストーリーの紹介を。
 1865年の1月。リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス)が大統領に再選してから2カ月、4年目に突入した南北戦争は未だに続いており、日々犠牲者が出ることに彼は心を痛めていた。戦争を今のままで終結することはアメリカ南部の黒人奴隷制度を認めることになってしまう。更には彼のかねてからの目的であった奴隷制度撤廃を求めた憲法修正第13条の批准は下院では賛成派の議員の数が足りずに、今のままでは可決されないことは明白だった。そこでリンカーンは憲法修正第13条の批准を可決するために議会工作に乗り出す・・・

 南北戦争終結と奴隷制度撤廃という2つの理念を果たそうとしても、アッチを立てれば、コッチが立たず。リンカーンは大統領として悩みまくる。しかも、妻のメアリー(サリー・フィールド)は精神病気味で何かと旦那の自分に憂さを晴らしてきたり、息子で長男のロバート(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が自分も兵隊に応募したがる等、家庭でも悩みを抱える。
 しかし、そこで立ち止まらないのがリンカーンの凄いところ。目的遂行のためなら反対派議員に対して賄賂、脅迫、そして仲間にも嘘をつく。この辺りの経緯はリンカーンを美化され過ぎたイメージを持っている者が見ていると、けっこう驚いてしまう。ダーティーな部分も描いているが、政治家というのは品行方正なだけでは務まらず、清濁併せ吞むぐらいの人間でなくては務まらないことを本作から学べる。一国のリーダーなら尚更少しぐらいはダーティーな部分を持たなければやっていけないのだ。まあ、俺なんかでは政治家は無理だと気づかされた。
 ちなみに本作が公開された時のアメリカ大統領は初の黒人であるバラク・オバマ。そのような時代背景を考えると、なぜこのタイミングで本作が公開されたかを考えてしまいそうになる。画面は暗く、けっこうな登場人物が出てきて、理解に苦しむところも出てくる。そして2時間半の長時間の部類に入る映画。少々面白さに欠ける面はあるが、リーダーの資質ぐらいは本作を観れば少しぐらい理解できる気分になれる。そんな訳で今回は映画リンカーンをお勧めに挙げておこう

 監督は今や最も偉大な映画監督であるスティーヴン・スピルバーグ。サスペンス、アドヴェンチャー、人間ドラマ、社会派作品と幅広い分野の映画を撮り続け、ヒットをかっ飛ばす。あえて1本だけお勧めを挙げるとしたら、本作と共通のテーマが含まれるアミスタッドを勧める






 

 

 
 
 




 
 

 
 
 
 
 

 
 
 
 
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映画 アマデウス(1984) 天才と凡人

2023年10月23日 | 映画(あ行)
 クラシック音楽にたいして興味が無い人でもモーツァルトの名前ぐらいは聞いたことがある人が殆どだろう。音楽もパッと思い出せなくても、聴けば、「あ~、あの曲はモーツァルトだったんだ」とわかる曲を多く遺している。そんな彼の本名はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。この名前のミドルネームに当たる部分をタイトル化した映画が今回紹介するアマデウス。幼少の頃から既にピアノを弾き、6歳で既に作曲を始める等、神童の名を欲しいままにし、そして35歳で夭折するまで現代においてもクラシック愛好家から評価の高い曲を作り続けたモーツァルト。そんな彼の非常に興味深い伝記映画ではなく、ブロードウェイの舞台を映画化した作品。
 本作の面白いところは数多く流れてくる美しいモーツァルトの曲の数々だけではなく、人間として欠陥だらけに描いているところ。そして、そんな天才に対する対決軸として凡人を配して比較しているところが更に興味を引き立てる。凡人であるが故の苦しみ、悲しみが描かれているだけでなく、天才であるが故の脆さが描かれているあたりが、本作の真骨頂。耳障りの良さだけを描いているのではなく、他にも色々なテーマを内包しているように名作としての条件を揃えている作品だ。

 それでは天才と凡人の対決を描いたストーリーの紹介を。
 ある冬の夜。老人が「モーツァルト、許してくれ!君を殺したのは私だ」と叫びながら、首を斬って自殺を図る。老人の名前はアントニオ・サリエリF・マーリー・エイブラハム)。精神病棟に送り込まれたサリエリは若き神父に自らとモーツァルトトム・ハルス)との出来事を回想し語りだす。
 オーストリア皇帝ヨーゼフ2世(ジェフリー・ジョーンズ)に仕える宮廷作曲家であったサリエリは、かねてから神童と評判のモーツァルトの開催する音楽会を見に行き、彼がいか程の者か自分の目で確かめようとする。実際に確かめると、あまりにも想像とかけ離れていたことにショックを受ける。変な笑い声を挙げながら、女性を追いかけまわし、下品さを露骨に表していた。
 しかし、サリエリは外見とは全く異なるモーツァルトの音楽的才能に驚愕する。そして、神に敬虔な生き方をしてきたサリエリだったが、自分の信じる神がモーツァルトのような下品で失礼極まりない人物に音楽的才能を与えてしまったことに苦しみ、嫉妬を抱き、モーツァルトに猛烈な復讐を浴びせていく・・・

