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頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

超2サスな『あなたも眠れない』山口恵以子

2014-08-08 | books
航空機の事故で夫と娘を失った女、慧子。事故の後不眠症になってしまった。1988年。人の眠りを奪えば自分が眠れることに気づいた。ラブホテルの張り込みをし、写真を撮り、脅す。金になった。そして、クラブに勤めればいくらでも情報が得られることに気づき、銀座の高級クラブで会計係として働くことになった。人気があるとは言えないが性格の良いヘルプ繭と仲良くなった。繭は、ママに、客と売春させられていた。繭の彼氏のカメラマンが殺された。政治家の写真を撮ったからだろうか。そして繭が殺され、慧子の自宅に遺体が置かれた。警察に疑われる慧子。自ら殺人事件の謎を解こうとすると…

うーむ2サス的展開なのに、そして意外性も2サス的なのに(なぎさや船越の姿がちらつく)、どえらく面白かった、と感じた自分が不思議。

直前に読んでいたのが、「アンダーカバー」だったので、なおさら面白く感じたのだろうか。

「眠れない。他人の眠りを奪うと眠れる」という当初の動機にはあまり食いつけないけれど、ストーリーの運び方、分かりやすいキャラ設定がなかなか。新幹線での読書向き。

中に面白いものが詰まっているとは思えない表紙カバーの絵を変え、慧子の動機や人物造形にもっと厚みを加えてくれれば完璧

あなたも眠れない

今日の一曲

眠れないと言えばインソムニア。DJ TiestoでInsomnia



では、また。

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『呪いの時代』内田樹

2014-08-07 | books
最近小説が頭に入って来ない。そういうときに最適なのがウチダセンセイ。

この世はフェアなのかアンフェアなのか。

あらゆる階層では、「この社会システムはアンフェアだから努力しても報われない」と思っている人々が社会下層を形成し、「努力すればそれなりにの成果がある」と信じている人々が社会上層を形成する。必ず、そうなります。

ウチダセンセイは「自分らしさ」について何度も書いている。

現代人が自我の中心に置いている「自分らしさ」というのは、実はある種の欠如感、承認欲求なのです。「私はこんな所にいる人間ではない」、「私に対する評価はこんな低いものであってもよいはずがない」「私の横にいるべきパートナーはこんなレベルのものであるはずがない」というような、自分の正味の現実に対する身もだえするような違和感、乖離感、不充足感、それが「自分らしさ」の実態です。

政治家については、

テレビタレント出身の知事が相次いで選出されて、注目を浴びましたが、彼らが地滑り的な勝利を収めたのは、脊髄反射的に「その場をつくろう」技術こそがテレビタレントに求められる最重要の知的資質だからです。そして現在の日本の有権者たちが政治家に最優先に求めているのは「脊髄反射的な言いつくろいの巧妙さ」なのです。

結婚について名言なのが、

結婚というのは配偶者の双方が卓越した人間的資質をもって、それを絶えず100%発揮していなければうまく機能しないようなストレスフルな制度ではありません。人格的に優れた二人の人間が心から愛しあい、尊敬しあっていなければ、幸福な結婚が出来ないというような苛酷な条件を課していたら、人間は遠い昔に絶滅していたでしょう。激しく愛しあい、心から尊敬しあう人間同士でしか幸福になれないのだとしたら、それは制度設計そのものが間違っているのです。親族のような、種の存続のために必須のシステムがそんな達成困難な制度であるはずがない。

結婚が必要とするのは「他者と共生する力」です。よく理解も出来ないし、共感も出来ない他人とそれにもかかわらず生活を共にし、支え合い、慰め合うことができる、その能力は人間が共同体を営んでゆくときの基礎的な能力に通じていると僕は思います。

結婚に関して、100%同意する。

呪いの時代

今日の一曲

呪い、と言えば邦題が「呪われた夜」 イーグルスで一番か二番目に好きな曲One Of These Nights



では、また。
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『八月の六日間』北村薫

2014-08-06 | books
出版社で雑誌の編集をするアラフォー女子が同僚に誘われて行った山。涸れ沢に入ったとき、山から手を差し伸べられたような感じがして、自分が生きているという実感がわいた。そして少しずつ訓練しながら、一人で山に登って行く短編集。

<九月の五日間>では、燕岳から槍ヶ岳、上高地へ行く縦走。高校時代の演劇部のことを思い出したり、女性登山者とちょっと仲良くなったり。

<二月の三日間>では、ツアーに参加して裏磐梯の雪山を歩く。

<十月の五日間>では、上高地から蝶ヶ岳、常念岳、燕岳を縦走する。

<五月の三日間>では、麦草峠から白駒池を経て賽の河原へ。

<八月の六日間>は新潟。太郎平小屋から高天原山荘、黒部の源流、三俣山荘、双六小屋を経て、新穂高温泉へ抜ける。

主人公の人柄、仕事、山で出会う人。ほのぼの、しみじみ。じわじわと温かくなる。

同じミステリー作家の湊かなえが「山女日記」を書き、北村薫がこういう本を書く。時代は山なのだろうか。

雪山、歩きたくなった。

八月の六日間


今日の一曲

スキー唱歌。



古いなー、おい。

では、また。
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『ボラード病』吉村萬壱

2014-08-05 | books
ボラードとは舟と岸をつなぐときにロープをかけるための低い鉄柱のこと。それが病気の名前になっている、不思議な小説。

主人公は小学生の恭子。住むのはB県海塚。この町が変。太っているアケミちゃんは死んでしまった。担任の藤村先生はどこかに行ってしまった。恭子の母一人子一人の生活。海塚という街の「社会主義」な感じ。めくるめいているうちに、話は終わる。大した長さの小説ではないのに、全身ずぶ濡れになったまま着替えられないもどかしい感じが続く…

