頭の中は魑魅魍魎

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『鬼はもとより』青山文平

2015-02-05 | books
江戸時代の中期、浅草山川町に住む奥脇抄一郎は表向きは万年青(おもと)の販売をしているが、裏では藩の財政請負人をしている。特に藩札発行に関するスペシャリストなのである。しかしどうしてこのような仕事をしているのか…がこの本の前半に書かれている。後半は依頼された仕事。北国の島村藩は破産寸前だった。奥脇は島村藩を救えるのか、どうやって救うのか…

これは良かった。

藩札とは藩が独自に発行する通貨のこと。松本清張の「西郷札」のことを連想するけれど、あっちは西南戦争のときに発行された軍票なのでちょっと違うか。いや似たようなものか。

発行しすぎればインフレになるし、信用を得られなくても通貨の価値は減ってしまう。ドルやポンドや円がかつて金本位制(金と交換できることを保証している)をとっていたこも思い出す。この小説でもそれに近い話が出てくる。そう言えば、第一次大戦の後、1923年末には1ドル=4兆マルク!にもなったんだって。信じられない数字。

藩の財政立て直し、通貨の供給、産業の育成… まるで日本という国全体をどうコントロールするか考えているみたいだ。

凄腕コンサルタント奥脇のお手並み拝見。彼の過去も読みごたえあり。読みやすいけれどずっしり重い。直木賞の候補作だった。

ネタバレは避けるけれど、タイトルは鬼にならなくてのは改革はできないという意味。表紙はいただけないけれど。

鬼はもとより (文芸書)

今日の一曲

江戸。Ed Sheeranで"Sing"



では、また。

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