 サリエリが凡人の代表として本作で描かれているが、宮廷作曲家にまで登りつめているだけに決して不幸な人生を歩んできたようには思えないし、むしろ音楽の才能はあった方だろうなんて俺がサリエリに嫉妬してしまいそうになった。しかし、彼が俺以上に嫉妬深い人間として描かれている。神々しい音楽を次々に作り出し、しかも即興で作り出す恐るべき才能を何の努力も研鑽も積まずに持ってしまったモーツァルトに、音楽家として明らかに劣っていることを痛感してしまう苦しみ、そしてモーツァルトから小馬鹿にまでされてしまう始末。ここの描き方は、古い時代、古い有名人を描きながら嫉妬によって人生を狂わしていく現代にも通じるメッセージ性を強く感じさせる。特に本作は西洋人らしい宗教的観念をぶち込んでくる大袈裟な演出が効果的で、サリエリの苦しみが痛いほど伝わってくる(まあ、そうでもない人も居るっか)。サリエリを見ていると、凡人は凡人らしく生きることの大切さ。そして、自分の価値を他人と比較することの無意味さがわかる。
 歴史が証明するが、意外に天才とは脆くもあり、早くに消え去っていくものである。これは世界史だけではなく、日本史においてもいえることである。凡人の方が結構しぶとく生き残っていくものである。俺も今まで天才に憧れていたのに、何だか天才かどうかなんてどうでも良くなった。そして、アマデウスというのがラテン語で「神に愛された」という意味があることを知って、ヘェ~なんて驚きと同時に勉強にもなった。
 映画ならではのオペラシーンは楽しめるし、モーツアルトの美しい曲の数々に気分が害されることなく良い気分になったり、豪華セットが楽しめたり、観る人によっては更なるテーマ性を見つけ出したりできるような感想を持てる映画として今回はアマデウスをお勧めに挙げておこう

 監督はミロス・フォアマン。本作は名作としての誉れが高いですが、カッコーの巣の上でも名作です。そして宮廷画家ゴヤは見たも西洋史の恐ろしさを知れる映画として見応えあります



 


 
 



 

  

 





  
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映画 ギャング・オブ・ニューヨーク(2002) ニューヨークに対する熱い気持ちが伝わる? 

2023年10月17日 | 映画(か行)
 各ヨーロッパの国々でロクな目に遭なわかった人々が、心機一転と夢を膨らませて、船に乗ってやって来たのがアメリカであり、だからあの国は移民国家と呼ばれる。今はメキシコ経由でラテンアメリカ系の不法移民が多く、合衆国政府もその対策に頭を悩ませているのはご存知の通り。ちなみに今回紹介する映画ギャング・オブ・ニューヨークは19世紀の半ばのニューヨークを舞台にしており、南北戦争、ジャガイモ飢饉によるアイルランド人移民といった歴史的背景をモチーフにギャングの抗争、そして復讐劇が描かれている。
 最初にイギリスから海を渡ってきたWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)と、彼らにとっては後からやってきて何かと鬱陶しいアイルランド系移民の縄張り争いが、冒頭から血みどろのエンジン全開で描かれている。ド派手なシーンを描きながらも、移民国家アメリカの抱える難題も盛り込まれている演出が上手い。アメリカって一攫千金の国だと植え付けられている人が本作を観ると、縄張り争いを繰り広げる意味が理解できないままの可能性があるだろう。
 しかし、そんなことは理解できなくても縄張り争いによってカトリックの神父である父(リーアム・ニーソン)を殺された主演のレオナルド・ディカプリオの復讐劇としてだけとらえると非常に単純な映画。しかし、前述したような歴史的背景、アメリカが建国以来抱える移民問題、そしてあの2001年の9.11事件(アメリカ同時多発テロ)を思うと、観終わってから本作の奥の深さを感じる人も居るだろう。

