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This is 自給自足『猟師の肉は腐らない』小泉武夫

2015-08-30 | books
農学者であり、食物の専門家でもある小泉センセイが渋谷の居酒屋で雇われ店主猪狩義政(義っしゃん)と仲良くなった。しかし後に店をくびになってしまった。またさらに後になって彼が福島の山奥に暮らしていることが分かり、遊びに行ってみた。ウサギや猪を狩り、岩魚を捕り、酒も自分で作る自給自足の生活がそこにはあった。義っしゃんに連れられて、一緒に狩りをし、山を巡る…

夜の酒は、少年のような冒険心、憧れていた開放感、爽やかな挑戦心、驚きと発見の出合いなどが心の中に渦巻いて、最初の一杯でもう、心の底まで嬉しくなってしまうのである。

フィクションなのかドキュメントなのか分からないけれど、そんなことどうでもいいくらいに面白い。

義っしゃのキャラクターがいい。大胆なのに気配りができる。話も面白い。

そして「食べる」という行為について大いに考えさせられる。他者の命を犠牲にして生きるということを改めて思い出した。

そして「豊かな生活」ってなんなのだろうかとも思う。

機械が多くのことをやってくれる、あるいは自分でやらなくてもできたものを買えばいい我々の暮し。その分ヒマができるわけだけれど、浮いた時間に何をしているのだろうか。スマホをいじり、Twitterに何か面白いことはないかと探し、LINEに返信はないかと苛立ち、facebookでイイネがついたら喜び、バラエティ番組を観て、「芸」をするのではなく、私生活を語る芸人を観て笑う。豊かなヒマつぶしはなかなか難しい。

生きるということは壮大なヒマつぶしのようなもの。同じヒマつぶしならば、義っしゃんのように朝から晩まで忙しく「生きるのに必要なこと」をしている方が、「豊かな生活」なのかも知れない。

猟師の肉は腐らない

今日の一曲

釣りの唄。Brad Paisleyで"I'm Gonna Miss Her"



では、また。

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