「光圀伝」冲方丁 角川書店 2012年(初出野生時代2011年2月~2012年8月)
初の時代小説「天地明察」が売れに売れた作者による時代小説第二弾は水戸光圀。よく知られている黄門様とはだいぶ違う生き様とは。冒頭、家老紋太夫を62歳になろうする光圀自身が殺害するところから始まる。なぜ信頼していたはずの家老を自らの手で殺さねばならないのか。光圀の信じる義とは何か。幼少期から死ぬまでを描く…
面白い。戦がなかった時期を描く時代物は何を描くと面白くなるのか。それは愚直なまでに一人の人物を描き尽くすことらしい。
光圀が馬鹿みたいに重んじるのは「義」である。自分が長男でないにもかかわらず、水戸家の跡を継ぐということに対して、それは「義」ではない、兄をさしおいてはいけない。それをひたすら主張し続ける光圀がしつこいのか、描き続ける冲方がしつこいのか、段々わからなくなってくる。作者が作り出したキャラが独り立ちしているのは、筆の巧さの証拠。
全体として「義」や漢文、儒教などかなり堅苦しい話が多いけれど、それも慣れれば結構楽しめる。前半を読むのに時間がかかってしまったのは、漢文なんかをまじめに読んでしまったからだけれど、飛ばしても差し支えないと思う。徳川将軍による中央集権化が落ち着く、三代代家光の時代から五代綱吉までを、柔らかくまとめる歴史勉強もの的側面もある。
私としては冲方丁のSF作品はあまり好みじゃないので、時代物ばかり書きまくって欲しいと思うのはわがままだろうか。
では、また。
初の時代小説「天地明察」が売れに売れた作者による時代小説第二弾は水戸光圀。よく知られている黄門様とはだいぶ違う生き様とは。冒頭、家老紋太夫を62歳になろうする光圀自身が殺害するところから始まる。なぜ信頼していたはずの家老を自らの手で殺さねばならないのか。光圀の信じる義とは何か。幼少期から死ぬまでを描く…
面白い。戦がなかった時期を描く時代物は何を描くと面白くなるのか。それは愚直なまでに一人の人物を描き尽くすことらしい。
光圀が馬鹿みたいに重んじるのは「義」である。自分が長男でないにもかかわらず、水戸家の跡を継ぐということに対して、それは「義」ではない、兄をさしおいてはいけない。それをひたすら主張し続ける光圀がしつこいのか、描き続ける冲方がしつこいのか、段々わからなくなってくる。作者が作り出したキャラが独り立ちしているのは、筆の巧さの証拠。
全体として「義」や漢文、儒教などかなり堅苦しい話が多いけれど、それも慣れれば結構楽しめる。前半を読むのに時間がかかってしまったのは、漢文なんかをまじめに読んでしまったからだけれど、飛ばしても差し支えないと思う。徳川将軍による中央集権化が落ち着く、三代代家光の時代から五代綱吉までを、柔らかくまとめる歴史勉強もの的側面もある。
私としては冲方丁のSF作品はあまり好みじゃないので、時代物ばかり書きまくって欲しいと思うのはわがままだろうか。
では、また。
時代物?時代小説?では他に、藤沢周平さん『蝉しぐれ』山本周五郎さん『町奉行日記』宇江佐真理さん『無事、これ名馬』佐藤雅美さん『居眠り紋蔵シリーズ』等々が好きです。実在人物では『伊能忠敬』にちょっと興味ありです。面白い本があればまた教えて下さい!あ、『赤とんぼ』『ま・く・ら』注文しました。今から楽しみです!ありがとうございました。では、失礼します。
水戸藩の藩主光圀が諸国を漫遊したというのは、フィクションだそうですね。いわゆる「水戸黄門」とは全く無関係の作品です。
「ぼんくら」シリーズは私も好きです。宮部みゆきは、ファンタジー以外はほとんど読んでいます。
「赤とんぼ」ではなくて、たぶん「赤めだか」ですね、立川談春のエッセイでしたら。
読んだという人が周囲にいたことのない作品なのですが、藤原審爾「昭和水滸伝」のことを思い出しました。傑作だと思います。