 かなりブ千切れている男同士の熱い戦いを描いたストーリーを紹介しよう。
 1846年のニューヨーク、ファイブポインツにおいて。アメリカ生まれであることを誇りにするビル(ダニエル・デイ=ルイス)をリーダーとする「ネイティブ・アメリカンズ」と、そのネイティブ・アメリカンズから虐げられていたアイルランド移民をヴァロン神父(リーアム・ニーソン)が束ねる「デッド・ラビッツ」が長年の因縁から抗争が勃発。その結果はビルがヴァロン神父を刺し殺す。その様子を見ていたのが、まだ幼いヴァロン神父の息子であるアムステルダム(レオナルド・ディカプリオ)。アムステルダムはプロテスタント系の刑務所に入れられる。
 それから16年後にアムステルダムは出所し、ファイブポインツに戻ってくる。目的はビルに対する復讐。彼は運命の女性であるジェニー(キャメロン・ディアズ)と出会い、意気投合。しかし、かつてのデッド・ラビッツの仲間達はビルの手下に陥っており、ファイブ・ポインツ全体がすっかりビルの手中に収まってしまっていることに落胆する。それでも復讐に燃えるアムステルダムは持ち前のガッツと執念でビルの組織に入り込むことに成功し、復讐のチャンスを待つのだが・・・

 19世紀半ばのニューヨークを作り上げたセットが素晴らしいし、その時代の状況が上手く描かれている。毎日の如く、ジャガイモ飢饉に襲われてしまったアイルランド人が港にやって来る様子、南北戦走が起きる前と起きている最中の日々、そしてビルに支配されて貧乏人の巣窟になってしまっているファイブポインツの街、白人、黒人、中国人がごった返している状況など、当時のニューヨークを感じさせるものがある。
 そして、ネイティブ・アメリカンズのリーダーであるビルを演じるダニエル・デイ=ルイスのキャラクター設定が凄い。肉屋を営んでいるせいなのか包丁、ナイフの使い方に長けていて、人殺しにもその特技を活かす。キャメロン・ディアズを包丁投げでビビらすドエスっぷりには見ている俺もビビった。本作の監督であるマーティン・スコセッシは人間の奥底に秘める狂気を炙り出すことに長けているが、本作のダニエル・デイ=ルイスは最初から狂気そのもの。見た目からヤバい。
 一方、父親を殺された復讐に燃えるレオナルド・ディカプリオだが、意外にキャメロン・ディアズと出会うところまではけっこうマトモな人間に見えたのだが、途中から復讐の鬼と化す。本来ならばここの当たりの演出はマーティン・スコセッシ監督の本領発揮といきたかったところだが、まだアイドル路線の最中だったレオナルド・ディカプリオの力量不足なのか、ダニエル・デイ=ルイスのハッスルし放題に完全に押され気味。まだあどけなさが残ってしまったのが残念。
 そして、このようなひたすら狂っている人間を描くのに3時間は長すぎる。キャメロン・ディアズが出演しているシーンをもっと短くしても良かったんじゃないか。他にももっと削れるところがあったように思う。
 最後の2人の対決をニューヨーク徴兵暴動を絡めて描いたところは、なかなかの演出。スコセッシ監督のニューヨークに対する熱い想いが全編に渡って感じられた。ニューヨークが好きな人、3時間の映画でも耐えられる人、狂気に侵された人を見るのが好きな人、マーティン・スコセッシ監督と聞いて心が躍る人等に今回はギャング・オブ・ニューヨークをお勧めしておこう

 監督は前述したとおりマーティン・スコセッシ。ロバート・デ・ニーロとのコンビで傑作多数。その中でも今回はキング・オブ・コメディをお勧めに挙げておこう






 
 
 
 













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映画 クイルズ(2000) 言論の自由について考えさせられる?

2023年10月12日 | 映画(か行)
 あの人はドSだ、なんて言ったり言われたりする人が居るが、Sの意味は『サディスト』のこと。実はその語源は実在の人物であるマルキ・ド・サド(サド侯爵)からきている。今回紹介する映画クイルズは、そんな彼の晩年を描いた作品だ。一体、マルキ・ド・サドって何者?と思われる人が居ると思うがナポレオンが活躍していた時代の小説家。そして、その作品の殆どを獄中&精神病院で執筆したという個性的な男だ。

 そもそも何でそんな場所で彼は執筆しなければならなかったのか?それではストーリーの紹介を。
 猥褻な文書を発表したことにより、皇帝ナポレオンの指令によって精神病院に入院させられたサド侯爵(ジェフリー・ラッシュ)。彼の書物は全て発禁処分を受けていた。しかしながら、彼はカネの力と機転の良さで理事長であるクルミエ神父(ホアキン・フェニックス)から精神病院の中でも豪華に振る舞ったり、執筆することを許されていた。
 しかし、彼の作品が小間使いであるマドレーヌ(ケイト・ウィンスレット)を通して、匿名で発刊されフランス中で出回ることになってしまう。その内容からサド侯爵の作品だとナポレオンが勘づいてしまい、彼を監査するために悪名高きコラール博士(マイケル・ケイン)を精神病院へ向かわせる。
 サド侯爵からコケにされたこともあり、コラール博士はサド侯爵を徹底的に弾圧し、彼の大事なペンを取り上げて執筆させないようにするのだが・・・

