褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 蜘蛛女のキス(1985) 刑務所が舞台です 

2022年02月26日 | 映画(か行)
 アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの同名タイトルの映画化作品が今回紹介する蜘蛛女のキス。原作は映画化のみならずミュージカルの舞台劇として、日本でも行われているのでタイトル名を耳にしたことがある人もいるだろう。
 さて、ストーリーは刑務所の獄房の一室でのシーンが殆ど。それも女装している男と拷問を受けた形跡のある男が、何やらグダグダ話しているシーンが前半は続く。正直なところあんまり俺好みじゃなさそうだし、いつ蜘蛛女が登場するんだ?なんて妙なところに俺の興味が惹かれてしまったのだが・・・。

 けっこう古い作品だが、なかなか今風のテーマが描かれているストーリーの紹介を。
 南米の某国において、そこはファシズムの嵐が吹き荒れていて刑務所は囚人がたくさんいる。刑務所の中の一室において、ホモであり少年を誘ったことで性犯罪で捕まって女装しているモリーナ(ウィリアム・ハート)、そして政治犯として捕まっているヴァレンティン(ラウル・ジュリア)が居る。ヴァレンティンはモリーナのことを毛嫌いしているのだが、獄房の中での暮らしがヒマなこともあり、仕方なくモリーナが語る映画の話を聴いていた。最初はその映画のストーリーの内容にも嫌悪感を持っていたヴァレンティンだったが、次第にモリーナが優しい人間だということに気付き、心を開いたヴァレンティンは自分の愛した女性や捕まった経緯をモリーナに語り出すのだが、実はモリーナは・・・

 これ以上、ストーリーの紹介を進めてしまうとネタ晴らしになるのでここまでで。登場人物からテーマとしてLGBT関連の問題を浮き彫りにしているのは明らかだが、他にも色々と深読みが可能だろう。ファシズムが吹き荒れる政治体制において、崇高な様々な愛の形が木っ端微塵に砕け散ってしまう悲劇に泣けてくる。しかも、その悲劇性を増しているのが巧みなストーリー構成。モリーナがヴァレンティンに聴かせる映画の内容が、実は本作のストーリーと密接にリンクしたり、蜘蛛女ってそういうメタファーだったのかと思わさせられたりで、単調なストーリー展開になりそうなのを奥深い内容の映画に仕上げている。
 我が国ニッポンも周囲はロクでもない国に囲まれているが、独裁政権が権力を握ることの恐ろしさが本作を観れば伝わるし、独裁政権を打倒に立ち上がろうとすると尊い命を失ってしまう切なさを感じさせる。そして、単なる悲劇で終わらさせずに愛の尊さを少しばかり感じさせるのが本作の良いところ。そして、出演陣の好演も見逃せないだろう。ホモを演じるウィリアム・ハートは名演技を見せてくれるし、1人三役をこなした女優ソニア・ブラガの存在感も忘れ難い。南米を舞台にした映画を観たいと思っている人、LGBT関連に少々でも興味がある人、決してハッピーエンドではないが暗闇の中にほんの少しの希望の灯が点いているいるような映画が好きな人・・・等に今回は蜘蛛女のキスをお勧めに挙げておこう

 監督はアルゼンチン生まれのブラジル人のエクトール・バベンコ。本作以外ではジャック・ニコルソン、メリル・ストリープ共演の黄昏に燃えてが個人的にはお勧め。

 
 





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