「プロムナード」道尾秀介 ポプラ社 2010年
あちこちに書いたエッセイ集。この人の小説はほとんど読んだことがない。「ラットマン」は途中まで読んだんだけど、その後をどうして読んでいないのか何も覚えていない。
しかしこれはなかなか良かった。小説家の書くエッセイは創作の秘密に溢れているネタバレ的なものや、意外な日常を書いたものなど玉石混交である。いや混淆である。「プロムナード」は、思い出と最近の日常がほんわかと面白く描かれている。
寺内貫太郎一家における日蓮の書いたもの(自分の心などという移ろいやすいものに囚われるでないという教え)の間違った記憶のエピソードなんて巧い。友人が昔書いた石の詩(そろそろ誰か転がしてくれよ、違う景色が見たい)も今の私はやっとその意味が分かるようになった。自力本願ばかりが人生ではないんだなあ。
女の子に押し花の栞をプレゼントした話には一番笑った。中から虫が沸いて来たのでその女の子は、その栞を○○○に入れてしまったのだ。がはは。
全体として道尾秀介がいいひと臭をたっぷりと放っている。もちろんいい意味で。友達になりたいと思う小説家なんてまずいないけど、この人とは友達になりたいなーと思った。
それと最近のポプラ社から目が話せない。いや、それは当たり前だ。目がスピークしちゃイヤだ。興味深いモノを出してくれてるので、目が離せない。
※追記:
読んでいなかったと思っていた道尾秀介。「鬼の跫音」を読んでいた。しかもレビューの中でこれから過去の道尾作品をどんどん読んでいこうと思ったと書いている。記憶は嘘をつくと言うが、
嘘つきに与えられる刑罰は、少なくとも彼が人から信じられなくなるということではない。むしろ、彼が誰をも信じられなくなるということである。バーナード・ショー
嘘とは、私がつくったものではなく、階級に分かれた社会に生まれたものである。だから私は生まれながら嘘を相続している。 サルトル
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