 常日頃から何か(エロい事ばかりだが)書きたい欲求に駆られるサド侯爵。彼は言論の自由を守るために、権力者にペンを持って立ち向かう!と書きたいところだが、肝心のペンをアッサリ奪われてしまう。これで彼の執筆活動は終わってしまうのかと思いきや、彼の執筆に対する欲求、執念は俺の想像をはるかに超えた。この部分はネタバレは厳禁なので伏せておく。
 特に前半は下ネタが多めでコミカル感が漂うが、後半にかけては少しばかりエグイ場面も出てきたりする。よって親御さんは子供と一緒に観ないようにする方が無難か。ちなみにタイトルのクイルズ(Quills)の意味だが、羽ペンのこと。本作でも重要な役割を果たしています。
 少々古い映画だが、今でも活躍中の豪華キャスト陣で、そのアンザンブルも見所か。少々癖が強い映画なので観る人を選びそうだが個人的には楽しめた。どういった人にお勧めしたら良いのかが、判断しづらいが、チョット挑戦してみようという人にクイルズをお勧めに挙げておこう

 監督はフィリップ・カウフマン。お勧めはテストパイロットと宇宙飛行士を対比して描いたライトスタッフ、そしてプラハの春を背景にした文芸作品存在の耐えられない軽さがお勧め








 
 

 


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映画 スポットライト 世紀のスクープ(2015) 性的虐待事件を追う

2023年10月05日 | 映画(さ行)
 日本で多くの男性アイドルグループを輩出してきたジャニーズ。しかし、今や故人になった前社長ジャーニー喜多川による所属タレントやデビュー前のジャニーズJr.に対する性的虐待が明るみになった数々の事件においてジャニーズは大揺れどころか存亡の危機に瀕して消滅してしまいそうだ。次々と明るみになるジャニーズ事務所の杜撰な会社経営は、芸能界だけでなく日本社会全体を揺るがしている。
 さて、このような未少年に対する性的虐待事件があまりにも大きく報道されているが、特に日本だけの問題ではない。実は世界中で昔から存在し、特に世界中のカトリック教会で神父が未成年者を性的虐待する事件が頻発していたのだが、そのことを暴き出す切っ掛けになった記者たちの苦闘を描いた映画が今回紹介するスポットライト 世紀のスクープ。本作を見るとジャニー喜多川による性加害事件と多くの共通点が見出される。その点において、本作は少しばかり前の映画になってしまうが、まさに今の日本にとって非常にタイムリーな映画と言えるだろう。

 実話を基にした非常におぞましい事件に対するジャーナリスト達の苦闘を描いたストーリーの紹介を。
 2001年、アメリカはマサーセッツ州のボストンにおいて最大の新聞数を発行するボストン・グループに新局長としてユダヤ人のバロン(リーヴ・シュレイバー)を迎え入れる。新任早々でバロンはとてつもない計画を実行するように社内の極秘捜査を行う担当部門である少数精鋭のチーム『スポットライト』にゲーガン事件を操作するように命じる。その事件は1971年にゲーガン神父が少年に対して性的被害を負わせたこと。ボストン・グループに記事にしていた事件だったのだが、事件の重大さの割に軽く扱っていたことにバロンは不満だったのだ。
 そしてロビー(マイケル・キートン)をリーダーとするスポットライトチームはゲーガン神父の1971年からの行動を徹底的追求するのだが、そこに浮かび上がってきたのは、驚くほど腐敗したカトリック教会の実像であったのだが・・・

 出るわ出るわのゲーガン神父による少年少女に対する性加害に対する数々。しかも、その様な性的虐待を行ったいたのはゲーガン神父だけではなく出るわ出るわのロクでもない神父たちのおびただしい数々。そして、教会幹部たちの隠蔽体質と腹立たしいその方法。しかも、教会だけでなく見て見ぬ振りををしている人間がボストンの偉いさんの中には多くいることを知らされる。そのような中でスポットライトの面々も妨害に遭ったりで、とてつもない労力を費やされることになる。
 そして、本作では性被害に遭ってしまった人達の苦悩も描かれている。この辺りは夢をもってジャニーズからデビューをしようと思った少年達が屈辱を味わって挫折してしまい、未だに悩まされることの辛さを知ることができる。
 アメリカのジャーナリズムの凄さと同時に、日本のジャーナリズムの浅ましさの比較までしてしまい、何とも複雑な気分にもさせられた。記者たちの仕事は大勢が揃って頓珍漢な質問を長々とすることではない。記事に書いて読んでもらうこと。もっと本作のジャーナリストのように独自で取材をして、メモを必死でとり、歩いて取材をしろ!と言いたくなる。
 他にも権力がいかに人間を誇大妄想させてしまうかを痛感するし、東山社長には本当に真摯に被害者の方々と向き合って欲しいと思う今日この頃である。そんな訳で今回は現在の日本に非常にタイムリーな映画スポットライトをお勧め映画に挙げておこう





 
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