「天地明察」冲方丁(うぶかたとう) 角川書店 2009年(初出野生時代2009年1月~7月号)
江戸時代、将軍で言うなら4代から5代の頃。囲碁を将軍家に教え、算術を得意とする者がいた。彼が次に挑むのか暦を変えるということ。ただそれだけの話。
いやいやいや。暦を変えるってそれだけの話なのになんて読ませるんだ。参った。参考文献を見ると、「渋川春海の研究」(春海は主人公)とか「関孝和の実像を求めて」等、本書に登場する人物の名前がそのままの資料にあるということだから、実際にあったことを小説にしているようだ。
ユリウス暦とかグレゴリオ暦(どう違うのか分からない)って時の権力者の力の誇示のために改暦があったのかと思っていたのだが「天地明察」を読むと暦のちょっとした違いが何をもたらすのかよく分かる。正しい暦を計算することに困難さとそしてより良い暦が存在することが分かったからといってそれを導入することの困難さなどちょっと考えたことすらないばかり。面白い。
冲方丁というひとはSF作家。本書は初の時代小説だそうだ。春海や他の登場人物の造形が実にいい。ほのぼのしていたり峻烈だったり。山鹿素行や保科正之などの歴史上人物も「そういう人だったのか!」と彼らの所作が顔が映像の如く生き生きと目の前に浮かび上がる。
囲碁のタイトルに本因坊というのがあるが、あれは囲碁を教える名家の苗字だったそうだ。ふむふむ。「天地明察」というタイトルも意味不明だったが、読んでいるうちに実に内容に合ったいいタイトルだと思うようになった。
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※追記: 川保さんの指摘により、作者の名前の読み方を「うぶかたてい」から「うぶかたとう」に訂正した。
検索サイトから流れてきたものとです。
私もこの本読みました!
すごく感動しました!
すいません。
ちょっとツッコミを、
>>「天地明察」冲方丁(うぶかたてい)
「てい」ではなくて「とう」です。
訂正よろしくお願いします。^^;
指摘ありがとうございます。
とても恥ずかしいです。
訂正しておきました。
映画化いいですね。
できれば、あまりイケメンを使わないでもらえると
いいかななんて思います。
前後の話を膨らませるとか、あるいは同時代の別の話を
加えるかすれば、NHK大河ドラマでもいけるかも知れません。