なんじゃこりゃ。小学生から見る世界がおかしいのか。周囲がおかしいのか。どっちなのか、分からなくなる。

アナーキーな小説だった。純文学おそるべし。

ボラード病

今日の一曲

ボラードと言えばポマード。と言えば、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドでサクセス



では、また。
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『誘拐逃避行 少女沖縄「連れ去り」事件』河合香織

2014-08-03 | books
2003年から2004年にかけて、47歳の男が9歳の女の子を連れまわし、そして誘拐し、沖縄まで連れて行った。逮捕、起訴され、求刑は4年。一審は懲役2年6か月の実刑判決。控訴審、上告でも結果は変わらなかった。しかし、男が加害者で女の子が被害者であるという単純な図式ではなかったとするドキュメント。

母親に棄てられ、祖父に虐待されていた少女、めぐ。たまたま出会った中年男山田に声をかけ、家に遊びに行くようになる。

小学生なのに、年上の男を翻弄し、支配する。

情ない男山田の人生。めぐに恋愛のような感情すら抱くようになってしまう。

めぐには、「ファム・ファタール」あるいは「稀代の悪女」のような臭いがし、山田には「究極のダメ男」の臭いがする。そんな二人の作り出すハーモニー。

こんなことがあったのか!と「!」を何度も脳内に感じながら読ませてもらった。

人の心とは何か。特に山田のダメ具合が怖いくらいだった。

誘拐逃避行―少女沖縄「連れ去り」事件

今日の一曲

逃避行、escape... Enrique IglesiasでEscape



では、また。
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『アンダーカバー 秘密調査』真保裕一

2014-08-02 | books
弱冠28歳、戸鹿野智貴。ホームページ制作の会社を、M&Aを重ね、巨大ネット企業にした。女と遊びに行ったフィリピン。全く身に覚えがないのに、手荷物にヘロインが入っていたとして逮捕。刑務所へ。フィリピンの刑務所は金と力があれば自由に行動できる。そこで力をつけて自由を獲得した戸鹿野は、自分をはめた者探しと復讐を始める。スコットランドヤードで麻薬捜査に携わってきたジャッドはユーロポールでヨーロッパの麻薬捜査に関わることになった。イタリアのマフィアの事件とトルコのマフィアの事件の関連性を見つけると、そこには…

うーむ。つまらなくはないし、頁をどんどんめくってしまうのは確か。でも、軽い。

どこか、「すごくよくできた、学生の書いたレポート」みたいな感じがするのだ(当社比)

「調べたことを全部盛り込んだ感」と「先が読める感」があるからだろうか。

刑務所での行動と真犯人を追うところの最初の方はすごく読ませるので、惜しかった。

本当は、「調べたことはもっとたくさんあるのだけれど、ほんのちょっとここで出しただけだよ」ということなのかも知れないけれど、作品は、小説でもドラマでも映画でも音楽でも、どう感じるかどう考えるかどう捉えるかは、全て受け手にあるので、文句を言われてもしょうがない。

国際謀略小説のようなものは、ブライアン・フリーマントルでもジャック・ヒギンズでもケン・フォレットでもフレデリック・フォーサイスでもマイケル・バー・ゾウハーでも、「知ってることのごく一部をこの小説に入れてみました」と読者に思わせないと薄っぺらくなってしまうと思う。

アンダーカバー 秘密調査

今日の一曲

アンダーカバーと言えば、The Rolling StonesでUndercover Of The Night



当時はもっと意味のある歌詞だと思っていたけれど、歌詞を見るとほとんど意味がないことが分かって軽い衝撃。

では、また。
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『悟浄出立』万城目学

2014-08-01 | books
西遊記の沙悟浄や三国志の趙雲など歴史物語の脇役から描いた短編集。連作短編集だと思っていたら違った。

元ネタに詳しくないから、どうひねったかよく分からないからか、あまり楽しめなかった。

元ネタが分からなくても、単独で楽しめるほどのリテラシーを持っていないということなのだろう。本読みの風上に、私を置いてはいけないのである。

リテラシーとかけて、
ものすごい美人の彼女ととく。

そのこころは、

欲しいような、欲しくないような…

悟浄出立


今日の一曲

西遊記と言えば、ドラマ西遊記のエンディング曲。一世を風靡したと言っても言い過ぎではない、ゴダイゴで、「ガンダーラ」



では、また。

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