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『夜行観覧車』湊かなえ

2010-06-27 | books
「夜行観覧車」湊かなえ 双葉社 2010年(初出小説推理)

「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」を何とも表現しがたい感情を抱きつつ、しかし気になって読んできた。そして最新作は、坂道の悲劇とでも言おうか。

ひばりが丘という高級住宅街で殺人事件が起こる。被害者は父。加害者として母親が逮捕される。物語は、事件のあった家の向かいの家=遠藤家と、事件のあった家=高橋家の者たち、そして短く、近所の小島さと子の独白が途中に入る形式。殺人事件があったことよりも、家庭内で暴れる娘彩花と無関心な夫啓介を抱える妻真弓の方がよほど大変ではなかろうか。事件の真相、それ以外を大きく描きながら物語は・・・

ふむ。ふむ。読んでいると気分がとても悪くなる。書いた人が悪いとか書き方が悪いというような意味では全くなく、登場人物がいかにも現代の日本にいそうで、しかもとても感じが悪くて気分が悪くなる。読みながら、彩花って(知り合いの)某みたいだとか、啓介って、小島って、と現実の世界とオーバーラップさせてしまった。オーバーラップさせすぎてしまったので(小池龍之介さんが言う、自我を刺激しすぎてしまったので)、いやーな気分になった。

いやな気分になったのは作者の湊さんの問題ではなく、読む私の問題だ。読んでも全く気分悪くならない人もいるだろう。そういう人がすごく多いのかよく分からないけど。何も生み出さず誰にも何も貢献しない女子中学生が、なに、家で暴れてるんだよこのやろー、的気分である。

結末については賛否両論かと想像する。私は賛である。嫌な気分が一掃されないまでも、もやもやが晴れた感じがするのと、(本読みにとっては重要な)ストーリーの帰結としていい終わり方だったと思う。勧善懲悪がいいとかハッピーエンドがいいとかというわけじゃなく、うまくそこへストンと収まった感あり。

湊かなえという小説家について不満だったのは①人間が描けていない ②ストーリーに現実感からややずれたフワフワ感=作り物感を感じるという二点があった。しかし今回、そのどちらも払拭された。

うまい表現が浮かばないのだが、湊かなえは、大好きな子じゃない(と自分では思ってる)のに、ついついその挙動を見てしまう同じクラスの女の子、だと思う。どんな表現やねん。





夜行観覧車
湊 かなえ
双葉社

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2 コメント

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ちびまる子ちゃんでいうと (こなつ)
2010-09-15 09:26:48

野口さんて所でしょうか。
ククク…

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こんにちは (ふる)
2010-09-15 13:56:22
★こなつさん、

うまいですね。
ククク・・・
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